らしくない…とてもらしくない地味な流れから発表された、ロレックスさんのシードゥエラー「ディープシー チャレンジ(Ref.126067)」。本来ならどど~んと熱烈に推すべき指名を帯びた専門メディアさんにしても、イマイチ盛り上げ方に悩んでいるように見受けられます。様子見って感じなのかな??
ロレックス シードゥエラー「ディープシー チャレンジ(Ref.126067)」は究極の「キワモノ」か??
さもあらん…大概な「キワモノ」ですからねぇ(;´∀`)
ポジションは全く違いますが、その辺りは「ミルガウス」に近いものを感じます。万人にオススメ!!みたいな見出しは立てられないでしょうし、あくまで「プロ用」或いは「マニア用」とするしかありません。生まれてすぐに「数奇な因果」を背負わされた「ディープシー チャレンジ」…最近のロレックスさんは既存ラインの洗練に全精力を傾けてきた印象が強かったですから、むしろ私個人としては「時計変人」の血が騒ぐというか…「ディープシー チャレンジ」の「チャレンジ」の部分に、興味をそそられています(*´∀`)
最大の特徴は「36,090フィート」に及ぶ防水性能。メートル換算すると「11,000メートル」になります。「1万メートル超え」ですよ!?正直、想像もできない世界です。例えば、有人潜水調査船「しんかい6500」の最大潜航深度は「6500メートル」なワケですよ。その倍近くまで平気だなんて…化け物ですね(;´Д`)
今見るとデッサンの怪しさよ(笑)まぁそれはさて置いて…ロレックスさんはどうしてこの時期…北半球が冬に突入するこの時期に、驚異の潜水能力を持つ「ディープシー チャレンジ」をリリースしたのでしょうか??
ダイバーズの売れ行きで言えば、夏季に集中するのが道理です。「ディープシー チャレンジ」をマーケティングの括りでダイバーズの一種とするならですが、冬が始まろうとする「11月1日」のリリースはイレギュラーなものに見えます。
ただ「ディープシー チャレンジ」を究極的な「プロツール」として捉えるなら、その意味合いは全く違ってきます。プロのダイバーたちにとって「潜水」は仕事であり、求められれば季節がいつであろうと関係ないからです。当然、彼らが使用するツール類も年がら年中必要とされるでしょう。ならば解ります。完成したタイミングでリリースした…そういうことなのでしょう。
ロレックスと深海調査
2012年3月26日、有名な映画監督、そして探検家としても知られる「ジェームズ・キャメロン氏」が、マリアナ海溝最深部で潜航調査を行いました。その計画で使われた潜航艇の名前が「ディープシー チャレンジャー号」。そしてこのとき、潜航艇に取り付けられて共に深海へ赴いたのが、ロレックスが特別に用意した腕時計「ディープシー チャレンジ」でした。
このとき達成した水深は10.908km。つまり2012年の時点で「ディープシー チャレンジ」は現在の性能に到達していたのです。売れっ子映画監督「ジェームズ・キャメロン氏」のプロジェクトですし、話題もこのときが一番盛り上がっていたでしょう。商売っ気で考えたらすぐに発売したいですよね??
時間を掛けた理由はコレでしょうね(笑)左は2012年の探査で使用された「ディープシー チャレンジ」そして右が1960年の探査で使用された「ディープシー スペシャル(コルムのバブルっぽい!!)」ですが…どちらも凶悪な水圧に耐えるための凶悪な見た目をしています。確かに…コレではプロのダイバーが割り切って使うにしても色々と難儀しそう。特に「風防!!」シルエットがすでにヤバいっす!!(笑)
10年の歳月は、2012年版の性能を可能な限り「使える」サイズに落とし込むため…その開発に必要な期間だったのかもしれませんねぇ…(;´∀`)
で、どの程度「日常使い」できるレベルまでシュリンクされたかと言うと…ケース直径「50ミリ」(笑)。50ミリってアンタ!!「デカアツ本家」パネライさんもビックリやないですか…(;´Д`)
「ディプシー チャレンジ(Ref.126067)」の性能に迫る!!
飽和潜水の強い味方「ヘリウム排出バルブ」
もちろん、デカいだけで深海に潜れるワケではありません。以前、知床の痛ましい事故のニュースでも話題になった「飽和潜水」。そこで使われるヘリウムガスガスはとても小さな分子構造をしているので、どれだけ密閉が万全な時計であっても、ガスの侵入は避けられません。そして浮上時の減圧の際には、内部に侵入したヘリウムガスが深刻なダメージを時計内部に及ぼすのです。
「ディープシー チャレンジ」に搭載される「ヘリウム排出バルブ」は、ケースの内圧がヘリウムガスで押し上げられると自動的に作動して、腕時計の内部破損を防いでくれます。
ロレックスさん以外でも「潜水に自信あり!!」を謳う時計の多くに搭載される機能ですね。ロレックスさんはこの機能の特許を1967年に取得済みです。やっぱ先進的ッ!!(*´∀`)
「リングロック システム」で圧に耐えろ!!
深海に赴くなら、外部からかかる恐るべき水圧にも耐えなければなりません。ロレックスさんが特許を取得した「リングロック システム」なら、分厚いサファイアクリスタル風防、窒素合金の耐圧リング、RLX製のバックケースにより、公称の水深11,000メートルに25%のマージンを加えた「水深13,750メートル」の水圧に耐えられる潜在能力があるそうです。検査も怠りなく…だそうですよ。
付いてますか??「トリプロックリューズ」
日頃から一般的なダイバーズを使っていても思いますが、水が侵入するとすれば、やっぱり「リューズ」からですよね??よくある「ねじ込み式」でもある程度の安心感はありますが、ある程度じゃ済まないのが深海の世界です。
そんな心配をご無用なものにするのが「トリプロックリューズ」。チューブ内部に2箇所、リューズ内部に1箇所、合計3つの密閉部を配して気密性を高めています。この機構が搭載されているリューズには、王冠マークの下に3つのマークがあるんですって!!奥さん知ってはりましたか??
まぁ…さすがというか何というか…ここまでやってダメなら知らん!!と言える追い込んだ作りです。こういう地味なところですよ。ロレックスさんの凄みを感じるのは。
「RLXチタン」は超重量に対する答えだ!!
凄い!!確かに凄い時計なんですが…コレだけてんこ盛りに詰め込めば、そもそものケースサイズ「50ミリ」もあることですし、とんでもなく重くなるはずなんです。実際、2012年の潜航で使用された「ディープシー チャレンジ」はお世辞にも快適とは呼べない重さだったそうです。
そこでロレックスさんはある意味「禁断の扉」を一つ開けました。ブランド初の「フルチタン」仕様です。その名も「RLXチタン」。極めて軽量で変形や腐食に強い「グレード5」のチタンだそうです。
うーむむ。その辺はチューダーさんにお任せだと思っていたので意外でしたが、確かにチタンでも使わんことには「ゴリマッチョ専用」時計になってしまいます。ホディンキーさんの記述によりますと、SS製と仮定した場合の重量は「350グラム程度」…これは最早、水中以外では使いたくない重さです。対してRLXチタン製の実機は「251グラム」に収まっているそうです。それでも「馬鹿みたいに重たい」ことには変わりありませんが、SSブレスのSSサブマーシブル辺りをお使いの方なら、ギリギリ許せる重量かもしれません(;´∀`)
パワリザ70時間!!「キャリバー 3230」
心臓部には70時間のパワーリザーブを有した「キャリバー 3230」。高いエネルギー効率、高い動作信頼性。磁気にも強いとくれば、ヘビーデューティーな「ディープシー チャレンジ」にはもってこいかもしれません。いやまて!?耐圧機構てんこ盛りだとしても、コイツがもう少し小さかったら、ケースサイズも47ミリくらいにはできたかもしれんなぁ~と思ったり…(;´Д`)
スタイリッシュに可変!!「エクステンションシステム」
ダイビングスーツ着用時の着け心地に配慮した「グライドロック」と「フリップロック」…2つの「エクステンションシステム」は、工具を使わずにブレスレットを厚さ7ミリまでのダイビングスーツに対応させる優れもの。例えばバイクに乗る方なら、レザースーツの上から着ける際にも重宝しそうですね!!(*´∀`)
ロレックスvs.オメガ「負けられない戦い」
さて「ディープシー チャレンジ」について、たらたらと書き進めて参りました。でもやっぱり拘ってしまう…何故この時期…っていうか、今年中のリリースだったのでしょうか??
例えば、本年の「Watches & Wonders Geneve」で言えば、ロレックスさんからは「シードゥエラー ディープシー(Ref.136660)」が出ているワケです。それほど焦らずとも来年の「W&W 2023」で華々しく発表することも出来たはずです。そこで思い浮かぶのが、オメガさんが本年リリースした「ウルトラディープ」の存在。
確か「ディープシー チャレンジ」と同じくマリアナ海溝に潜ったチタン製の「ウルトラディープ」があったはずですが、それを「シャア専用」とするなら、2022年発表の「ウルトラディープ」は「量産型」ということになるでしょうか。つまり、ライバル同士の「負けられない戦い」があって「ディープシー チャレンジ」は本年のリリースとなったのではないかと思っています。
「ディープシー チャレンジ」と「ウルトラディープ」を比較しよう!!
大きさの比較ができるようにしてみました。横並びにすると「ウルトラディープ(215.30.46.21.03.001)」がフツーでありきたりのダイバーズに見えます。実際はケース横径「45.5ミリ」もあるんですけどねぇ…「ディープシー チャレンジ(Ref.126067)」のマッシブさはライバルのそれをはるかに凌駕するようです。やっぱデケぇ~(;´∀`)
ただ、共通するのは「極地」を目指す時計でありながら、その見た目はとても美しい…いや「美しすぎる」という点でしょうか。
「ウルトラディープ」のリリース直後、私も某所で実物を拝見したことがあります。それは予約の取り置き品でしたが…幸運でしたね。スタッフさんに「手に取ってどうぞ」と促されたものの、丁重にご遠慮させていただきました。予約品はすでに予約された方の物とも考えられますし、だとしたら、人様にはあんまり触られたくないじゃないですか??
なのでお写真も遠慮したワケですが…デカかったです。2センチ近い厚みも強烈でした。ですがそれよりも、そのマッシブさと裏腹の「美麗な作り」に心底驚いた私。
「脱いだらマッチョ」なイケメンは少なくありませんが、コレは言ってみれば「ミスターオリンピア」で入賞できるくらいの肉体を誇るイケメンです。他のシーマスターどもとは「筋肉量」が違う。それでいて「優男」の如き面構え。「キレイ過ぎますね~」とは、その場で思わず私が漏らしたコメントです。
特別な性能だからこそ、美しくなければならない
「ディープシー チャレンジ(Ref.126067)」も同様です。実物を見る機会は永遠に来ないかもしれません。ですが写真で見る限りでも、その美しさは十分に伝わってきます。
ロレックスのあらゆるモデルに発揮されるラグジュアリーは「ディープシー チャレンジ」においても健在。ケースの繊細な面取りや、美しすぎるベゼルを見ると、果たして「ディープシー チャレンジ」ようなコンセプトの時計に、ここまでの研ぎ澄まされた「美」が必要なのかという疑問すら湧いてきます。恐らく、これから飽和潜水作業に入るプロのダイバーさんにとって「ディープシー チャレンジ」や「ウルトラディープ」の外見的美しさは、実際のところどうでも良いファクターかもしれません。
ですがもし、極限で任務に挑む男たちや、未知の深海への飽くなき挑戦にシンパシーを感じ、そのパッションの一端を日常生活に取り込みたいと考える「熱」をお持ちの方にとっては、マッシブな性能を賛美すると同時に、時計としての美しさも欠かすことが出来ないのでしょう。それは一種のトロフィーなのです。
倍額に相当する価値の差があるのか??
ロレックスの「ディープシー チャレンジ」が「309万3200円」、オメガの「ウルトラディープ」が「158万4000円」です。似たコンセプトで生まれた2つの時計の間にある、この「価格差」の理由は一体何でしょうか??
「ウルトラディープ」には水深「6,000メートル」までの防水性能があります。対して「ディープシー チャレンジ」の防水性能は「11,000メートル」。とりあえず、倍の性能差と言っても良いでしょう。なので「お値段も倍!!」の根拠には…なります。
ケースのマテリアルですが「ディープシー チャレンジ」がチタン製、「ウルトラディープ」がオメガスティール製です。オメガスティールはまぁ…ステンレスでしょう。チタンの加工の面倒くささなども加味すれば、これも「ディープシー チャレンジ」の方が高価である理由にはなります。一応は。
ダイビングに適したブレスレット構造などは大差ないとして…あとは「ムーブメント」ですか??
「ディープシー チャレンジ」には「Cal.3230」。高いエネルギー効率、対磁性に優れたニッケル・リン合金製の脱進機。パラフレックス ショック・アブソーバによる耐衝撃性。そして70時間のパワーリザーブ。間違いなく優秀なムーブメントだと思います。いや、鉄壁でしょうね。
そして「ウルトラディープ」には、コーアクシャル マスター クロノメーターの「Cal.8912」。こちらも脱進機はコーアクシャルですし、15,000ガウス以上の耐磁性能。高い耐久性と耐衝撃性を特徴としています。パワーリザーブは60時間です。どうでしょう??少々雑ですが、ムーブメントは同点ってことで良いでしょうか??
300万円は高価過ぎる
さて、これらを総合した私の意見ですが…「ディープシー チャレンジ」が「ウルトラディープ」より高価な理由の土台に、元々のロレックスとオメガの標準的な価格差があるとしても、些か大き過ぎる差ではないかと思いました。80万円くらいの差で妥当だと思いますが…如何でしょう??
「220万~240万円」…いや、まだまだお高い。正直、170万円くらいでないと「そんなに出すんやったらデイトナの『116500LN』買いますわ!!」ってな人の方が多いと思うんですけどねぇ…(どうせ売ってないのは同じですもん)
それでも嬉しかった「ディープシー チャレンジ(Ref.126067)」のリリース
これまで、宇宙へ行ったり深海に潜ったり…そういうアクティブな部分の露出の上手さで言えば、オメガさんの方に分があったと思います。片やロレックスさんと言えば、どうしても投機的で高価な商材というイメージが先行して、腕時計の歩みの部分を純粋に楽しめない雰囲気もありました(ロレックスさんも被害者ですけど)。本来ならどちらも働く現役世代に向けた「ツール」のはずなのです。
そういう意味で私は嬉しかったのです。そのくらい「ディープシー チャレンジ」のリリースは意外で驚きに満ちたものでした。実験的な要素を満載にして、ロレックスのユニバースやマーケットすらも撹拌して試すような「挑戦的な匂い」がプンプンするからです(*´∀`)
投機の対象としての「ディープシー チャレンジ」
ロレックスである以上、投機の対象にはなってしまうことでしょう。ですが…もしかしたら、その異形とシティーユースの困難さから、高額で買い取っても高額で捌くのが難しい…ロレックス案件としては珍しい事態が起きるかもしれません。数年後に「転売ヤーキラー」みたいな異名が付いてたら…最高ですけどね(*´∇`*)
この「50ミリ」そして「251グラム」という「アームクラッシャー」なデカい時計のお披露目は、ロレックスさんの「ラボ」としての底力を感じさせるものでした。「超オーバースペックな時計」という男の夢を具現化してくれた事実に、何となくですが、世知辛い商売を抜きにした部分…健全な「時計屋」としての姿勢も感じることが出来たように思います。
「ディープシー チャレンジ」が「ウルトラディープ」に対抗するようにリリースされた…という構図は完全に私の妄想です。だったら良いな…そうあって欲しいなという想像に過ぎません。ですが…この2本のような「純粋な野郎時計」には、拳で殴り合うような「激熱な展開」こそが相応しいと、私は思うのです(*´∀`)
最後に
正規店での購入を諦めて以来、久しぶりにロレックスさんの話題を書きたくなりました。個人的にはそれくらい興味を覚えた「ディープシー チャレンジ(126067)」の出現。書き出しで「ロレックスらしくない地味な登場」…と申しましたが、もしかすると「ディープシー チャレンジ」のビジネスは2012年…いや、1960年から脈々と続いていたのかもしれないのです。我々が気付かなかっただけで(;´∀`)
なぁ~んて考えると増々有り難みが増す「ディープシー チャレンジ」ですが、50ミリの直径に後退りしないで済む「立派なガタイ」をお持ちの諸兄なら、ヒョロい我々を横目に「デカアツロレックス」を思う存分お使いになって、思う存分ドヤって欲しいと思います。プロのダイバーさん以外の方が「地上で」身に着けるならば…コレはそういう用途の時計です(笑)
今回はここまで!!(*´∀`)
※コメントへのお返し、遅れてスミマセン(;´Д`)落ち着いて読んで返せそうなタイミングで、順次承認させていただきます。暫時…暫時お待ちを!!
ご意見・ご感想