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天の邪鬼はこう考えた


デパートに顔を出しますと…まぁどこでも大体そんな感じなのですが、ROLEX売り場だけは特別良い場所に位置していたりします。時計として同じようなクラスにある他のブランドと比較して、必ず特別な場所にあるのです。初めて行った場所ですらそのように感じることがあるくらいですから、デパート側の戦略的な配置としてそのように決まっているのでしょう。

 

ROLEXを欲しいか欲しくないかで言えば、そりゃあ欲しいです。価格と価値のバランスには納得できないところはありますが、優れた時計であることは間違いありません。

 

実際、私はこの1年の間で何度かROLEXの正規販売店に顔を出して、まさに「寸前」までいっています。その時はお目当てのモデルがことごとく品切れという状況でしたので、「折れて払える金額じゃない」と冷静になれたのですが、本物を見ると確実に欲しくなる魅力が、ROLEXには間違いなくあります。しかし、どこかで私は結局のところ…「アンチ・ROLEX」なのです。

 

馬鹿みたいに高騰する価格に対しては当然いいイメージを持てませんし、それを半ば認めてしまっている業界にも不信感はあります。誰かにROLEXの魅力はどこ?って聞かれたら、オイスターケースやムーブメントの素晴らしさを語る前に「高く売れる」と答えるでしょう。それくらい腕時計の本質から離れた投機的な対象物になってしまっていると思うのです。

 

「何を今更」と言われるかも知れません。高いもの買うんだから、価値が落ちないにこしたことないじゃないか、と言われるかも知れません。だけど、そんなところに価値の重点を置いて買うのではROLEXが可愛そうです。

 

こんなことを考えるのは少数派でしょう。確かに若い人に一本だけ高級時計を持ちたいと相談されたら、「ROLEXをローンで買え」とアドバイスするでしょう。ROLEXが腕時計として優れている最大のポイントは、「高級時計でありながら、実用度が極めて高い」ところです。数年のローンを組んでROLEXを買って、完済した頃に売る。この繰り返しだと極めて効率的に最小限の出費で、最新の腕時計の素晴らしさを味わい続けることが可能です。私は二十歳代のときにすでにそんな風に思っていましたが、最近の高騰具合で益々そう感じています。

 

でも、それじゃあ悲しい。それは腕時計の買い方ではなく、自動車の買い方です。腕時計には「枯れてからが旬」という楽しみもあるからです。

 

ROLEXを買うなとは言いませんし、私も結局は買ってるかもしれません。しかし少なくとも今は、ROLEXへの「負のイメージ」が邪魔をしているのは確かです。近頃は本来、ROLEXのディフュージョンブランドであるはずのTUDORでさえ、兄貴分の煽りを食う形でモノによっては高騰も見受けられます。特にアンティークのTUDORは数年前よりかなり高値で取引されています。ROLEXと比べたら微々たるものとはいえ、最後の聖域を侵されたようでいい気分はしません。

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私はTUDORの時計では「Prince Oyster Submariner」と「Heritage Black Bay 41」を所持しています。ROLEXのSubmarinerには存在しない「36ミリ幅のサブ」とこれまたROLEXには(恐らく)ないポリッシュベゼルのダイバーズ。弟だからお兄ちゃんの真似っこは仕方ないけど、自分らしさも出していきたい…それが古今東西の「やんちゃなブラザー」てものでしょう。

 

正道は無視できないけど、時には逆らってみたい…「天の邪鬼」のためのありがたい存在が、TUDORというブランドなのかも知れません。

 

 

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