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ロレックス「認定中古品」が起こすパラダイムシフト

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先日、私よりも10歳近く年上の御仁の口から「それって、ワンチャンあるんじゃない??」という言葉を聞いたときには心底驚きました。「ワンチャン」なんて、若者文化におもねって生きてきた私ですら、一度も使ったことのないワードでしたから。

そんなわけで、最先端(?)の若者言葉だと思っていた「ワンチャン」をさらりと使いこなす大先輩の様子に「この人、歳のわりに頭柔らかいなぁ~」と感心させられた次第なのですが…(;´∀`)

意外な方から意外な言葉を聞く…感心することもあれば、驚嘆、或いは衝撃すら感じることもあるでしょう。腕時計絡みで言いますと、先刻、ロレックスさんが突如として発表した「CERTIFIED PRE-OWNED」「認定中古品」というワード。あれはホンマに「無形の爆発物」の如き衝撃を与えるものでした。文字通りの「びっくり仰天」じゃないですかね??

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「認定中古」といえばフランク ミュラーの「PAW」

腕時計メーカーが自分たちが作るブランド品の「中古」をも管理下に置く…私が最初にその発想の存在について知ったのは、フランク ミュラーの総輸入代理店「ワールド通商」が始めたサービス、正規認定中古時計「プレミアム アプルーブド ウォッチ」の話としてでした。業界初の試みだったかまでは解りませんが、日本人の私が報道などを通じて知る形としては、あれが最初だったと思います。

出典:https://watchland-gallery.jp/

中古品を集める手段としては「下取り」「委託販売」の二つを用意。それらをスイス本国と同レベルの技術で完全なメンテを施し、レザーストラップなどは新品の純正品に交換されて販売されるそうです。

さらに、保証期間が1年間。正規認定中古専用のギャランティーが新たに発行され、純正のBOXに収められます。そしてここが「最重要」なところですが、認定中古品は購入した方をオーナーとした顧客情報で「上書き登録」されるのです。

最新事情が見付からなかったので、ハッキリと言い切れない部分ではありますが…フランク ミュラーと言えばこれまで、非常に厳格な「並行差別」で知られてきました。並行輸入店であっても「国内正規品」を購入したのであれば正規のメンテが受けられるようですが…だとしても、巷で購入した多くの中古品が「正規メンテが受けられない可愛そうな子」という事実は変わりません。その点「正規認定中古品」ならば、間違いなく「正規メンテ」の恩恵に浴すことが叶いますし、中古であっても新たに「正規オーナー」としての管理を受けられるのです。

フランク ミュラーには解りやすい他の事情もあるでしょう。御存知の通り、並行や中古市場でのフランク ミュラーのバリューは高いとは言えません。これまでの時計史に残してきた功績を思えば、これは不当に低い評価のような気もします。

余談ですが、新品のデイトナが100万円以内で買えた2000年代初頭。フランク ミュラーの売れ筋の多くは軽く100万円を超えていました。人気でロレックスを圧倒していた時代もあったんですよ??まぁどちらも、中古になると半額辺りに落ち着いていたはずですが…あの頃、誰がこの現状を予想したでしょうか(;´Д`)

所謂「並行差別」が中古市場にも当然の影響を与え、その結果、フランク ミュラーの中古品は高値が付かなくなってしまったと考えるのが妥当かもしれません。中古市場で余りにも安く買い叩かれる様子を見れば、心の何処かで「トノーカッベックス欲しいなぁ~」と思っていたとしても、二の足を踏むのが人情ってもんです。それってワシのことやがな!!(;´Д`)

そうした現象は当の正規販売にも悪い影響を及ぼします。その辺りを苦々しく思って始めた「正規認定中古制度」と考えれば、大方を察することができると思います。

そう単純じゃない??ロレックスの「認定中古品」プログラム

冒頭にも申しました通り「認定中古品」なんて言葉が一番似合わないブランドが「世界の人気者」ロレックスさんではないでしょうか??どう考えても、フランク ミュラーさんの「認定中古品制度」とは趣旨が異なるように思えるのです。

ということで、一足早くプログラムが開始される欧州随一の正規販売店「ブヘラ ショップ(Bucherer 1888)」の公式で情報を集めてみました。実際に「始まってる」ところなら今後の展開の参考にもなりますし。

例えば、並行新品や中古品としてロレックスを購入した方なら、どうしても拭えぬ「怯え」を抱えているかもしれません。もちろん「このロレックスは本物なのか??」という至極根本的な問題についてです。

出典:https://www.bucherer.com/

「人気者」ロレックスならではの事情だと思いますが、完全な「偽物」がマーケットに紛れ込む可能性は低いにしても、パーツの一部が非正規品だったりして揉めた…なんて話はザラに伝わってきますからね。「認定中古品」ならその点の心配は完全に解消されそうです。まずはこのプログラムが、消費者にとってどういった「メリット」があるのかを見ていきましょう。

心強いロレックスからの「真正性保証」

出典:https://www.bucherer.com/

「認定中古品」にはロレックスさんが「これは本物である」と認めた証が与えられます。ブヘラ ショップさんで現在販売されている品物を調べると、ほとんどにルーレット刻印が見られます。つまり、比較的近年のモデルしか扱っていないようにも見て取れますが、例えば、半世紀も前のモデルにも同様に「完全な真正性」を与えることができるのは、当のロレックスさんだけです。非正規の修理を受けた痕跡がある個体を排除して純血のモデルのみを扱ってくれるなら、過去のモデルに興味がある消費者も、臆することなく手にとることができるようになるでしょう。

2年間の「国際ロレックス認定中古品保証」が付いてくる

出典:https://www.bucherer.com/

これができるのも、当然ながらロレックスさんだけです。当該の時計が購入の時点で「本物」であることを公式に確認した上で発効されるものであり「2年間」の間、完全な機能性を有しつつ、確実に動作することを保証してくれます。

中古品と言えどもフルメンテナンスを行い、新品現行品に近い状態で扱われるのが「認定中古品」なのでしょう。そういった「自信」が無ければ、2年間の保証を謳うことは難しいと思います。

日本でも実現??「ロレックス認定中古ショールーム」

出典:https://www.bucherer.com/

ブヘラ ショップさんによりますと「ロレックス認定中古ショールーム」或いは専用ブースがあるみたいです。これはめっちゃ憧れますねぇ(*´∀`)

中古といえども決して安くはないお買い物です。「認定中古品」という存在を、オーナーが変われば変わるほど価格が上昇する一部の「美術品」のようなものだとすれば、顧客に対して「特別な空間」「特別な体験」を約束することは、とても意義のある贅沢だと思います。謂わば「貴方はこの瞬間に我々のファミリーになりました!!」みたいな宣誓の瞬間ですかね??(*´∀`)

2年間の保証が付いたり、正規のメンテナンスで整備された個体であったりと「認定中古品」の恩恵は色々あります。ですが、消費者にとって一番嬉しいのは、中古と言えども「魁!!男塾の江田島平八」ばりに堂々と「ワシがロレックス認定中古品オーナー、○○である!!」と宣言できちゃうところではないでしょうか??

この辺りの「上質な体験」に価値を見出す方にとっては、他の中古品とは違う「贅沢な中古品」として、より一層、魅力的に映るかもしれません(*´∀`)

「ロレックス認定中古品」の気になる価格設定は??

中古品でありながら、その個体の正式なオーナーに登録されるなど、一般的な中古品購入では得られないプレミアムな体験が特徴の「ロレックス認定中古品」ですが、問題は価格設定です。例えば「GMTマスターⅡ(116710)」「認定中古品」を当時の定価の最高値辺りで売り始めたら…祭りが起きると思います。参考までにブヘラ ショップでの現在の価格を参照しますと…

出典:https://www.bucherer.com/

「21,000スイスフラン(3,013,686円)でした(笑)いや…そっか、そっち方向なのかって感じです(;´Д`)

つまり、過去の優れたモデルを、ロレックスの最新技術でバリバリに使える状態にした「最高にプレミアムな時計」「認定中古品」という位置付けなのでしょう。これでは「転売ヤー対策」にはならないかなぁ(;´Д`)

例えば「かめ吉」さんで販売中の中古品「GMTマスターⅡ(116710)」のお値段は税込みで「2,199,850円」でした。

一般的な中古品の競争力が「認定中古品」に対して優勢であり続ける限り、今後も中古市場は活発に動き、転売ヤーの懐も潤い続けることでしょう。マラソンも続くのでしょうね(汗)

「認定中古品」というプレミアムの重さ

出典:https://www.bucherer.com/

常識的に考えれば、過去の製品を「再販」するに際しては、現行品の価値を貶めない程度の価格設定を行うはずです。「過去作の方が高い」という事実は消費者の混乱を招きますし、いずれは価値の陳腐化にも繋がりそうですし。

ロレックスの時計の人気は、近年の揺るがない価値に支えられてきたものです。「認定中古品」の価格が現行モデルのそれを凌駕した場合、消費者の中で「結局、どれを買うのが正しいのか??」という疑問が湧きかねません。

当初の望みからは程遠く、非常に高価な価格設定だった「認定中古品」。一般的な中古市場価格との「差額」「中古と言えども新品同様!!」と謳うプレミアムなサービスそのものに払われたと考えるしかなさそうです。

メーカーと販売の信頼関係が可能にするプログラム

今回の「認定中古品」の取り組みで、最初に主導的な役割を果たす「ブヘラ ショップ」さんといえば、欧州にロレックスの時計を広めた最大功労者としてその名を知られる存在です。ロレックスさんにすれば後にも先にも「最も信頼の置けるパートナー」がブヘラ ショップさんなのは間違いないでしょう。

ブヘラ ショップ本店(スイス・ルツェルン)
出典:https://www.bucherer.com/

例えば、ロレックスがメーカーとして直接「認定中古品制度」を販売する形を取ってしまうと、先にも述べました通り、価格の設定などで企業の礎を揺るがしかねません。また各所で軋轢を生むことも十分に想像できます。悪影響を懸念する中古品市場からの反発は必至でしょう。

ですが、欧州のマーケットで絶大な存在であるブヘラ ショップを挟むことで、それら反意の頭を抑えることが可能になります。今後の「認定中古品制度」運用でも、ブヘラ ショップさんの手法が何らかの基準になることは間違いないと思いますし、そういう意味では、今回の取組の最もデリケートな部分で、ブヘラ ショップさんが「盾になってくれた」のかもしれません。そうして発進できたのが今回の「認定中古品制度」なのでしょう。

ロレックスさん以外との関係性においても、他の数多のブランドの「認定中古品」を取り扱っている事実を見れば、ブヘラ ショップさんの信頼度の高さが伺えます。オメガ、ジャガー ルクルト、パネライ、カルティエ…錚々たるブランド各社が「認定中古品」の運用を任せているのですから。

今後の中古品マーケットへの影響は??

先の「GMTマスターⅡ(116710)」の販売価格を見れば、当面、現状の中古市場での扱いも維持されるでしょう。どのような形で中古品の買付が行われているかは解りませんが、恐らくは極端は買い叩きは起きていないはずです。

もちろん売る側にしてみれば、売った個体がその後「認定」を受けようが受けまいが知ったことではないでしょう。少しでも高く売れる方に売るでしょうし、とりあえずはそれで良い気がします。

ですが、同額だった場合はどうでしょう??私なら「認定中古品」にしてくれる側に売りたいと思います。自分が愛用してきたモデルに新しい価値が芽生えるなんて…腕時計好きとしての夢があるじゃないですか。折角なら、十把一絡げの「中古」に落ちぶれるよりも、特別感のある「認定中古品」にしてやりたい…そんな親心を掻き立てられるのです。

中古の「差別化」は転売ヤーを駆逐するか??

さて、今回のことで「パラダイムシフト」が起きるとすれば…ここが核心です。今後「転売ヤー駆逐」に繋がるか否か。

買い取り価格に差が付かない、或いは「認定中古品」用の買い取りが安い場合、転売の旨味は消えず、組織的なマラソン行為も無くならないでしょう。ですが5年後は解りません。その頃には「認定中古品」を一般的な中古品と差別する「新しい常識」が醸成しているかもしれないからです。

ロレックスさんの中古市場が大幅な高値で安定してきた要因に、中古品でも価値がブレないという前提があったことは間違いないでしょう。ならばその枠組に仕切線を描く「認定中古品」の存在は、中古市場を上下に「二分する」可能性を秘めています。

そもそも「正規価格より高価」という訳のわからない状況にあるのが、現在の「ロレックス中古市場」です。そこに何らかのクエスチョンを与え、消費者に「それで良いのか??」と問いかけることができれば、正規と並行の価値が曖昧に溶け合っていた中古品の差別化が始まり、元が並行品の中古よりも正規品。どうせ正規品中古を買うなら「認定中古品」の方が良い…という論法も成り立つような気がします。

うまく行けば、中古品の価格は須らく下がってくるでしょう。先日、中野で中古販売店を覗いた際に、以前と比べ驚くほどロレックスの各モデルが安くなっていることに気付きましたが、今後はさらに価格低下が進む…つまり買取価格が下がることに繋がるかもしれません。となれば「認定中古品」用の元個体の仕入れ値も下がるでしょうし、当然ながら販売される「認定中古品」の価格も魅力的なプライスに落ち着く可能性があります。

まぁ…これなんて単なる願望に過ぎないのですが、その頃には諸悪の根源「転売ヤー」も尻尾を巻いて逃げ出しているかもしれませんね。恐らくは他の商材に活路を見出すだけなのでしょうが…やたらと強かだもんなぁ(;´Д`)

最後に

自前のブヘラとロレックス

他のブランドの「認定中古品制度」で起きないことが、ロレックスさんなら起きてしまいそうな気がします。そのくらい業界の旗手として先頭を走ってきたロレックスさんです。良きにつけ悪しきにつけ、腕時計業界に「パラダイムシフト」を起こしてきたロレックスさんです。

中古なんだから数世代前の価格を目安に売ってくれ…と言いたいところですが、現代の最先端技術でちょいとレトロなモデルに新しい命を与えたのが「認定中古品」だとすれば、それも難しいところです。

今後、この制度を使ってロレックスさんがどんな世界を描きたいのか…その全貌を見るには材料が少なすぎます。とりあえず、単なる一腕時計愛好家の私としては、日本で運用が開始された際、アホみたいな「認定中古品マラソン」が起きないことを祈るのみです。その辺りのハンドリングに関しては日本の正規販売店の皆さまの「力量」が問われるところですねぇ…(;´∀`)

とは言え私個人は、この「認定中古品」のプログラムを全面的に支持します。これまで何となく事情通の「目利き」に任せてきた中古品の真贋判定を、当のメーカーが担ってくれるのですから…それだけでも価値のある事業だと思います(*´∀`)

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ご意見・ご感想

コメント一覧 (2件)

  • 砂布巾さん
    こんばんわ、黒海月です。
    ROLEXの認定中古品制度は楽しみですね。
    すでに販売中止になったあるいはデザインが変わってしまったROLEXウォッチを本物である安心感をもって、また、キチンと整備された状態で手に入れられるチャンスですね。
    少なくとも、寿命が長い腕時計を後世に受け継いでいくためにも良い仕組みに思えます。
    もっとも、お値段的に難しいものがありそうですね。
    転売ヤー対策にはなりにくいとも思えますが、是非日本でも展開してほしいものです。

  • 黒海月さま。
    そうなんですよね~。後世に腕時計を残すことを考えたら、認定中古の取り組みはとても意義のあることだと思います。
    ただ、それならば「永久修理」もセットにすべきではないかと考えています。
    パテック並に…は無理でも、そういった配慮込みのお値段であるならば、納得して購入する人は後をたたないだろうなぁ~なんて(*´∀`)

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