腕時計のネタを「無責任」にブログで書き続けることは、私にとってこれ以上ないストレス解消法です。思考のスイッチを明確に切り替えたい時のきっかけとして「頭のコリをほぐす」ような効果が、このブログにはあるのです。ですから、忙しくて自由に書けない期間が長くなると、それだけでストレスは溜まるわ思考は鈍化するわ…
そんなトホホな日々においても、私の「腕時計愛」は些かも曇ることなく、会社への行き帰りの時間で「状態の良い中古腕時計」を探すひと時ほど心躍る時間はありません。そして楽天さんなどの「お気に入り」に登録された一点物のそれらは増える一方。もちろん全部を購入出来るわけもありませんし、気が付けば「売り切れ」ていることもあります。まぁその辺の「一期一会」な感じも嫌いじゃなくて(*´∀`*)
この「お気に入り」ってやつですが…ある程度の数(私の場合は40本くらい)欲しいと思っている腕時計が溜まってくると、登録した本人すら気付いていなかった「思考の変遷」を辿ることができるようになります。
例えば一時期、狂わんばかりにBREITLINGの「クロノマット・ビコロ(小ぶりなヤツ)」が欲しくて探しまくっていた時期があります。ビコロは名前も可愛いですが見た目もビコロな感じ(?)でとてもキュート。ちなみにビコロは「bicolore」…要するにバイカラーのベゼルやリューズを備えたシリーズという意味ですね。いわゆるブライトリング的なライダータブが目立つベゼルを備えつつも、ゴールドのアクセントにどこか中性的な印象があって、私にとっては「今まさに、このオッサンの腕に着けたい」小洒落た時計なのです。知的マッチョ要素を備えた腕時計ってところ…かな?
ところがこのビコロさん。どういうワケだか状態の良い中古個体が少ない。傷だらけの外装、腐食が進行したダイアル周り…などなど。ここに至るまでのハードな時計人生を想像させる個体が多いのです。う~ん(;´Д`)
それでも諦めの悪い私は、眼鏡にかなうマシな個体を日夜必死で探すワケですが(;´Д`)
ちなみに傷の中でも目立つ「打痕」は私の苦手な傷でして、特にベゼルの打痕…それもエッジ部分に当たりを見つけようものなら…有無を言わさずに「ダメだこりゃ」なのです。どこぞにぶつかってできたであろう打痕は、内部のメカにも見えない影響を残してそうですし…後々リスキーな感じがするのです。
今、楽天さんのお気に入りを確認しましたら、ビコロだけで8個体もありました。そしてそれらは登録の時系列が新しくなるほどに外装の状態が悪いのです。元々選択の母数は多くありませんし、できるだけ安価なものを…というのは安月給の私にとって絶対条件ですから、この結果も仕方がないところです(;´∀`)
しかし、どこかの段階で「外装の傷くらい、ワシのテクでピカピカにしたろーやないかい!」という風に心境が変化しました。傷だらけでも動作には何の問題もない安価な個体があったとして、それを自力で仕上げてキレイに使う。中古のスピマスをそれなりに仕上げたことで、ささやかな自信とともに根付いた楽しみ方ですが、安く買えて、さらに手をかけた分だけ愛着も増すという…これぞ一石二鳥の「中古道」じゃありませんか!?
そんなこんなで、中古の腕時計に対する敷居はさらに低くなって、今も…もちろんこれからも、見どころのある個体を探し続けることになりそうです。
で、いろんなブランドのいろんな中古を探しまくる日々の中で「あ、そうか!」と目からウロコの事実に気が付きましたので、皆さまと共有したいと思います。って言いましても「当たり前」の部類に属する話なのですが…
さてはて、このご時世においては腕時計の「定価」や「希望小売価格」にどこまでの意味があるか…怪しくなってきてると思いませんか?
日本国内の正規販売価格と並行輸入品に付けられた価格もそうですが、正規価格と並行価格に倍ほどの差があるブランドも多いワケです。正規価格では100万円の時計であっても、並行価格で50万円で売られているなら、ほとんどの人にとってそれは「実質50万円の価値」の腕時計なのではないでしょうか?
私の場合、正規販売店で購入した由緒正しい腕時計はほんの数本しかありません。正規店で「やむなく」購入した理由ははっきりしていて、それは並行輸入品が出回るまで待てない…そんな追い込まれた心境になった場合のみです。正規ブティックや正規の代理店経由でお店に最速で並ぶタイミングで欲しいときに限られます。そしてその時点で、半年もすれば並行輸入品が専門店に並んで安くなることを覚悟しているのです。ですので、私の中では並行品に付けられた値段が、その腕時計の新品時の価値ってことで一応は納得しています。
とはいえパテックやピゲ、ロレックスの主要モデルのような例外もあります。並行品よりも「正規ブティックで買うほうが安い」ってヤツです。私のミルガウスですら、今はとんでもなく値上がりしてしまいました。正規ブティックのショーケースにとんと見かけなくなったミルさまの勇姿。あの「異端の象徴」が今やまさかの高騰なのです。
しかしながらほとんどの腕時計で、並行品の方が高くなるなんてことは正直まれです。私の手持ちで「正規のお値段なら買わなかった(買えなかった)時計」として象徴的なのは、GRAHAMの「クロノファイター1695( 2CXAS.S02A)」でしょうか。定価は確か70万円くらいだったと思います。
腕時計には「適正なお値段」ってヤツが必ずあります。クロノファイター1695は手抜きのない外装と細部に拘った質感で素敵な時計です(特に裏蓋の美麗は強烈)個人的にはかなり気に入っていて死ぬまで使い倒してやろうと思っているくらいですが、それでも70万円という大金で買うかと問われれば…ないかなぁ(;´∀`)
裏蓋にはグリニッジ天文台の精緻なエングレービング。外さない限り人に見られることもないという…
腕時計の世界は、それなりの年数「腕時計馬鹿」をやってる私から見ても、未だに摩訶不思議なところがたくさんあります。
多くの方の目にそれは、高級品に纏わる派手で少々浮ついた印象から「胡散臭い」世界に映るのではないでしょうか?…ネット広告の中には本物に混じって悪意のある偽物(コピー品)が宣伝されていることも少なくありませんし、何やら怪しげな雰囲気を醸す世界に見える場合もあります。特に「高価な品物」をイコール「良品」と捉えてしまう素直な価値観をお持ちの方は注意が必要です。
例えば、定価や希望小売り価格なんてものは所詮、メーカーの都合で付けられた「言い値」に過ぎず、腕時計本来の価値を現していません。つまり、大したシロモノでもないクセに大したお値段の時計が少なくないのです。
では、腕時計の価値と価格は無関係なのか…と問われれば、決してそんなことはありません。ある意味で平等に価値判断が下され、決定された「厳然たるお値段」という物があるのです。
それが「中古価格」です。
中古価格は私が腕時計を購入する際、一番頼りにする物差しの一つです。新品の価格で比較するよりもはるかにシビアに、その腕時計の総合力を表す嘘のないモノサシこそが中古価格なのです。中古と呼ばれるようになった時点での価格から、その腕時計本来の価値が見えてくる…色々と経験させてもらった今現在、大袈裟ではなくそう思っています。
そもそも腕時計の「価値」を構成する要素を一言で表現するのは非常に難しいですよね。それでも敢えて、ざっくり雑に表すならば…
「機構(性能)」
「材質(貴金属、貴石など)」
「ブランドの価値」
「人気の有無」
…後は中古なら「状態」
…他にもその時々の「流行り」
こんなところでしょうか。それらほとんど全ての要素を、その時々の中古価格はかなり正確に評価しているのです。それは市場が中古に付ける価格の「振り幅の小ささ」からも見て取ることができます。
日本に限って話をしますが…まず、日本の腕時計の中古市場は世界中を見渡してもかなり整備されて洗練されたものだと言われています。状態に関して言えば世界トップクラス。これは基本的に「物を大切にする国民性」が影響しているのかもしれません。
なので、中古品として業者さんの扱いで売買される腕時計の中に「コレは…キツイな」と目を背けたくなるような個体を見ることは稀です。そういうこともあってか、中古価格において状態の善し悪しが価格を大きく左右したケースというものを、私自身はほとんど見たことがありません。使われてきた条件は千差万別、それでこの粒ぞろいは驚くべきことです。各ショップが仕上げを依頼する職人さんの技工に寄るところも多いのでしょう。
だとしても、全国津々浦々の中古販売業者さんが扱う同型腕時計の価格がほぼ「横一線」なのはこれ如何に?です。例えは悪いですが、カルテルか何かを疑いたくなるレベルです。たまには「おっ!これは安い」という逸品を見つけることもありますが、何かしら困った特記事項があったりします(ブレスの余りコマがないとか…そんなのです)
ちなみに先日もありました。オークションでかなりお買い得な「シーマスター・オメガマチック」を発見して気色立ったのですが、よくよく見るとブレスの長さが余りコマなしで「15センチ」。さすがに諦めました(汗)
そんなオメガマチック…蓄電池が入手困難になり、修理不能個体続出ですとか…マニアックで何だか無性にソソる案件です(笑)それにほら…私って何となくオメガマチックな感じじゃないですか(?)今回は残念ながら見送りましたが、いずれは手に入れたいですね!
中古市場が決定する中古時計の価格は「その時代の価値」を端的に現したものだと言えます。元がどれほど高価であっても、支持されない(人気がない)腕時計は高値が付かず、反対に多くの支持を集める腕時計なら出自を問わず、その時々で「再評価」がなされるのです。
しかも中古腕時計に関しては、全世界でほぼ同様の価値観が共有されているのです。売れる物を少しでも高く売るという「商売の基本」に忠実な関係者の努力の賜物だと思いますが、これは驚愕すべきことです。
私の手持ちの何本かにもそのように再評価された腕時計がありますが、その背景を推察したりするのも密やかな楽しみだったりします。それは「オレの目は間違っていなかった!」と思える瞬間でもあります。私のように腕時計を資産だと考えないタイプの呑気な愛好家でも、評価が上がれば素直に嬉しいものです(*´艸`*)
定価や希望小売価格(基本的に同じ意味ですが)はメーカーやブランドの都合で付けられたお値段ですが、中古価格のそれはマーケットを成り立たせる「積極的なコンシューマー」が間接的に決定した価格だと言えます。お店が付けた「売れるお値段」はイコール、お客さんが「買いたいと思うお値段」なワケですから。マーケットってスゴいですね(*´∀`*)
つまり極めて冷静に、その腕時計の現時点での「万人が認める真の商品価値」を現したものが「中古価格」なのです。
そう考えると…本来は無関係であるはずの中古価格さえ、絶妙にコントロールしているように見える「ロレックス」さんって、一ブランドを超越した凄い存在ですよねぇ。
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