タグ・ホイヤーの「モナコ」が欲しくてたまらないという怒涛のモメンタムのまま「恐らく本年最後の腕時計」を入手しました。ちなみに「購入」と書くより「入手」と書いた方が良心の呵責が薄めなのは気のせいでしょうかねぇ(;´∀`)
え~っと。ここまでの顛末や経過は「過去記事」をお読みいただくとして…
「ルミノール マリーナ 1950」を入手
紆余曲折、精神の錐揉み状態から私が手に入れたのは、パネライの現行モデル「ルミノール マリーナ 1950 3デイズ アッチャイオ(PAM00723)」でした。日頃お読み下さっている皆さまの「さんざん迷ってそこかいっ!!」みたいなツッコミが聞こえてきそうです(;´∀`)
しかし今回は悩んだ…悩みすぎて吐きそうになりましたもん(;´Д`)
前置きしますと、私は決して「パネリスティ(パネライマニア)」というわけではありません。
私の中で「パネリスティ」とは、身も心もパネライに捧げた人たちのことを指します。他のブランド(メーカー)などには、一切見向きもしない不動心をお持ちの方だけに与えられる「名誉称号」だと考えているのです。ですから、私のように色んな腕時計に反応する「軽薄なアンテナ」を張り続けている男が名乗るべきではない。誠に恐れ多いことです。
初めて手にしたパネライ「サブマーシブル」、今なお主力で頑張ってくれている「ラジオミール・ブラックシール・ロゴ」、そして今回手に入れた「ルミノール マリーナ」と、計3本のパネライユーザー歴を持つ私ですが、生粋の「パネリスティ」と明らかに異なるのは「パネライ最高!」を高らかに謳う「絶対論者」ではないというところです。他の様々な腕時計と見比べながら、私はパネライを「変わり種時計の最高峰」として評価しているのです。
「PAM00723」デカいですな(笑)
パネライ「頑固一徹」の姿勢
パネライのラインアップには基本的に「ルミノール」と「ラジオミール」しか存在しません(サブマーシブルをルミノールの亜種と考える場合)それは頑固一徹、老舗の味と看板を守り続けてきた「蕎麦屋」のようなスタンスです。
カレー蕎麦だって、ぶっかけ蕎麦だって、出せば売れるはずなのです。だけど安政7年創業「パネライ蕎麦」の大将は作らない。自慢の蕎麦に何かを付け加えたとしても、せいぜいが「とろろ昆布」か「山菜」なのです。「気に入らんのなら来なくて結構!」みたいな大将の姿勢は正直なところ客を選びますが、そうして淘汰されて残った強者たちこそ真の蕎麦っ食い…いや「真のパネリスティ」ではないかと思います。
かつて巻き起こった世界的ブームが過ぎ去ったとはいえ、パネライは紛れもなく高級腕時計のトップブランドの一つです。ロレックスほどではありませんが、中古の価値も安定していますし、それは未だにファンからの熱烈な支持があることの証左です。ラインアップを多彩に展開すればそれはそれで評判を呼ぶでしょう。
しかし、パネライはそうはしなかった。近年のラグスポブームに迎合することもなかったですし、相変わらずデカくて重い時計を主力として展開中です。
ミニ蕎麦にあたる小さめのルミノール「ドゥエ」だってあるにはありますが、ブティックへ赴き、ショーケース越しに実物を見て思うはずです。やっぱりパネライは「デカくてナンボ」だと。
もう、デカいこと自体がパネライのアイデンティティーということで納得すれば良いのです。デカくて重いことさえもデザイン一要素であるなら、パネライを買うことはそれらを甘受することであると、理解するしかありません。
寄り道の系譜
ちなみに「モナコ」から「ルミノール マリーナ」に至るまで、一気通貫で変節したわけではありませんでした。途中に幾つかの候補を挟み込んでのことです。
一つはジャガー・ルクルト「ポラリス オートマティック」、もう一つはIWCの「ポルトギーゼ オートマティック」でした。
「ポラリス」は「ルミノール マリーナ」より僅かに安く、「ポルトギーゼ」はさらに安かったのでかなり悩みました。「ポラリス オートマティック」はだいぶ以前から意中の時計でしたし、「ポルトギーゼ オートマティック」は発表の瞬間に「よっ!待ってました!」と小躍りした時計でした。
(Q9008170)
ヤバいぜぇ…(IW358305)
ならば何故「ルミノール マリーナ」なのか。どう考えてもそれは、時流に逆らった…いや、私の筋力低下に逆らった「無茶なデカ厚」です。何を今更なチョイスだと思わないではありません。しかし、私にはこの「ルミノール マリーナ」を迎えるべき「3つの正当な理由」があったのです( ー`дー´)
理由その①
「ラジオミールの横に並べたい」
理由その②
「例のブレスレットが欲しかった」
理由その③
「デカ厚時計に『最後の挑戦』」
書き出しても、全然大した理由じゃありませんでした。こりゃあ理論武装にもなっていません(;´Д`)
同時に愛でたい「ルミノール」と「ラジオミール」
パネライの腕時計には基本的に2種類のタイプしか存在しません。それならいっそ2種類同時に揃えたいと考えたのです。普通ですよね?この流れ…珍しくないですよね?
とにかく例の…「ブリッジの半円を模したブレス」モデルが欲しかったのです。一つ前のブレスモデルは直線主体のシンプルなコマで構成されたデザインで、私のセンス的には何とも微妙な評価でしたが、旧デザインのブレスが復活したとき「これは入手せねば!」と思わせるものが確かにありました。ヴァシュロンの「オーバーシーズ」の旧ブレスと並ぶ、格好良いブレスレットの代表だと思っています。
そして「デカ厚時計への最後のチャレンジ」として、42ミリモデルがあるにも係わらず、敢えてこの44ミリを選択したのです。さすがに47ミリは遠慮しましたが、それでも十分にデカくて十分に重い時計です。しかし、この存在感こそがパネライの「真髄」であり、ファンの心を捉えて離さない魅力の最たるものなのでしょう。つまり、肩こりだろうが何だろうが、我慢してでも身に着けるに相応しい唯一のブランドがパネライであると私は思います。
パネライオーナー冬の風物詩かもしれません。
ブームを牽引した功績
ご存知の通り、イタリア軍の御用企業として軍用の時計を作っていたパネライ。原則的にその時計は「軍の機密」として秘匿され、一般にその存在が知られるようになったのは俗に「プレ・ヴァンドーム期」、ヴァンドーム(現リシュモン)傘下となる以前の1990年代中盤以降のことです。
世間から見れば、突然目の前に常識外の「巨大な腕時計」が現れたように見えたはずです。パネライの作る「異形」は異形ゆえに話題をさらいました。しかし、それはあくまでも要求されたスペックを満たすために「必然の大きさ」であり「目立たせるため」といった安っぽい理由ではなかったのです。
間違いなくパネライは腕時計の歴史上見過ごせないエポックをもたらしたブランドですし、その「デカくて分厚くて重い時計」を短期間で世界中に浸透させ、大きな市場価値をもたらした功績は突出しています。
また逆説的に考えれば、パネライの躍進こそが後に起きる「腕時計小型化」の契機だったと考えられなくもありません。デカ厚というカテゴリーを生み出し、腕時計のサイズに関する「常識」を撹拌したパネライ。全く新しいマーケットを創出した影響力は、同時に「反デカ厚」というムーブを生み出しました。
私が思うに、腕時計のサイズに関する議論が白熱しはじめた時期は、パネライの影響力が最大限に広がった時期と重なります。強力な味方を生むと同時に、強力なアンチをも生む…実はこれ、長い年月第一線で活躍するプロレスラーの条件とも合致するのです。
プロレス的に考えるなら、アンチの存在は「伸びしろ」なのです。何故ならば、例え好意的ではなくとも、アンチの連中は真剣な眼差しを向け続けてくれるからです。
永遠に「ロックなパネライ」でいて欲しい
「あのレスラー嫌いだわ」と思って見ていたつもりが、いつの間にか理解が深まり、翻って好きになってしまうことは往々にしてあります。ならば、現時点ではデカ厚に批判的な人たちも、パネライが今後もブレない姿勢を見せ続けてくれるなら「デカ厚…悪くないかも」なんて風に、考えを変えるかもしれないのです。
ぽっちゃりが売りのタレントさんが、突然「ダイエット」を宣言してファンをざわつかせることがありますが、パネライがコンパクトになるということは、多くの人に認知された最大の「売り」を自ら手放すことでもあります。そんな淋しい事態が訪れることのないように、パネライは今後もアンタッチャブルな存在でいてくれないと困るのです。
「デカ厚」の火付け役であるパネライが、「デカ厚最後の牙城」みたいになってしまって久しいですが、再びブームが訪れるまで「デカ厚世界」を牽引し続ける義務がパネライにはあると思います。そして、現行のパネライのラインアップはその期待に応え続けているように見えます。それはある意味、孤高です。
今回入手した「ルミノール マリーナ」は、私の年齢からいって最後のパネライになりそうなのですが、次に「デカ厚ブーム」が訪れるまで、大事に大事に使って行きたいと思います。
ブームの再来があるかは解りません。しかしこの「デカい」「重い」だが「格好良い」パネライの「ルミノール マリーナ」を使えているうちは、オッサン(私)もまだまだ捨てたものじゃないと思えるのです。
ロックな腕時計人生のために…肩こりなんかに負けるなオレ!Don’t look back!
ご意見・ご感想
コメント一覧 (2件)
seikomaticさま。
いつもありがとうございます。
ふふふ。パネライの創業年を和暦に換算したら安政7年ということでした。和暦にした方が老舗感が強いのは何故でしょうねぇ(;´∀`)
安政7年の老舗。。。なんか納得してしまふ。