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「時計を買う」と「時計を売る」の現在地

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 「買う前に売ること考えるバカいるかよ!!」… と「燃える闘魂」的な思考でここまで来ちゃったのが私というコレクターなわけですが、実際には多くの方が「どのくらい高く売れるか」を念頭に腕時計を選んでいると思います。慎重で頭の良い方ほどそうかもしれません。

 ロレックスの大半のモデル、雲上のラグジュアリースポーツ、一部生産数が僅少なモデルやレアピースなどを集中的に狙えば「将来的な価値の下落」で損をすることもないでしょう。むしろ逆に儲けが出る場合もあります(そういうお話、よく聞くんですよねぇ)

 ただ… 世の中の大半の高級腕時計は、購入した瞬間が一番の高値なのです。買って2秒で売り払っても新品時の価格からは下回るわけで、腕時計で「一銭も損をしたくない」方にとってそれらは「何の魅力も感じない時計」と言うことになるのでしょう。

 そう言う方々に対して「ロレックスでも買っておけば!!」と言い放つのは簡単です。ですがそれは余りにも乱暴と言うもの。今回はその辺りをもう少し建設的に考えてみたいと思います (*´∀`*)

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体験の価値を「金銭に置き換える」考え方

 ところで、ウチの亡き親父どのは「パチンコ」が大好きでした。実際、若い頃は雀の涙のようなお給料をパチンコに注ぎ込んでそこそこ勝っていたそうです。結婚して子供(私)ができてしばらくは、それで「ミルク代を稼いでいた」とか (;´∀`)

 偉くなってからも時間があるとパチンコに出かけて、閉店まで粘っていましたっけ。携帯電話の無かった時代は会社から電話がかかってくると、家族の誰かが近所のパチンコ屋さんまで親父を呼びに行くはめに。それでも誰一人文句を言わなかったのは、人一倍、親父が仕事で頑張ってくれていたからです。「しゃーないなぁ~ オレ行ってくるわ」なんて文句を垂れつつ、数軒あるパチンコ屋を当て所なく探しましたっけ… (呼びに行くと景品カウンターで好きなお菓子を交換してくれましたしね!!)

 「そんなにパチンコって楽しいん??」と親父に聞いたことがあります。すると「考えがまとまるんや」と答えてくれました。大音量のBGMとチンジャラジャラの中で思索に耽るとは…

 休みなのに朝からいないと思ったら大抵は「パチンコ」だった親父どのですが… 才能はあったんでしょうね。余り負けたところを見たことがないのです。それでも極稀にため息をついて薄くなった財布を悲しげに見つめていることも。そう言うときは後でこっそりとお袋が現金を補充していました。お袋優しい~(笑)

 ギャンブルに全く興味のない私なんかは「負けて落ち込むくらいなら止めたらええやん??」と思います。それに対して親父は「何時間も遊ばせてもらって、たまに負けることがあったってええやないか。気持ちで言うたらトントンや」だそうです。

 パチンコのことは恐らく一生理解できそうもありません。ただ、親父の言っていた「トントン」に関しては何となく「その通りやなぁ」と思います。そう思うことで、必要以上のダメージを心に負わなくて済むわけですからね。平和にパチンコを楽しむ極意…「トントン論法」恐るべしです。

 長年「腕時計」を趣味にしていると、この「トントン論法」が活躍する瞬間は少なくありません。先述した「高く売れない時計」の中にも、欲しくなる時計はゴマンとありますよね?? そう言う時計を勇気を持ってお迎えする際に心の中で静かに唱えるのです。「これから何年も楽しませてもらうんやから、高く売れんでもええやないか。トントンや」と (*´∀`*)

楽しんだ時間に対価を支払う

 テーマパークで丸一日遊び倒した人がいるとして、十分満足したにも関わらず「お金がもったいなかった」「時間がもったいなかった」とボヤく人は余りいません。これは「楽しい時間」「楽しい体験」に対価を支払ったという自覚がキチンとあるからです。この人たちが特別心が広いわけではないでしょう。これが現代社会におけるフツーの考え方です。

 ところが「腕時計」に関してはどうにもおかしいことになっていませんか?? 使い倒した後で高く売れないことに不平を鳴らす人が少なくないのです。売ることで次の時計の資金にしたい気持ちは解りますが、それって虫の良すぎる話ですよね?? (;´Д`)

 そういう人は将来的に価値の落ちない、或いは上がる可能性の高い時計にばかり目が向く傾向があります。お金にゆとりのある人なら未確定の将来相場なんて無視すれば良い気もしますが、徹底的に価値の目減りを気にする方はいらっしゃいます。

 う~ん… 腕時計趣味なんてものは本来「金銭と心」2つの余裕に加えて、勉強したり愛でたりする「時間にも余裕のある方」の趣味のはずです。稀に私のような「例外」もあるでしょうが、何にせよ「みみっちい」思考とは無縁であるべき趣味です。

 腕時計を大切に扱い、歩んだ年月の価値を思えば、10年後の価格が購入価格の3分の1だったとしても「それがどうした!!」ですよ。

 「支払ったお金の分、しっかり楽しませてもらうぜ!!」と前のめりになって使い倒し、購入価格の何倍も大きな満足を得たと思えたなら、存分に楽しませてもらったわけですから、腕時計なんてそれで「トントン」なのです (*´ω`*)

腕時計にまつわる「SNSの功罪」

 コレクションの結果として、たまたま価値が跳ね上がった時計をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。しかし、得てしてそう言う方は売ったりしないものです。価値の上昇自体は喜んでいるはずですが、そんな時計を持っている事実の方が「コレクターとして圧倒的に意味がある」と知っているからです。

 以前ならこう言う「奇特な方」の存在が表に出てくる機会はほとんどありませんでした。「タモリ倶楽部」みたいな企画に拾われてようやく日の目を見るかな~ってくらい。

 そのミステリアスな存在に確固たる輪郭を与えたのが「SNS」です。日々流れてくる投稿を見れば、誰でもスゴいコレクターさんの現在に触れることができちゃうのですから…

 そうなると、腕時計に興味のある方なら思うはずです。自分と比べて「何だかものスゴい人がいる」と。本来、自分のペースで歩むことが趣味の醍醐味であるにも関わらず、SNSを介して「上を知る」ことで、妙な焦りを感じるようになってしまうのです。この感覚は私の中にも少しはあります。この辺はSNSの「罪」の部分ですね。

 比較することでコレクターとしての「己を知る」ことができるようになったことは、SNSの「功」の部分でしょう。私個人の話をすれば、他人さまのコレクションを拝見することで、自分が如何に無軌道な収集を続けてきたかが解りました。また、意外な部分で他のコレクターさんから評価されたり、SNS以外の部分でも繋がりが生まれたりもありました。いずれも、以前のクローズドな環境ではあり得なかったと思います。

 ただ、腕時計趣味全体に与える影響で言えば、SNSの「罪」が目立ちます。要するにロレックスなど鉄板ブランド以外の評価、それも「売却時の価格」に関する印象はその多くがSNS発で広まったものです。実地に拾ってきた情報もあれば、ただの印象操作の場合もあるでしょう。

 どちらにせよ、一端のコレクターさんの発信は広まりやすく、すでに多くの影響を与えているはずです。それ自体は悪いことではないと思います。問題は発信を受け取る側の「短慮」にあります (;´Д`)

進んで「エコーチェンバー」に入ることはない

 影響力のある方の発言には、一般人とは比較にならない責任が生じます。その前提ゆえかもしれませんが、妄信的に影響力のある方の発言を支持する方も散見されます。

 発信力の強さと情報の確度の間にはさしたる関連性もありません。発信の中身を自分で吟味することで取捨選択を行い、有用な意見だけを取り入れるようにすれば、SNSの危険度は大きく下がります。

 例えば、売却時の「利益の低さ」を取り上げて特定の時計を非難する誰かさんがいるとします。その意見の確かさ云々よりも、所謂、影響力…「声の大きさ」が多方面に強い影響を及ぼすでしょう。少なくとも当該の時計を使っている人が見たら傷付くはずです ( ;∀;)

 何もしなくても勝手に流れてくる投稿ですから、見ないようにするのも難しいでしょう。書かれていた内容を夜な夜な反芻して「この時計って無価値なんだ…」と枕を濡らすかもしれません。

 本来、SNSで書かれた意見は、例え声がデカかろうと「たった一人の意見」に過ぎないはずです。何を言われたって「知らんがな」で良いはずなのです。ところが影響力のある方の意見は周りの取り巻きたちに補完されて、ジワジワと影響半径を広げていくものです。こうなると中々無視はできません。

 この補完された意見というヤツがくせ者です。所謂「エコーチェンバー」で増幅された意見の強さたるや相当なものですから、私にしても「知りたくもなかった」情報を目の当たりにして何度も落ち込んだことがあります。

 ただ、わざわざ居心地の悪いエコーチェンバーに近付いて、あまつさえ中に入ることはないのです。その中でまともな反論ができたとしても、反響する多くの声にかき消されるのが関の山…

 特定のブランドやモデルに対して、売却価格の低さから「終わった」と断じる意見はそれとして、そんなことで「気になっていた腕時計を避ける」のでは悲し過ぎませんか?? そもそも好きなブランド、好きな時計は人それぞれ。欲しいもの、買いたいものがあれば、自分を納得させる意見だけを取り込んで「自分有利」な心理状態に持って行くべきです。

 実際、自分に「確証バイアス」をかけるくらいで良いんですよ。誰にとっても安くない出費を伴うんですから。「納得100%」で買わなくちゃ!! (*´∀`*)

作られた「現象」

 売ったときの価格が低いから買わない。影響力のあるインフルエンサーが言ってるから買わない。これらが如何に下らないかについて書かせていただきました。想像してみて下さい。括りのないオフ会に参加したら全員が「ロレックスの売れ筋モデル」だったなんて… しょんぼりしかありません (´・ω・`)

 ロレックスが悪いわけではありません。取り巻くアレやコレやの印象が悪すぎて、それがロレックスの周囲を黒い霧のように覆っているのが問題なのです。

 ここ数年の中古市場でのロレックスの高騰は、ロレックスを投資対象と見なした関係者によって「作られた現象」と言っても差し支えないでしょう。そういう意味でロレックスの素晴らしい時計たちは、むしろ被害者と言えるかもしれませんね。

腕時計を「総数」で数え始めたら『持ち過ぎ』

 さて、ここからは腕時計の「売り方」を考えたいと思います。腕時計を「買う経験」はそれなりにありますし、それなりに自分の意見を持っている私ですが「売る経験」に関しては、経験豊富というわけではありません。

 近年だと「G-SHOCK関係のまとめ売り」がありましたが、全てが売れるまでに時間がかかったこともあり、正直「面倒臭かった」印象しか残っていません。準備も大変でしたし、何度も心が折れかけました。超絶ズボラな性格ゆえにオークションやフリマは基本苦手な私。やだなぁ… またあれをやるのは…

 そうなんです。時計を手放す予定なのですよ。少なくとも「30本」は (;´∀`)

 少し前のこと… 「何が何でも明日着けたい時計」のインスピレーションが浮かんだ私は、いつものようにコレクションケースの蓋をバッタンバッタン明け放ちました。それは何故か?? どのケースに何が入っているか、ほとんど覚えていないからです。取り敢えず全部開けてみないとお目当てに行き着けないのは、私の管理不行き届きもいいところなのですが、頻繁に収納位置を変えたくなる「飽き性」も手伝って、これはこれで仕方ないかなぁ~と諦めています。

 それでも、いつもはこれで見付かるんです。ところがこの日は違いました。無いぞ… 無いわけないじゃないか。ちょっとまて!? そう言えばアレもアレも見当たらないぞ??

 その瞬間、冷たい汗が流れました。歳のせいか記憶力に自信が無くなってきていますから、気付かないうちに売った可能性や、さらには「そもそも持っていたっけ??」みたいなヤバい発想まで首をもたげる始末。実際、思い出したくもない話ですが、スピマスを間違って「ゴミの日」に出しちゃったことがありますからね。どんな最悪の可能性も「自分ならやりかねん」と考えちゃうわけです。

 結局「あぁ、なるほど!!」みたいな場所から発見された時計たち。要するに日常的に思い返すこともなく、印象が限りなく希薄になってしまった時計たちは「持っていてもいなくても同じ」なのです。自分のコレクションを総数でしか暗唱できなくなった時点で反省すべきでした。どう考えても持ち過ぎなのですから (;´Д`)

幸せな「腕時計の売り方」を探して

 自分の管理能力を超えた本数の時計を持っているからこそ、そういう情けないことが起きちゃうわけです。であれば「売ったらええやん!!」… かと言えば、そこにも色々と難儀な問題があります。前述しましたが、私という人間はとにかく「面倒臭いのがイヤ」なのです。いやもう、病的に面倒臭いことを避けます。チマチマ一本ずつ買い取ってもらうなんて… そんなマメなこと絶対に不可能 (;´Д`)

 ですので、まずは一度に「30本以上をサクッと買い取ってくれる業者さん」を探すことにしました。扱うブランドに該当していれば基本的には何本でも買いまっせ!! みたいなところが大半です。すでにそういった業者さんを何軒かLINEに登録して、少しずつですが査定用の写真を送っています。物によっては10分くらいで返信がありますね。

 次の条件は「訪問買い取り」が可能かどうか。キャリーバッグに詰め込めるだけ詰め込んで持ち込もうかとも考えましたが、何回往復したらええねん?? みたいな感じなので諦めました。「宅配キット」とやらを利用して送りつける手段もありますが、正直「不慮の事故が怖い」((((;゚Д゚))))

 となると「訪問買い取り」しかありません。現在の「大学生のような生活空間」を見られるのは恥ずかしいですが、背に腹は変えられません。と言うわけで「大量の時計を訪問買い取り」してくれる業者さんだけをターゲットにしました。

 実はもう一つ、個人的には買取価格以上に重要な条件があります。言語化が難しいのですが… ちゃんとした腕時計愛好家の手に渡るように「仲介の役割」をしてくれそうな業者さんに買い取ってほしいのです。解ります??

 「客筋の良い業者」と言い換えても良いかもしれません。手放すことになったとは言え、かつて愛した時計たちの行く末は気になるものですし、可能なら「解っている人」に買ってもらいたいと思っています。例えば、実店舗にお邪魔した際に「何だか荒っぽい接客だなぁ」と感じたなら、同様に懇意の客筋も荒っぽかったりするものです。そう言うお店には任せたくないですよね (;´∀`)

 LINEのやり取りを通じて、その辺りの「姿勢」を見抜ければと思います。そして、私にとっても業者さんにとっても、もちろん腕時計にとっても「幸せな取引」ができれば、世話になった「腕時計を売る」という「カルマ」だって、少しは軽くなると思うのです。

「少しでも高く売りたい」は『親心』か?? それともただの『欲深』か??

 格好良いことばかり言ってしまった気もしますが「買取価格がゼロでも良い」… そんなわけはありません。そりゃあ少しでも… 1円でも高い方が嬉しいに決まっていますよ??

 そう言う発想自体に、正直、どことなく後ろめたさを感じることもあります。ただ、愛用してきた時計たちに、可能な限り良い縁談をと願うのは親心と言うものです。また、高く売ることで手放した行為を少しでも正当化できれば「罪悪感から逃れられる」かもしれません。

 私の場合はこれ以上増えても管理できないから、売り払って数を減らしたいわけですが、それでも「他にやりようはないのか??」とグルグル考えてしまう自分がいます (;´Д`)

 高く売れればそれだけで「この売却には意味があった」と考えることができるかもしれませんし、売却益でホクホクしている期間は、罪悪感だって薄らぐでしょう。

 あちこちに穴のあいた財布の持ち主で「守銭奴」でも何でもない私ですから、そもそも高確率で高く売れる時計を狙い撃ちしたことなんてありません。とは言え、売り払った後の虚無感は確実に襲ってくるはずです。後日、コレクションボックスの隙間を見つめて、何も感じないとは思えませんし…

 そんな負の感情を埋めてくれるのは、正直、満足できる「売却益」しかないのです。余りにも安い取引価格しか提示されなかった場合は売るのを諦め、今後の「プレゼント企画」に回すつもりでいますが、運良くそれなりの売却益が生まれれば、その達成感が心の隙間を埋めてくれるはずです。間違っても「金銭欲」が発露ではありません。ホントですよ?? (;´∀`)

「自由な売却」すら管理したいブランドの思惑

 こんなの私だけかもしれませんが、買った時計を売るという行為自体に一抹の「敗北感」を感じるんです。

 考えてもみてください。腕時計購入の瞬間って脳の神経回路が焼き切れるくらい色々考えるじゃないですか?? 金銭的にゆとりのある生活をしているわけではない私ですし、ぶっちゃけ、自らの進退(?)を賭けるくらいの気持ちで決断してきました。高級腕時計と呼ばれるクラスの購入では特にそうです。

 そんな「一世一代の決断」をもって購入した時計を「売る」となれば、理由はどうであれ、それは「自らの浅はかさの結果」です。「売るために購入した時計」でもない限り「使い尽くせなかった」のは自分の見通しの甘さが原因。要するに腕時計好きとして「負けた」気がするのです。

 ただ、今回の私のように物理的な限界と記憶の限界(箱の置き場がない、コレクションボックスも足らない、収納した場所を思い出せない)にぶつかり、否応なしにコレクションのシュリンクを断行する場合もあります。それすら自分の「先見性のなさ」に起因しますが、何らかの事情で「売りたくないのに売らざるを得ない」方もいらっしゃるでしょう。

 ここで問題となるのは、一部の高級ブランドによって行われている「過剰にシビアな顧客管理」です。それ自体はブランド側の転売対策に過ぎませんし、どんどん厳しくやればいいと思いますが、一般コレクターの売却に待ったをかけたり、売却発覚後にペナルティーを食らわせたりするのは、さすがにやり過ぎです。そこまで強引に介入する権利がブランド側にありますか?? (´・ω・`)

 世の中には気になる時計が星の数ほどもありますし、それらを積極的に経験することでしか腕時計コレクターの成長はありません。とは言え、所有できる本数には限界がありますよね??

 ならば、瓶から溢れる水を他に移して、水位を下げる必要があります。そうすることで物心両方にゆとりを作り、次の時計をお迎えする準備をするのです。行き過ぎた顧客管理は囲い込みを企図したものかもしれませんが、それでは腕時計に対する興味自体が尻すぼみに失われるでしょう。

 一部ブランドの「執拗な顧客管理」に関する話を小耳にするたび、それらブランドの歴史と威厳に似つかわしくない浅慮な策に、何とも言えず悲しい気持ちになることがあります。不穏当な発言を許してもらえるなら、一般的に知られるそれらブランドの価値は「高額の売却益を生む」ことに負っている部分も大きいのです。大金を出して購入した顧客の行動を制限し、二次市場への流出を完全にストップできたとして、利益を生む機会を喪失した時計たちが、それまでと同じように売れ続けるでしょうか?? 私にはお花畑な発想としか思えないんですよねぇ (;´∀`)

最後に… 「腕時計売却」自体は悪いことではない

 腕時計を購入した人には、腕時計を売却する自由があります。売却自体は何も悪いことはないのです。転売対策としてブランドが行うべきは「厳格な顧客管理」などではありません。ぶっちゃけ、時代錯誤も甚だしいと思います。

 そこで提案。転売や二次市場への流出を阻止する「一番の良策」があります。購入した人が「絶対に手放したくないと思う時計」をブランドが作れば良いのですよ。手放す人がいなければ二次市場にも出ません。転売屋ではないと特定可能な「真の上客」を管理するのも容易になるでしょう。そうなれば、転売屋が購入できる機会も激減するはずです。

 腕時計を売った方の話を聞くと「新たに欲しい時計が出現したから資金捻出のために」が圧倒的に多いわけです。残念ながら「売る時計」に選ばれた時計たちは、持ち主の中で「プライオリティーの高くない時計」ということになります。やはり何かしら「売られる理由」があるのです (;´Д`)

 そこでの生存競争に勝ち残り、いつまでも手元に残る時計こそが「最も価値のある時計」かもしれません。そうなんです!! 本来ブランドが注力すべきは、顧客へのプレッシャーを高めて二次市場への流出を阻止することなどではなく、結果的に「最後まで勝ち残る時計」を製造販売することなんです。それだけが唯一、顧客を繋ぎ止める手段なのですから。

 ブランドと顧客の強固な信頼関係を第一に考えるならば、全ての顧客を「推定有罪」とみなして監視する今のやり方は「悪手」でしょう。本来自由であるべき「売却」に罪の意識を植え付け、消費者に不要な後ろめたさを感じさせるのですから。ブランドの高圧的な考え方が薄ら透けて見える点でも、賢いやり方だとは思えません。

 そもそも、どんなに高額な腕時計でも飽きるときは飽きます。「価格」イコール「好き」ではないところが腕時計の面白さなのですから、飽きた時計を自由に売れないことは、消費者の「次の一手」を掣肘するものに他なりません。

 「自由に売って自由に買う」… もの悲しさを感じながら、私の「腕時計お別れ会」は続きます。万事、出会いがあれば別れもある。そのことを噛みしめながら「総本数削減のために」「新しい出会いのために」一本一本をピカピカに磨いて送り出したいと思います。

 愛しの腕時計たちよ。最後まで楽しませてくれてありがとう。君たちは本当に「トントンな時計」だったよ 。゚(゚´Д`゚)゚。

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ご意見・ご感想

コメント一覧 (6件)

  • 砂布巾さま

    こんにちは。tet_sasaです。

    トントン論法、よーく分かります。私、趣味でベースを弾くのですが、ほぼほぼオーダーして作ってもらったベースです。これって、ボディ材やネック材・構成を決めてピックアップその他パーツを決めて、と言うところまで全部自分で考えるわけで(勿論店員や職人さんとの相談も入りますが)、その時の自分が欲しい理想のベースを作るわけですよ。このプロセスが楽しい。出来てくるまでに1年くらいはかかるんですが、待つ時間も楽しい。そして出来上がったベースを弾いて理想通りになっているか、ああここを詰めれば良かったか、なんて考える時間が楽しい。

    無論、安くないです。シンプルなプレベを作ってもGSメカニカルの安いヤツくらい、材や構成に凝って作るとスピマスくらいかかります。んで、弾かなくなったり理想と違っていたりして売ったりすると(買取ではなく委託販売ですが)概ね1/4くらいで売ることになります。

    でも惜しいとは思わないんですよ。上述したとおり楽しんだ時間でトントンだと思うから。

    腕時計もまったく同じで、私も何本か(十何本かw)売りましたが、やはり楽しませてもらった時間でトントンだなと思います。お父様、素晴らしいと思います。

    ところで、人の懐を詮索して失礼千万で申し訳ありませんが、砂布巾さまお持ちの腕時計なら、そんなに売ったら相当なマネーになるのでは?一体(AP)何に(AP)お遣いで?(AP)

    >ロレックスが悪いわけではありません。取り巻くアレやコレやの印象が悪すぎて、それがロレックスの周囲を黒い霧のように覆っているのが問題なのです。

    これはまったくもって仰る通りですね。私がロレックス嫌いなのはまさにコレと、あまりにも万能すぎるからです。デイトジャスト1本あればビジネス・プライベート・冠婚葬祭なんでもいけてしまう。それじゃつまらん(へそ曲がり)。

    機械としてはもの凄く尊敬しています。私が狙っている1940年代の手巻きロレックスは、既にオイスターケースでねじ込み竜頭で6姿勢での精度調整がされています。驚愕です。

    • tet_sasaさま。コメントありがとうございます♫

      今は弾いていませんが(弾けなくなってる??)私も軽音でベースでした。
      「お前、地味なツラしてるからベースな!!」みたいな理不尽な理由でしたが… 性格には合ってましたね(笑)
      (ベースを覚えてからギターを覚えた流れです)

      にしてもすごい!! ベースをオーダーで作っちゃうなんて、相当なテクニシャンとお見受けしました!!
      そこまでリキ入れて作った楽器ならその部分で査定アップしてほしいところですが、そうですか…
      買い叩かれちゃうんですねぇ(泣)

      時計の場合は出自の怪しいカスタムが価値を下げる傾向にありますが、それでオーナー本人が楽しんだなら「トントン」で良いと思います。
      思い出やら何やらには値段が付かなかったと思えば「まぁこんなもんかな」と諦めも付くはずです。

      エビデンスが段違いなので何かにつけてロレックスを例にしがちですが、私も時計は最高だと思っています。
      多種多様な時計をお持ちのコレクターの方に聞いたことがありますが、遙かに高額なブランドのモデルと比べても、使い勝手はロレックスが勝るそうです。
      そこまで言い切れるほどのロレックスを持っていない私ですが、だからこそ使いもせずに売りに出す「未使用品」の文化が残念でなりません。

      APですかぁ… もうお金ないんですよ~(汗)
      それこそ売り払って原資ができたら、ゆっくり考えます。
      狙ってませんからね!! 雲上制覇なんて大それたこと(笑)

  • お久しぶりです。
    最近、腕時計ブームが少し冷めて、良い感じで落ち着いています。
    手持ちは5本、古い順に
    ①オシアナス(2015年)
    ②ザシチ紺碧(2022年)
    ③シースター36mm(2022年)
    ④アクアテラ アニュアルカレンダー(2023年)
    ⑤GS 9Fクオーツ(2023年)
    肥満が進行し、4ヶ月前からダイエットを始めました。
    ウオーキング、ジョギングのデータ管理、心拍数が分かるスマートウオッチは必需品となります。
    しばらくは普通の腕時計の出番がなくなりました。
    アクアテラは1月に止まったまま、自慢のカレンダーも当然止まったまま。
    なんか寂しい。
    スマートウオッチは色気も充実感もへったくれも無いんです。
    今では左手首に腕時計、右手首にスマートウオッチの二刀流。
    アホみたいですが、そうしています。
    5本だと全てに出番があるし、管理しやすい、使い分けもできるので私にはちょうど良いです。

    別件ですが、私の愛車は10年前に購入した某外国車。
    高級車ではありませんが、国産車には無い味わいがあり、加速も乗り心地も良く大満足。
    通勤や旅行、買い物用に使い倒し、十分に楽しませてもらいました。
    パーツ交換等にかなり金と手間をかけているのであと5〜10年は乗りたいです。
    でも中古人気はないので売っても二束三文です。
    一方でトヨタのアルファードはこの5年以上はずっと激人気。
    もともと人気がありましたが、数年乗っても高く売れるので人気に拍車がかかってます。今回の時計の記事と重なるところがあります。
    「値落ちしないからアルファード」という人もかなり多いようです。
    私は時計でも車でもそれ以外でも他人様の評価は参考にすることはあっても基本的には無視してます。自分の中にモノサシがないなんてつまらない。

    「アイアンクロー」映画館で観てきました。
    良かったです。

    • ししとーさま。コメントありがとうございます♫
      「値落ちしないからアルファード」… 時計でも何でも、一番苦手な価値観です(笑)

      かつて「白い車」ばかりが売れていたころ、その理由が「中古で売りやすいから」だと聞いて、日本って貧しいんだなぁ~と感じたことがあります。
      一方でカラフルなiMacが売れまくっていましたけどね(汗)
      お仕着せの価値観を強要されるのは、ビジネスシーンくらいにしてほしいものです(汗)

      お手持ちが5本。ナイスバランス&ナイスローテーションです♫
      私にもそんな時代がありましたねぇ…
      今更5本は無理でも、どうにかして「全てのモデル名を暗唱できる」くらいまでは減らしたいです!!
      やるぞー!!

      「アイアンクロー」はまだ観ていませんが、告知ムービーは何度も観ました(笑)
      ネイチがヤバすぎるぅぅぅぅ!!

      話は変わりますがネトフリの「レスラーという生き方」オススメです。
      プロレスのダークさとお気楽さがよく分かるドキュメンタリー。
      ちなみに良い味出してる団体代表の袖口に注目して下さい。
      あの人絶対に「時計バカ」ですから(笑)

  • 砂布巾さん
    こんにちわ、黒海月です。
    捨てる神あれば拾う神ありですかね。今欲しい人に届ける腕時計の循環は、一つの文化かと。
    まだ、自分自身は腕時計を売るに至ってはいませんが、それは10本程度の手の届く数だからこそ。それぞれに役割があり、頻度の差はありますが、一年を通して使う場面があります。今後、増えた時はこの限りではありませんが、その時はその時ですね。
    現時点では、むしろオーバーホール費用にビビって増やすのを躊躇してます。

    Xにて、ノダス✖️レイブンのポストを見かけましたが、あの腕時計はヤバいオーラを持ってますね!しかも、値段も手頃だという危険さ。ぜひぜひ腕時計喫茶で記事になるのをお待ちしてます。
    まだ、売っているのかしら( ̄▽ ̄)

    • 黒海月さま。コメントありがとうございます♬
      腕時計の循環、そうなんですよねぇ~
      機械式の寿命を考えると、次のオーナーさんにまともな形で受け継いでもらうことを考えないといけません。
      最近買った時計たちは、私より長生きするでしょうから(汗)

      オーバーホール代金に関しては年がら年中ビビってます(笑)
      それもあるかもしれません。

      Nodus X Raven 良いでしょ~ (*´∀`*)
      あの価格であの仕事、アメリカ時計産業の未来は明るいですね!!
      近々、記事にしたいと思います。

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