何かに対する「憧れ」を糧に、人の成長は加速します。例えばMLB・ロサンゼルス エンゼルスに所属する「大谷翔平選手」のプレーをリアルタイムで観た子どもたちにとって、投打の「二刀流」は非現実的な「夢物語」ではありません。それをなし得た人物が現実に存在するのですから (*´ω`*)
「憧れ」は時に個人をある種の固定観念から解き放ち、常識の軛から容易く開放してしまいます。目に見える現実の目標がどれだけ人の心を揺さぶり、乾きを癒し、力を与えてくれることか…偉人の存在に憧れ、その偉業に感化された誰かさんがその後、自身が次代の若者にとっての「憧れ」となった例は古今東西、枚挙に暇がありません。
腕時計の世界にも誰もが知る、誰もが憧れる「スーパースター」とも呼ぶべき腕時計があります。実際に見たことも触ったこともないのに、その凄さ、偉大さは解る…私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、所謂「ポール・ニューマン デイトナ」でした。
過去に幾度も模倣の対象とされたロレックスさんの「ポール・ニューマン デイトナ」。それは現代の時計を知る人が現代の見識で見れば、結構ぼんやりとした見た目の時計です。
もちろん、背景にある様々なストーリーや、現代の超人気モデルに連なる象徴的な時計としてその価値は疑いようもありません。ですが私などは逆に、スポーツモデル黎明期の「微妙な完成度」だからこそ、現代まで廃れることなく永久不変の存在に成り得たのだと、勝手に納得しています。
折に触れて「果たしてあれは格好良いのか??」という議論が白熱するたびに、その価値を上昇させてきた「ポール・ニューマン デイトナ」。現代にまで継続するその魅力には、衰え知らずのエネルギーが感じられます。マニアたちを魅了し続ける底なしの魅力の秘密は、未だ枯れることのない「熱量」にあるのかもしれません。
そして、そんな熱量に当てられるがままに「憧れを形にしたような時計」があります。ヴィンテージウォッチの美味しいところを独自解釈して、バランスの取れたコレクションを構築してきた新進気鋭ブランド、バルチックさんの「トリコンパックス」がそれです。
今回は2017年に2つの時計を発表してスタートした「バルチック」という若きメゾンが、持てる力を上げて渾身で作り上げた「愛すべきオマージュ」について、掘り下げてみたいと思います (*´∀`*)
え~っと…今回は1万字を軽く超えてしまいました。皆さま覚悟してお読み下さい(汗)
BALTIC「TRICOMPAX(トリコンパックス)」を購入!!
間違いなく秋口…いや本年中に手に入れば良いか~くらいに考えていた、バルチックさんの「トリコンパックス」でしたが、まさかこれほど早く手中にできるとは (*´∇`*)
ここ最近、個人的に色々あって意気消沈していた私でしたが、それもあってか、この時計との出会いを、何やらとても特別なものに感じました。腕時計の女神さまが、落ち込む私を慰めてくれたのかもしれない…そんな風に思ったりして。
はい!! そんなこんなで!! 早速、開封の儀でございます。トリコンパックス…「どんなんかなぁ~??(仁鶴師匠風)」(*´ω`*)
行くぜ!! BALTIC「TRICOMPAX」開封!!
むむむ…箱でけぇ(笑)
何度も同じことを言ってすみませんが、私は腕時計の箱なんてものは「小さければ小さいほど良い」と考えていまして…ぶっちゃけ本格的な開封前から「この箱、どこに片付けたらええねん??」と悩む始末で(;´∀`)
…ってことはアレか?? 真ん中にちょこんと時計さまが座ってるみたいなアレか??
内箱は質感を変えたバイカラー仕立て
蓋部分は白っぽい「コルク調」の素材で覆われています。しっとりと手のひらに馴染む感じで中々の高級感。何やら特別なものが飛び出てくるような雰囲気がありますねぇ。開けるか…ドキドキしちゃいますなぁ(*´∀`*)
四畳半に座椅子だけみたいな??(笑)
ホント、そうとしか例えられず(笑)
ってなわけで、私は「パンダ」を選択しました。「リバースパンダ」だってもちろん捨て難かったわけですが、ある意味一番素直に(?)魂の赴くまま選びました。
確かに、時計一本にはデカすぎる箱です。ですが見ようによっては「玉座に御わす王様」の風格を感じないでもないかも??
ああ、そんなことより早く…早く手に取りたい…近くで舐めるように細部まで観察したい…(*´ω`*)
おや?? 下段に取っ手がある?? はは~ん…なるほど。「隠し部屋」で余を謀ろうとは、不埒なりバルチック!!(笑)
引き出しを開けると…??
普通に説明書が出てきました(笑)
実はもう一本「リバースパンダ」が隠れてましたぁ~だったら、泣いて喜ぶのになぁ~って、おやおや?? これは何ともミステリアスな「2段底」か?? ますます不埒なり!!(笑)
オマケのレザーストラップが出てきた!!
おっと!!こんなのがセットになっとったんか!! 何やら良さげな「グレーのレザーストラップ」がオマケとして隠されていました。そもそも購入時に私が付属品の要件を見落としていただけかもしれませんが…何にせよ、これは嬉しいサプライズですなぁ~(*´∀`*)
腕時計を撮るためだけのカメラ「TG-6」を購入
そうだ!! 今回から時計を撮るためだけに買ったカメラを使用しています。「オリンパス TG-6」。カメラ界隈ではそれなりに評価されている「顕微鏡モード」搭載の変態コンデジです。
まずはこちら…「トリコンパックス」を平置き撮影した写真を見ていただきたいのですが…これも「顕微鏡モード」です。大して寄ってもいないのに?? と思いますか?? まあその通りで、顕微鏡モードをあえて使っているのは別の理由があるからなんです。
本来、マクロレンズでこのくらいの寄れば焦点位置の前後がボケるはずです。ところがどうです?? 手前にも奥の尾錠にも、ばっちりピントが来てるでしょ??
これが「深度合成」の威力。ピントの深度を少しずつずらした写真を最大10枚、カメラが自動的に撮影、それをカメラ内部でサクッと一枚の写真に合成してくれる便利な機能があるのです。お陰で隅までピントが合った写真がめっちゃ楽に撮れるようになりました。スマホだと中々こうは撮れない…ってなわけで出費も止むなしと観念して買いました (;´Д`)
時計好きならではの複雑な感情
さて、肝心のお時計ですが…初見はとても良い感じです。腕時計好きの端くれとして「壮大な夢」が叶ったかのような錯覚すら覚える私。
それは前述の通り、この「トリコンパックス」がマニア垂涎のヴィンテージ・デイトナ「ポール・ニューマン」に似ていることに由来する気持ちです。その辺りの諸々を乱暴に「オマージュ」として括ってしまうと後が続きませんので避けますが、私はこの「トリコンパックス」の「似姿」に関して言えば、なんだかちょっと違うような気がしてまして。
私は出自がアート系ですから、時計に関してもそういう見方しかできません。そんな世にも珍しいアート方面からアプローチしてきた腕時計ブログ「腕時計喫茶」の筆者として、何と言いますか…理屈ではない部分でそう感じています。つまり…
「格好良いヴィンテージ風の三つ目クロノを作ったった!!」
みたいなノリの成果が、この「トリコンパックス」だと思っているのです。
私が小学生のときの自由帳に描いた「謎の戦隊ヒーロー」や「謎の宇宙怪獣」と、根本的には同じなのではないかと。キラキラした「憧れ」というピースを集めて完成した時計が「トリコンパックス」ではないかと ( ・`ω・´)
まぁ特に根拠なんてない話です。ただ、箱を開け、この「トリコンパックス」を目の当たりにしたとき、とても純粋に「童心」に戻ったような気持ちになったのは確かです。なので私はあくまで個人として、無責任にそう思うことにします。
そうだなぁ…バルチックのオーナー「エティエンヌ・マレク」さんと、新橋辺りの赤提灯で芋焼酎でも酌み交わす機会があれば、本当のところが解るかもしれない…まぁ、下戸なんですけどね、私は(笑)
さてさて、いよいよ「トリコンパックス」の「あんなところ」や「こんなところ」を見ていきたいと思います。特別意識しなくても、マニアックな目線になっちゃう予感…果たして!! 「どんなんかなぁ~??(2度目)」
※これもそろそろ来るかッッッ!!!
愛おしさが募る「アンダー40ミリ」
まずはこのサイズ感で上手にパッケージしてくれたことに拍手を送りたいと思います。ところで、これは最近になってようやく気付いたことですが…3針の方が「大きいサイズでも許せる」場合が多いですよね??
3針の時計のダイヤルは多くの場合「計算して作られた余白」で占められています。対してクロノグラフの余白は「出来ちまった余白」であることが多い。まぁこれには仕方がない事情もあるでしょう。機能を象徴する複雑な視覚要素を順当に配置すると、どうしても「その他」のコントロール仕切れなかった部分が生じてしまう。仕方なく出来てしまった「余白」のことです。
明確な意図を持たないデザインは、見る者の目に単なる「無駄」として映ります。大きな時計の「完成度」という一点において、計算が立つ3針のデザインがクロノグラフを凌駕する所以です。
ところが、この「トリコンパックス」からは、小さめのクロノグラフなればこそのアドバンテージが如実に感じられます。ダイヤルの12時側にだだっ広い「空き地」があったとしてもこのサイズなら許せる…いや、それこそが特段の魅力になっているではないですか!!
ヴィンテージ・デイトナが「幅37ミリ」。これがどこからどこまでを測ってのことなのかは、私には解りません。間近で見たことすらないので (;´∀`)
バルチックさんの公式では「幅39.5ミリ」と記される「トリコンパックス」ですが、測ってみるとこれ、ベゼルの幅なんです。ケース自体を裏側から測ってみたら、なんとピッタシで「幅37ミリ」でした。何これ~ちょっとだけ嬉しい(笑)
日本刀のような緊張感「ドーフィン針」
どれだけ優れたデザインのダイヤルであっても、それを活かすか否かは「針」にかかっています。実質、動的な唯一要素である針は、殊の外目立つパーツなのです。無意識に目で追っちゃいますからねぇ (;´∀`)
これは一目瞭然。まるで「日本刀の業物」のようです。空間を引き締める直線がもたらす緊張感。かっちょええ… (*´∀`*)
とは言え、針に関しては残念に感じた部分も。実際に見れるわけではないので言い切れませんが…側面終端の様子を見るに、裏側の仕上げにはあまり頓着していないようです。ザラザラした箇所が幾つか見受けられました。「TG-6」の「顕微鏡モード」で撮影して初めて気付けたくらいですので、肉眼で見て気になるものではありません。
磨き込まれた「インデックス」
価格から言って植え込みではないでしょうし、成形は型抜きだと思いますが…それでもこの滑らかに磨き込まれた表面と上品な輝き。「トリコンパックス」をその他の「ポール・ニューマン オマージュ」と区別するための最重要のパーツ。この「12時のアラビアインデックス」は注目です。時計好きなら間違いなく萌えポイントですから(笑)
それにしてもこの仕上げ…当のバルチックさんにしても、ここは気合いの入れどころだったのかもしれませんね (*´∀`*)
「サブダイヤル」には粗めのレコードパターン
「トリコンパックス」を「トリコンパックス」たらしめる最大要素が「3つのサブダイヤル」です。ここには今の時代で見れば粗めのレコードパターンが施されています。所謂「コンセントリック加工」かな??
これはそれなりの時代感を纏わせるためなのかもしれません。そうそう、ここは細かくて繊細な同心円ではいかんのですよ (*´∀`*)
仕上げは十分に良好ですから、1970年前後の古臭いテイストを感じさせつつも、安っぽく見えたりはしません。ダイヤルのサーフェイス(パウダー調のアイボリー)との相性は抜群だと思います。
丁寧に記された各種「アワーマーカー」
ミニッツトラックなどの各種「アワーマーカー」の転写もとても丁寧で見応えがあります。必要十分な塗料の厚みで、ダイヤルとのコントラストも良好です。
下手な仕事をすると、途端に全体が安っぽくなる部分ですからね。細かい仕上げにメゾンの意地を感じました。
オリジナリティーを打ち出したか??「ベゼルデザイン」
ベゼルもヴィンテージ・デイトナ同様「タキメーター仕様」ですが、ここは明確な意志をもって外してきました。平行に正対した数字ではなく、現行のデイトナのように放射軸に沿った文字を配置したデザインを用いています(下半分の数字は正位置に反転)
「60」より遅い平均時速を測れるようになっていたり、実際、これだけでもかなり「別物」に見えるもんだなぁ~と感心 (*´∀`*)
素材はアルミニウム。アルミベゼル大好きっ子の私としては、それだけで大喜びです。我ながらチョロいヤツだなぁ~って思いますもん(;´Д`)
時間経過とともに自然な傷が刻まれて、より「ヴィンテージ風味」が増すことも期待できますね!!
絶妙な長さで美観と使いやすさを両立した「リューズ」
理屈ではなく、何となく相容れない物に出くわすこともある腕時計。中でも「リューズ」とクロノグラフの「プッシャー」に関しては、その見た目に加え「操作性」といった感覚的な要素が含まれる分、好き嫌いが分かれます。
クロノグラフのプッシャーには、押したときに指先が痛くならない程度の大きさを求めたいですし、長すぎるリューズは手の甲に突き刺さることもあるので遠慮したいところです。「トリコンパックス」のそれらは、決して奇をてらったものではありません。極々標準的なサイズ感、見た目のものが使われています。ヴィンテージ・デイトナのそれを意識した部分もあるでしょう。
実際に操作して何気に感心したのは「リューズの長さ」でしょうか。ヴィンテージでよく目撃する「平たいヤツ」ほどではありませんが、絶妙な長さです。でもってこれが実に巻きやすくできています。痒いところに手が届く…解っている作りです。
写真を見る限りサイズ的には「バイコンパックス」で使われているリューズと同じにも見えますが…実際はどうなんでしょうね??
というわけで「トリコンパックス」の「押し物」「回し物」に関しては文句の付けようがありません (*´∀`*)
「セクシー風防」ここに極まる
「ドーム型の風防が嫌い」と仰る貴兄も中にはいらっしゃるかもしれません。決して変節を促すつもりはありませんが…取り敢えず見て下さい。
どうですか?? 何というお色気、何というセクシー。そもそも「風防」は腕時計において最も色っぽいパーツな訳ですが、この曲線美と透けっぷりを見て、何も感じない野郎が世の中にいるでしょうか??
まるで空気のカプセルに閉じ込めた「大人のメリーゴーラウンド」です。重なり合う針、ダイヤルに落ちる影、3つのサブダイヤル、そのどれもが上品に目に映る「ドーム型風防」の素晴らしさ。伝わると良いなぁ~ (*´ω`*)
「ラグ」と「弓カン」が生み出す「セクシーなスロープ」
すみません、またまたセクシー案件でございます(笑)
この「弓カン」は付属する「フラットリンク ブレスレット」のものですが、これまた男心を弄ぶが如き「魅惑の曲線」を見せつけてくれます。あぁ…最高なのだが…この最高をどのように表現すべきか、その術がないのでござる (;´Д`)
ラグとともに奏でる「曲線のユニゾン」とでも呼べば良いのかなぁ…その形もさることながら、ポリッシュされたパーツがほとんど存在しない「トリコンパックス」のケースに、艶っぽさを与えてくれる効果も無視できません。
あぁ 素晴らしき哉「ラグの穴」
セクシー!! セクシー!! 言った後で「穴」のお話ですからね…誠に恐縮です (;´∀`)
いやもう真面目に!! このラグに開けられた「穴」こそが、バルチックさんの答えなんじゃないかと思っています。だってね、本来必要ないのですよ。付属のブレスレットもストラップも「クイックリリース」できちゃう仕様なんですもん。それなのに、バネ棒を押し込むための穴を開けてくれているのです。
後々、他社製のストラップをセットする際に助かるはずです。ですから、そういう「配慮」の一面もあるでしょう。
ですが私はこの「穴」を、バルチックさんの「意思表示」だと受け止めました。彼らはこう言いたいのではないでしょうか??
「だってさ、穴が空いてたほうが格好良いじゃん!!」
まさにそれ!! たかが「穴」されど「穴」です。この世知辛い世の中に、大切にしたい「穴」があるとしたら…この「ラグ側面の穴」はそういう「穴」だと思います。
※これもそろそろ来るかッッッ!!!
貴方が使いたいのは「ブレスレット」ですか?? それとも「ストラップ」ですか??
…と、泉に御わす女神さまに尋ねられたらどうしますか??…ううん!! 悩まなくてもいいのよ!? だって両方付いてたんだもーん (*´∀`*)
「フラットリンク ブレス」が恋女房すぎる!!
あー参った。参ったわー。好き過ぎるわー「フラットリンク ブレスレット」。決して仕上げが極上とか、デザインが最高に格好良いとか、そういうのではないのです。ただただ「最適」なのです。何もかもが「丁度良い」のです。
コマの厚みにしても「厚からず薄からず」で絶妙な厚み。全体重量は軽く、一見して少々頼りなくも見えるかもしれません。
ですが「トリコンパックス」に装着すると、時計のヘッドの軽さも相まって極上の着け心地が約束されます。偶然か計算か…まさに最強のバッテリー。「トリコンパックス」にしてみれば、これ以上の「恋女房」はいないかもしれません。
外側をポリッシュしたコマの連続がエレガントで、朴訥とした時計本体のイノセントな部分に、僅かな色気を与えてくれます。うーん…好き過ぎる!!
操作性と装着性に優れた「バックル」
バックルは「フラットリンク ブレスレット」のデザインを尊重した調和の取れたデザインです。ロックの操作も軽快でノンストレス。シンプルな片開きであることも、私にとっては評価が高くなるポイントです。
パーツの剛性と加工精度も高く、スムースな動作で装着できるバックルには「毎日でも着けたい」と思わせる気持ち良さがあります。
高級ブランドのブレスのような隙きのない作りではありませんが、その分、気の置けなさが魅力といいますか…使いどころを選ばない、素晴らしいブレスだと思います (*´∀`*)
弓カンを裏側から。内蔵されたバネ棒は「クイックレバー仕様」ですので、時計本体から簡単にブレスレットを外せます。決して力が必要なわけではありませんが、爪が柔らかい人は難儀するかも。そこが気になる方は「ラグの穴」にピンを差し込んで外しましょう (;´∀`)
上品なカジュアルスタイルもイケる!! 「カーフレザー ストラップ」
ライトグレーの「レザーストラップ」が付属していました(知らんかったけど…)これが中々の質感でして、何と言いますか「トリコンパックス」にとっての「もう一つの最適解」ってな感じなのです。
ブレスレットからこのストラップに付け替えた瞬間、これまた得も言われぬ「色気」が放出されました。ニクい…ニクいぜバルチックさん!!
敢えて「明るめのグレー」を選んだ理由は「パンダ(リバース パンダ)」のデザインを活かしたかったからでしょう。コントラストをダイヤルだけに集約することで、視線が散ることを防いだのです。
もちろん、視認性の担保を理由に選ばれたカラーということで間違いないでしょうが、何より時計としての美観を重視するなら、このチョイスは正解中の正解だと思います。
何てことのない「尾錠」ですが、これはこれで良いって言いますか…バルチックさんの作る時計には合っていると思います。イクイップメントを含めたグランドデザインが秀逸ですねぇ。好きです (*´∀`*)
レザーストラップも「クイックレバー仕様」です。日頃から「3秒あればどんなブレスもストラップも、きれいサッパリ外して見せるぜ!!」と豪語する「バネ棒外しの魔術師」みたいな方には不要でしょうが、大抵の方には有用で便利な機能だと思います。ストラップを変える楽しみは「付替え易さ」が保証されてこそですからね!!
セリタ製「SW510-M」搭載
マイクロブランドの「定番クロノグラフムーブメント」になりつつある、セリタ製の手巻き「SW510-M」が心臓部です。
制御はカム式。9時位置にスモールセコンド、3時位置に30分計、6時位置に12時間計。28,800振動/時で23石。63時間のパワーリザーブを誇ります。いやぁー十分じゃないですかね??
マイクロブランドのように十分なサービス網を期待できない場合でも、こういった「エボーシュ」ならほとんどの場合、街の修理屋さんで直せちゃいます。気に入って長年使い続けることになっても、何の心配も要らないと思います (*´∀`*)
いずれタイムグラファーで測ってみるつもりですが、数日使ってみた限りでは上々でした。セリタはホント、良くなりましたよねぇー (*´∀`*)
バルチックが作りたかった「夢」
「オマージュ」という言葉はまるで媚薬です。前もってそう言っておけば、多くの模倣が免罪されるかのような錯覚を与えかねませんからね。ですが本来「オマージュ」は、超えたくても超えられなかった先人に対する「明確な白旗」なのです。少なくとも、そう思えないクリエーターは、性格的に創作仕事に向いていないと思います (;´Д`)
ただ、ある意味負けを認めた「オマージュ作品」でありながら、別種の魅力を獲得し「固有の価値」を失わない作品が生まれることもあります。私が思うに、バルチックさんの「トリコンパックス」はそれに当ります。
そもそもバルチックさんを「ブランドの成長段階」で考えれば、ホップ、ステップ、ジャンプの「ホップ」の段階でしょう。だから良いんです。ブランドの個性が明確になるのは、恐らくずっと先のことでしょうし、それまでは「先達に倣う時代」が必要なのです。ノスタルジックなコレクションを特徴とするバルチックさんなら尚のこと。オーナーの「夢」を自由奔放に形にして、今後も腕時計マニアを楽しませて欲しいと思います。
まるで「最初からここにいましたよ??」
外見上、多くの点で「ポール・ニューマン(Ref.6262 & 6264)」に似る「トリコンパックス」ですが、ベゼルやインデックス、サブダイヤルなどキモとなるパーツにはそれなりの「独自性」を発揮しています。そして、その独自性の在り方こそが、私がバルチックさんの「トリコンパックス」を前向きに捉えることができる要因です。
現在の工作技術をもってすれば、全ての要素を完璧に真似ることも可能でしょう。けれどもそれだと単なる「パクリ」になってしまう。パクリはパクリ以上でもそれ以下でもなく、そこには微塵の価値もありません。ですから「オマージュ モデル」を作る場合は、似せることよりもむしろ「いかに外すか??」がテーマとなるはずです。そしてその「外し方」こそが明暗を分けるのです。
バルチックさんの「トリコンパックス」を初めて写真で見た際、何と言いますか…即座に理解できました。そして思ったのです。「そうやな…これはバルチックのコレクションに加えるべきピースで間違いないわ」と。
私がある種の「必然」を感じた理由は明確でした。上手な表現が見つかりませんが、バルチックというブランドが作る全ての腕時計を一つの「家族」だとするならば、この「トリコンパックス」は、さも当然のごとく一番良い場所…「上座」に座っているじゃないですか。まるで「日曜日の朝に寝坊して、遅れて朝ごはんを食べに来たお父さん」のように。ある意味ふてぶてしく、何の不自然さもなく。
恐らくかなり初期の段階から、この「トリコンパックス」のアイデアは温められていたのでしょう。バルチックさんが誇る「均整の取れたコレクション」を見れば、そう思わざるを得ません。バルチックのオーナー「エティエンヌ・マレク」さん御本人にしても「トリコンパックス」は、満を持してリリースした「長年の夢」なのかもしれません。
最後に
今こうして袖口の「トリコンパックス」を愛でながら思います。これって、オマージュ作品にありがちな「背伸び感」が全然ないよなぁーと。
「ポール・ニューマン デイトナ」という腕時計界最大級のスーパースターを意識しつつ、当のバルチックさんとしては、今の自分たちの実力で可能なことだけをやろうとしている…そんな風に見えました。
だからこそ、違和感なく「バルチック コレクションの一員」として捉えることができましたし、私などは無理なく自然に受け入れることができたのだと思います。
そもそも私はかねてより「安易な模倣反対」の立場を貫いてきました。デザイナーとして、オリジナルの権利を毀損するビジネスのやり方は、ぶっちゃけ「敵」だからです。
でも最近は、少しずつですが考え方に変化が生じてきました。過去の良作からヒントやエッセンスを取り込むこと自体は、許されても良いのではないかと。
その過程と結果でバルチックさんが見せてくれた成果物「トリコンパックス」からは、1970年前後の「ヤニ臭い時代の風」すら感じることができます。
若いメゾン特有の危うさも、この場合は「リアルさ」に繋がっていると思います。ヴィンテージ・デイトナが纏う「時代の雰囲気の再現」で言えば、抜群の説得力です。
オマージュであることは隠しようもなく、故に万人にお薦めできるモデルではないかもしれません。ただ、元々古典顔のクロノグラフに目がなく「バルチック」というブランドのことも憎からず思っている貴兄になら、この「トリコンパックス」は力強くお薦めできる一本だと思います。
ブランドの方向性とモデルに込められた「意図」をご理解の上、用量・用法を守ってお買い求め下さい。とりあえずレギュラーモデルですから、気長に待てば手に入るはずです (*´∀`*)
【BALTIC TRICOMPAX】 ケース素材:ステンレススチール316L 直径:39,5mm 厚さ:13,5mm ラグ幅:20mm ベゼル:アルミニウム 風防:ダブルドームサファイア(内部無反射コーティング) 文字盤仕上げ:ライトベージュ 夜光:スーパールミノバ ムーブメント:手巻きセリタ SW510-M パワーリザーブ:63 時間 耐水性:50m
※これもそろそろ来るかッッッ!!!
ご意見・ご感想
コメント一覧 (2件)
黒海月さま。
お心遣いありがとうございます。
ホント… 今回ほど、皆さまの優しさに助けられたことはありません。
さて、やっぱり専用機のカメラは違うなぁ~と思いました。
スマホで内部処理された「映える」写真とは画作りが違いますが、仰るとおり質感表現は段違いだと思います。お陰でフルサイズのセンサーを搭載した一眼が欲しくて欲しくて(笑)
バルチックですが、それこそ腕時計好きの心のスキマを埋めるようなラインナップで、この先数年で一気に飛躍するブランドじゃないかと睨んでいます。
刺さるコンセプト、手に取りやすい価格… オススメですヾ(*´∀`*)ノ
砂布巾さん
こんにちわ、黒海月です。
写真の質感が格段に向上しましたね。金属の重量感、手触りが伝わってくるようです。それに、ベゼルやダイアルの繊細なニュアンスもビシビシ感じました。
バルチックは低価格ながら良い時計を作ってますね。
バチスカーフチタニウムの実機を見ましたがかなりグッときました。
お辛いことがあったようですが、素晴らしき腕時計の輪を通じて、少しでも心を癒されること願っております。
また、記事がリリースされることを心よりお待ちしてます。