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ルイ・エラールのコラボが面白い

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レギュレーターでお馴染みの「ルイ・エラール」が様々なアプローチでコラボウォッチを生み出してきたのはご存知でしょうか?それがまたかなり面白いことになってたんです。

ちなみにザクッとルイ・エラールについて説明しておきます。このブランドは何ていうか…名前は知ってるけど、どういう出自のブランドかはよく知らん!みたいな代表格だと思うんです。

まず創業者のお名前がその人「ルイ・エラール氏」。1929年にルイ・エラール社を創業。1931年から腕時計の製造を開始し、高級腕時計のテイストを手頃な価格で味わえるラインアップで注目を浴びました。

その後鳴かず飛ばずの苦しい時期を過ごしますが、2003年に某企業によって買収されたことでメーカーとして再出発します。

2011年、「エクセレンス」を発表。特に「LE50232AA01BDC29」はレギュレーターの理想を具現化した一本として、愛好家の間でも高い評価を得ています。確かに美しいっす!

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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html#collection

その後は現在に至るまで、お得意のクラシカルな腕時計作りに磨きをかけ支持を広めてきたルイ・エラールですが、その途上で咲いた「ド派手な徒花」「コラボレーション・モデル」なのです。

そして私が最初に「おおっ!」と目を奪われたのが、独立時計師ヴィアネイ・ハルターさんとコラボしたこの一本でした。

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https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html

ヴィアネイ・ハルターコラボモデル(LE85237AA51BVA35)

 たぁ~!!かっこええ~!!バシバシバシ!!(膝を叩く音)

ルイ・エラールのレギュレーターのイメージと言えば縦目2つのシンプルなデザインが知られていますが、ヴィアネイ・ハルターコラボのこちらはかなり趣が異なります。視覚の迷宮に迷い込んだかのような複雑なアワーマーカーが目を引きますが、柊の葉っぱのような青針の存在感もたまりません。ダブルネームのプレートも遊びがあって良いですね。

でも一番印象的なのは書体ですかねぇ。手描き感バリバリで独立時計師が作った一点物っぽい雰囲気が最高です。お値段は49万5000円(税込)

独立時計師さんとコラボして50万円というのはかなり野心的な価格設定だと思いませんか?

恐らくルイ・エラールとしてはこの10年くらいの期間で、メゾンとしての懐の深さを見せつける作戦なのでしょう。元々手堅い仕事でマニアを唸らせる時計を作っていたルイ・エラールですから、今後も様々なテイストの受け皿として新しい価値を生み出すことができるはずです。

ヴィアネイ・ハルターコラボ以前になりますが、2019年にはあの「アラン・シルベスタイン」ともコラボレーションしています。ご存知ですか?あのシルベスタインを。あの三原色を。

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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html

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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html

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 バウハウス思想に影響を受けまくった「色・形」で力強くデザインされた腕時計が話題をさらった革新的な腕時計ブランド「アラン・シルベスタイン」は2012年に惜しくも解散してしまいました(休止でも倒産でもなく解散と言っちゃうあたりは、小さなスタジオって感じですね)

一度見たら絶対に忘れない強烈なイデアを持つ「作品たち」は、1990年以降の腕時計誌に度々取り上げられ、個性を重んじるアート系の人たちから熱狂的な支持を受けていました。私自身も建築デザインでバウハウスの影響を受けた一人ですから、アラン・シルベスタインの作る「バウハウスを拗らせた腕時計」が嫌いなわけもなく「あぁ~着けこなしが難しそうだけどマジで欲しいわぁ~」と身悶えること幾たびでした。私世代にとって響きだけで懐かしいのが「アラン・シルベスタイン」という腕時計なのです。

ちなみに手持ちの古い腕時計カタログ(1993年版)では、このような説明書きがありました。

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出典:成美堂出版「腕時計カタログ’93」

「スイスの伝統技術と現代感覚の調和の中に…云々」…いやいや、調和とか考えてないでしょ(笑)時代もありますが、何とも突っ走ったデザインです。こりゃあ絶対に目立つ。

実際、メディアで度々取り上げられるようになって以降は、かなり注目を浴びていたと思います。シルベスタイン氏が1987年のバーゼルフェアに初めて自分の時計を発表した際、最初に買い付けの手を挙げたのが日本のバイヤーだったこともあって、シルベスタイン氏自身は一貫して大の日本びいきだそうです。

そもそも日本はバウハウスに理解を示す美術家、建築家が多く、シルベスタイン氏の作品がさしたる抵抗を受けずに評価される土壌があったと思います。私が大学で建築を学んでいた時代も教授陣はバリバリのバウハウス信奉者で固められていました。半ば強制的に第二外国語で独語を取らされたりしましたし(;´Д`)

シルベスタイン氏の腕時計デザインはバウハウスのキュビズム的要素を濃縮したような明解さが特徴です。ピート・モンドリアンの「コンポジション」「ブロードウェイ・ブギウギ」を彷彿とさせる「リズム」「画面分割」が針の動きによってその表情を変えるのです。ご本人はワシリー・カンディンスキーの影響を述べていますが、まぁ…意味は同じです。

また一見、ポップな色遣いで「可愛さ」ばかりが目立ちますが、実は奥深い「デザインの妙」が感じられるというのは、多くのバウハウス作品と共通しています。

つまり、シルベスタイン氏の時計も他のバウハウス作品同様に「見る人に解釈の努力を求める」タイプのアートなのです。その辺りのハイブロー要素が日本人の勤勉さと相性が良かったんだと思います。

ルイ・エラールがこの時代にシルベスタインを蘇らせた意義は何かと考えると、一つにはシルベスタインを知らない世代に「こんなにキッチュで最高な時計があったんだぜ!」と知らしめること。

もう一つには腕時計デザインの可能性が満ちあふれていた1990年~2000年代の熱量を現代に蘇らせること。私はこの辺りだと思いました。シルベスタインの存在はあの時代にあっても突出してましたからね。

ルイ・エラールという真っ白いカンバスを好きなように染め上げて業界の話題をさらったアラン・シルベスタインコラボは、2021年に2度目のアプローチ。二番煎じどころか更に洗練され進化した姿を見せてくれました。

Louis Erard × Alain Silberstein  Chapter 2

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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html
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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html

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 こちらはオーソドックスな3針ですが「シルベスタイン味」で何とも言えない可愛らしい仕上がりになっています。曜日を「顔マーク」で気分として表示する遊び心も。ケースデザインにもシルベスタイン氏の意向が反映されています。

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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html

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 ルイ・エラール得意のレギュレーターもアラン・シルベスタインが絡むと鮮烈な印象に変わります。アートですね、完全に。

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出典:https://www.josawa-watch.com/louis_erard.html

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 こちらはモノプッシャーのクロノグラフ。三原色をこれでもかと配したデザインの中に脈づく「不思議な品格」。これぞアラン・シルベスタインです。

優れたアートは軽やかに時代を飛び越えて光を放つものです。かつて話題をさらった90年代から、時を経て鮮やかに蘇ったアラン・シルベスタインデザインの時計。それらは独立したブランドだった頃と比較して何やら大人になった…というか、角が取れて柔らかくなったような気がします。ルイ・エラールという包容力の高い器を得たことで、シルベスタイン氏のデザインにも「調和」が生まれたのかもしれません。それは今後の大きな可能性を示唆するものです。

もしかしたらルイ・エラール以外にもシルベスタイン氏とのコラボに可能性を見出すメゾンが現れるかもしれませんし、その時はまた、新しい魅力が発現するかもしれないのです。ちなみに私が勝手にシルベスタイン氏と組んだら面白そうだなぁ~と考えるコラボ先は…「IWC」「ベル&ロス」「オシアナス(カシオ)」。何の根拠もない無責任な意見ですが、いい感じの化学反応が起きそうな気がするのです。

IWCのパイロットやポートフィノ、ベルロスのBR01や03、オシアナスのハイテクなクロノグラフなどが、時代を超越したシルベスタインデザインをまとったとしたら…今まで拝んだことのないモノが出現するかもしれませんよ(*´∀`*)

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