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『世界観』を持った販売員さんから買いたい

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#あの店員さんがすごい

 「そのお弁当ちょっと待って下さい!!」

時刻は夜10時前。その日の「晩ご飯」にすべく手に取った「とんかつ弁当」を抱えたまま、突然の声掛けにフリーズした私。「あれ?? 何かやらかしちゃった??」と困惑する私に、某スーパーマーケットの女性店員さんは言いました。

「すみません!! このシール貼らせて下さい!!」

黄色地に赤で「半額」とプリントされたそれは、貼られた瞬間、本来私が支払うべき出費が「半分」になったことを示すものでした。

確かに閉店時間も間近で、お弁当の選択肢は限られていました。しかし私はこの日、何としても「とんかつ」を食べたかったのです。なので「半額」はまさに「天恵」。浮いたお金でノンアルコールビールまで買ってしまいました (;´∀`)

帰宅後、部屋着に着替えてとんかつ弁当を食べつつ、頭に浮かぶのは「半額シールのお姉さん」のこと。見ず知らずのオッサン客である私に声を掛けるには、それなりの勇気が必要だったかもしれません。しかしその勇気のお陰で、私の夕飯は豊か(ノンアル追加)になったわけでして…

弁当を買って、食事の際にお店の人の顔が浮かんできたことなんて、これまで一度も無かったと思います。レジでの精算時に、まじまじと店員さんの顔を見ることなんてありませんから、スーパーでの購買行動は「機械的」と言っても良いくらい味気ないものです。ですがその日だけは違いました。感謝しながら食べたその日の「とんかつ弁当」は、いつもより少しだけ美味しく感じられたのですから (*´ω`*)

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変化する買い手と売り手の関係

「お客さまは神さま」… そんな時代は昭和で終わりました。体調が急変したときに駆け込むドラッグストアの有り難さは涙が出るくらいですし、残業で帰りが遅くなったときでも開いているコンビニは、私の「命綱」と言っても過言ではありません。こちらが感謝しなかったらバチがあたりますよ (;´Д`)

また、ずっと欲しくて探していたアイテムをどこぞのお店で発見した際などは「にわか運命論者」になりそうな勢いで「奇跡の出会い」に感謝することもあります。「仕事で頑張ったからや」とか「〇〇さんに優しくしたからや」みたいに考えちゃうアレです。考えてみればそれだって、お店側が消費者の購買行動をつぶさに分析して揃えてくれたものですし、その努力に対して「商売なんだから当然」と返すことなど、私にはできません。

例えば、ある程度「高価なもの」の購入は大きな喜びをもたらす反面、大金を使うことによる「ストレス」を伴うものです。故にできれば「気持ちの良い買い物」がしたいですし、買い物の行為自体を「美しい思い出にしたい」と考える人もおられるでしょう。そのためには「お客が神」のような「時代錯誤にも等しい横柄な考え」は捨て去らなければなりません。

大きな買い物で頼りになる販売員

私にとって「大きな買い物」と言えば「腕時計」のことです。他のことに興味がないわけではありませんが、強情な「シブチン(関西ではケチくさい人をこう呼びます)マインド」に支配されて生きてきた私ですので、基本的に大金を使うことには大きな抵抗があるわけです。そんな私の「シブチンマインド」のリミッターを解除できる、恐らくは唯一のキーワードが「腕時計」 (;´∀`)

嗜好品であり実用品でもある腕時計には、実に多くの価値観が内包されています。買い求める消費者の多くは、自ら固有のフックを見付けて「欲しい時計を見定める」わけですが、そこには少なからず躊躇もあるのです。何せお高い買い物ですからね。自信が揺らぐことだってあります。何だったらお店に向かう途上で「いや… アレじゃないかも!!」なんて翻意する場合もあるでしょう。いや、ありました(汗)

そんなときに心強いのは、的確に共感を示すことの出来る「優秀な販売員」の存在でしょう。俗に「背中を押す」なんて言いますが、ハズレの販売員さんを引いてしまったときの「カオス」は、購入対象品が高価であればあるほど、その罪深さを増していきます。お目当ての高級時計購入で天にも昇る心地にしてもらうはずが、間違った背中の押され方で、とんでもない目に合うことも珍しくありません。

私自身の腕時計趣味はその規模も内容も大した物ではありませんが、原資に著しく制限が掛かっているからこそ「絶対に外してはならない」という重圧に抗いながら形作られてきた「試行錯誤の集大成」という側面があるのです。そして、その途上で自らに課した最大の掟が「信頼できない販売員からは買わない」こと。これだけはこの先も守らなくてはいけない「絶対のルール」です。

いい加減な知識で、テキトーなお薦めに終始する販売員さんや、根拠なくマウントしてくる横柄な販売員さん。無闇やたらに高いものを買わせようとする販売員さんなどは論外で、こういう人がいる限り、私の足がそのお店に向かうことはありません。

「この人から時計を買いたい」と思わせてくれる販売員

どんなに一流の時計を扱っているお店でも、人材に無頓着なお店での購入には不安がつきまといます。最前線の職務である「販売員」に最適な人材を配置できない時点で、腕時計という商材の本質を理解していないお店という認識も成り立ちます。

そもそも、腕時計好きの心の扉をこじ開けるに最も有効な手段は「その日、身に着けている時計を誉める」ことなのです。

客が着けている時計を誉めるところから話が繋がり、持って行きよう次第でお財布の紐が緩む訳ですから、販売員さんにとって「購入マインドを刺激する」そのようなやり取りは、その職責において最も「腕が鳴る」瞬間のはずです。その「想い」は必ずやお客さんに伝わりますしね (*´∀`*)

結局のところ、ケチケチの私が腕時計のような「高級品を購入」する決断に必要なものは、伝わってきた想いに共鳴して「この人から買いたい」と思えるかどうかだけ… かもしれないですね (;´∀`)

「世界観」ごと売ってくれる腕時計のお店

ところで、昨年末からこれまでに「5本」の腕時計を買った(買わされた??)お店があります。シブチン関西人の私としては、ぶっちゃけ相当な無茶をしたわけですが、そこには微塵の後悔もありません。

そこは「マイクロブランド(少量生産の新興メーカー)」中心のお店ですから、数万円台からせいぜい30万円辺りに過ぎない買い物です。それでも庶民の立場で言えば「5本」の合算は結構な額になりました。ぶっちゃけ大台超えましたし…(まもなく6本目も)

腕時計のお買い物は「現物を見る」「腕に載せる」が絶対条件です。ですが、その対象がマイクロブランドとなると、その機会は著しく限定されます。そして、私が「出会ってしまった」「欲しくなってしまった」マイクロブランドの取り扱いは、国内唯一の代理店である「そのお店」しかなかったのです。

「だから致し方なくこのお店で買った」… そんなわけはありません。先にも述べた通り、私の「腕時計お買い物」にとって大切なのは「この人から買いたい」と思えるか否かに尽きるのです。そしてそのお店は「ここで買うこと自体に意義がある」と思わせてくれる「世界観」を与えてくれる場所でした (*´∀`*)

お客さんの何かを正しく誉める大切さ

例えば私がオメガの「スピードマスター プロフェッショナル」を身に着けて、どこぞのお店に行ったとしましょう。

「ムーンウォッチお好きなんですね!!」… そう、「オメガ」ではなく「スピマス」でもなく、愛称の「ムーンウォッチ」と呼称することで、昨今の「ムーンスウォッチ ブーム」の話へ移行することも可能なわけです。これだけで「腕時計トーク」の扉が半開きくらいにはなります。

ただ、こういった展開には「最低限必要な知識」というものがあります。腕時計の個体情報とブランドの歴史的背景、昨今の周辺ビジネスなどの情報は必須でしょう。そこに販売員さんが独自に有する知見やセンスを加味することで初めて、目の前のお客さんと「より深い繋がり」を持つことが可能になるのです。

そして最も大切なことがあります。それは「共感以上の世界観を提供すること」。普通に生活できる「コミュ力」を持っている方ならば、表面的な事象での「共感」なんて造作も無いでしょう。単純に「相手の何かを誉めれば良い」わけですから。

実際、身近な人間関係を円滑にする意味でも「誉める」は日常的に用いられるルーティンだと思います。さりげなく誉めることで、周囲の誰かが丸1日機嫌良くいてくれるなら、ナンボでも誉めるネタ捻り出しますよ… (*´ω`*)

ですがこれだと、単なる「承認」を超えられないのです。私が出会った優秀な販売員さんの多くは「共感と拒絶」を繋ぐ言葉に細心の注意を払い、お客さんの購入マインドに点在する要素同士を線で繋ぐ努力を怠らないのです。例えるならそれは、お客さんの揺れ動く気持ちに強固な「骨格を与える」ようなものかもしれませんね。

「注釈上手」な販売員が「正しい客」を育てる

私がマイクロブランド時計の多くを購入した「件のお店」で店長を務める某氏。彼はとにかく「腕時計の世界観を伝える」のが巧みです。マイクロブランドという評価未確定の時計を「納得して」お客さんに買ってもらうためには、新興ブランドだからこその「無限の未来像」と同時に「定まっていないブランド力」についてもきちんと説明する必要があります。「ロレックス」「オメガ」に今更説明は要らないと思いますが、マイクロブランドの多くには適切な「注釈」が必要なのです。

私が「件のお店」から聞かされた注釈は、どれも一片の誤魔化しもない納得できるものでした。「危うさと無限の未来」… 相反する2つを併せ持つマイクロブランドの世界観に身を委ねることになったのも、全てはこのお店の存在があればこそ。腕時計趣味においてはエントリーモデル中心の収集で「超保守派」であった私を冒険の大海へと誘い、閉じかけた眼を開けてくれた「件のお店」には感謝の気持ちしかありません。

「お店」と言っても、結局のところお客さんが対面するのは「ひと」です。腕時計が好きで、扱う商品に誇りと敬意をもっている販売員さんの手から買う腕時計には、必ず何かしら「売り手の想い」がオプションで付いてきます。私の手元にも、購入した際に取り次いでくれた販売員さんの顔が浮かぶ腕時計が何本もありますし、それらはやはり特別な存在で、後々まで「これだけは手放せないよなぁ~」と思わせる何かがあるのです (*´∀`*)

例えばこちらのニバダ グレンヒェン「クロノマスター」(右)。目当ても無いまま暇つぶしに「件のお店」に顔を出したある日、店長が私に言ったわけですよ。

「お好きだと思って… 」

「トロピカル」と呼ばれる経年変化を模したダイヤルが特徴のバイコンパックス クロノグラフを見せられた私が「購入」を決断するに要した時間は3分もなかったと思います。「お好きだと思って」に込められた意味合いを考えればそれもそのはず。彼にしてみれば、私というちょっと面倒くさい客に対する「最適解」を提案したわけで、それは私という時計好きの趣味傾向を理解した上で、慎重に選び出した答えでした。

私はそれが、ただただ素直に嬉しかったのです。僅かな変態的拘りを捨てられない私の「フェチな部分」を満足させるに足るギミックとして「トロピカル ダイヤル」そして「カラー ベゼル」を提案してくれた店長。共感を超えた先の「発展的な提案」が私にもたらした刺激は、決して小さなものではありませんでした。

要するに「デキる販売員」とは、お客さんと発展的な関係を築くための「知力戦」に長けた人物のことであり、お客が求めるものの数歩先まで見通すビジョンを持った人のことを指すのです。

店長から放たれた「面白い提案」は、その頃停滞気味だった私の腕時計趣味を少なからず活性化してくれました。と同時に、私より遙かに年下の店長が、私という未熟な客を育ててくれているのだ… そんな風にも思えたのです (*´ω`*)

最後に… 連綿と続く「お店と私のストーリー」

今回はビックカメラさんとはてなブログさんコラボ「特別お題」に乗っかってみました。確かに、良いお店、良い店員さんと出会い、その場所が自分にとってのフェイバリットになると、俄然お買い物が楽しくなりますよねぇ (*´∀`*)

素晴らしい販売員さんから買い、その時計を大切に使い続ける限り、連綿と続くストーリーがある… 腕時計に付きものの「オーバーホール」「メンテナンス」の煩わしさすらも「美しい思い出」にできるか否かは、セッションの入り口でお客さんを誘う「販売員さんの手腕一つ」に掛かっていると思います。

決して安くない腕時計ですからね。購入後、数十年にわたり不安無く楽しむためにも、心酔できる「世界観」を持った販売員さんが働くお店に限って、贔屓にしたいと思う今日この頃です。

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