最近はそうでもなくなりましたが、以前は街を歩いていて外国人に声をかけられることが多くありました。ある特定の国の方に限った話ではなく、様々な国・地域の旅行者の方々からです。スタンダードな「道を教えて」から「うまいラーメン屋はどこ?」さらには「一晩泊めて」「金貸して」など、突拍子もないものもありましたっけ(;´Д`)
そんなことが、多い時には1日に5件ほどもあって辟易としたこともあります。もちろん皆さん、通りすがりの赤の他人です。はい…
そんな話を友人にしてたら「そりゃお前さんが解りやすいお人好しに見えたんやろ?」と言われました。人間性を褒められてるのかと思いきや「万国共通の騙しやすい顔」と言われて凹んだ記憶があります。お人好しの人って何かと貧乏くじを引くイメージがありますからね(汗)
それにしてもアジア諸国に加え、アメリカやスペイン、ロシアの人にまで通じる「お人好しの人相」って何なんでしょう?
チューダーはロレックスの代替品なのか??
先日、某メディアで欧州の方が書いた「ロレックスとチューダー(チュードル)」に関する記事を読みました。ちょっと意外な内容と言いますか…「欧州人でもそこはそんな風に思うんだ!」という感想を持ちました。何気に印象に残ったので、私なりにまとめてみたいと思います。
その記事をザクッと概要だけ捉えると「もっとチューダーに注目せよ!」ってな感じの内容でした。チューダーの各モデルを機能的にロレックスのモデルと比較して、いかにチューダーがお得か!といった感じのことをツラツラ書いたレポートでした。一応、両方のユーザーとしては「そうかもね」と概ね納得できる内容でしたが、ぶっちゃけそれは「ロレックスより安いからチューダーの勝ち!」といった結論になってしまうところが気になりました。いやはや、そう言われちゃうとロレックスの立つ瀬も身も蓋もないワケで。
ご存知の通りチューダーはロレックスのディフュージョンブランドとしてスタートし、今日に至っています。実際2、30年遡れば、一部にロレックスのパーツを流用したチューダーは山ほどあります。リューズや裏蓋にロレックスの残り香を讃えたそれは、流用パーツがあるが故にどことなく二番煎じな雰囲気が漂います。私の持っているサブマリーナ(チューダー)もまさにそれです。
そう言えば、買った直後は「ロレックスっぽいのが安く買えた!」ってな感じで浮かれていたのが、しばらくすると何となく恥ずかしい気持ちに変わったのを覚えています。それは「ロレックスに手の届かんヤツらが買うのがチューダー」だという一般的な評価に抗うすべもなく流された結果でした。
特に私のチューダー「サブマリーナ」は、その見た目からどうしても解りやすい比較になってしまいます。当時物の2つを比較すれば大方のイメージ通り、チューダーはやはり価格なりに作りが安っぽいのです。
ぶっちゃけこの時代のチューダーは所詮は廉価版。そんな立場に甘んじているちょっとヘタレなブランドだったと思います。それでもこうして時間が経てば、古のチューダーにも「歴史」という付加価値が加味されるワケです。
そして最近は、本家ロレックスにも負けないくらいの高値が付きつつあります。元値を知っている身としては、申し訳なく思っちゃうくらいですし、実際、チューサブがこんなに高くなるなんて思いもしませんでした。今となってはロレックスにはないこの絶妙なハズシ感が愛らしいと思えますが、その魅力に気づいた方々がじわじわ増えてきたっていうことでしょうか?
ロレックスなら作らない「ノースフラッグ」の意味
話を元に戻すようで恐縮ですが、そもそも「ロレックスにも負けてない」という論点で語られるうちは、チューダーの存在が独立したものになったとは言えません。チューダーがその身を晒して対抗すべきはミドルクラスの高級腕時計ブランドであって、出自であるロレックスを超えたかどうかなんて、本来なら考えるべきではないはずなのです。
数年前にチューダーの「ノースフラッグ」を見た時、私はこう思いました。「チューダーはロレックスの軛から逃れた!」と。それくらいオリジナリティーが高く、そして今後もロレックスが作らないであろう時計に見えたのです。
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どことなくドイツ時計のように割り切ったアウトラインはロレックスのどれとも似ていません。華美な部分が一切なく、それでいて上質さだけは高く香ります。この現物を初めてみた時に感じた「チューダーというブランドの可能性」は無限に思えました。
ところが、最近のチューダーの腕時計からはあまりそういうものを感じなくなってしまいました。ブラックベイの展開を見ていると、流用パーツすらないものの、路線としてはロレックスとの二人三脚って感じすらします。言葉は悪いですが、隙間を埋める存在…とでも言えるような現状です。勿体ないんですよね。モノはすご~く良いものなので。
傲慢に見えるロレックス
ロレックスは良くも悪くも目立つ存在です。腕時計に縁のない人でも必ず知っているブランドバリューの確かさ…でもそれって、過剰に周囲の人を巻き込んで意識させてしまう危険性もあるのです。身に着ける場所によっては、その傲慢なイメージから「何だコイツ!?」と思われることもあるでしょう。これは雲上ブランドですらありえない、ロレックスの性みたいなものです。
そしてこれは日本人だけが感じるものではないらしい…先の欧州の方が書いた記事によると、アチラでも同じように「ロレックスは傲慢に見える」らしいのです。その辺のメンタリティーは似たりよったりなんですね(;´∀`)
チューダーなら使えるシーンがある
チューダーならその点問題はありません。純粋に高品質な腕時計をコッソリ楽しむことができます。例え「チューダーやないか!」と気付かれたところで「廉価版」の悲哀も相まって、マニアックなチョイスだと思ってもらえるかも知れません。
チューダーというブランドはそのすぐ隣に強烈な光を放つロレックスが存在する分、頭を抑えられている印象はあります。意図的にリーダーにはなれないポジションに据えられているといっても良いでしょう。
その印象はどことなく「人の良い正直者」。立ち回りもあまり上手とは言えない、寡黙な存在…といった感じです。しかし、例えばロレックスに比肩する高品質な腕時計を、誰憚ることなく身に付けたい人にとっては、地味で人当たりのよいチューダーの存在は福音とも言えます。そして実際「ロレックスは諸般の事情で避けたいけれど、拭い去れない憧れはある」という理由でチューダーをチョイスする人は多いのです。
ロレックス以上に愛されるために
しかし、それではいつまで経っても「ロレックスとは違う価値」で売ることはできません。ベネフィットで言えば、ロレックス以上のものをユーザーに与えてくれる可能性がチューダーにはあります。このまま永久にお人好しのセカンドラインで留めておくには、惜しすぎるブランドがチューダーなのですから。
今後のチューダーの展開が「ロレックスとの比較で語られること」から逃れられた時、ロレックス以上に万人に愛される一般市民のための高級時計ブランドが誕生するのではないかと思います。とりあえず、ノースフラッグやブラックベイP01、ヘリテージクロノのような、チューダー独自の「味のある路線」を大切にして欲しいものです。
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