高級腕時計を扱うお店のスタッフブログや企画ページを見ておりますと、私なんかにはにわかには信じがたい価格の腕時計を、にわかには信じがたい年齢層の人に薦める提言を見かけることがあります。その多くは各世代ごとの平均年収における「およそ3割の枠内」で探した時計…ってな感じです。
その「3割」の根拠は一体どこから来ているのだろう…ずっと気になっていました。これはアレです。戦後から高度経済成長期以降にかけて婚約指輪の習慣を無理やり根付かせるべく宝飾業界が先導した、かの有名なキャッチフレーズ「婚約指輪は給料3カ月分ね♡」と同じなのではないでしょうか?
厳密に言えば「3割」と「3ヶ月分」はそこそこの違いがありますが、要するに人それぞれの年収の中で生活に「ギリギリ破綻をきたさない」枠が「3割」や「3ヶ月分」といったキーワードなのではないかと推察します。確かに3割なら私でも耐えられるかもしれませんが、これが年収の半分ということになると間違いなく色々崩壊してしまうと思います。
「破綻をきたさない枠」と申しましたが、年収「1000万円」なら300万円、奥方に「死ぬ気で働くから買わせて!」と頼めば一生を捧げることを条件にして300万円のROLEXが買えるかもしれません。残りの7割の収入でも生活に支障はないはずです。
しかしこれが年収「500万円」なら150万円。家族持ちだとかなり難しくなります。いろいろギスギスしちゃうでしょうね(;´Д`)
こうしてグラフを作ってみますと、年収「2000万円」における「600万円の腕時計」は無理のない自然な感じがします。だけどこの辺のアッパー層は他の支出のケタもデカいですからね。腕時計が好きな人でも、実のところそう自由には出せない金額かもしれません。
うちの親父は小さな企業の経営者でしたが、しがない会社員の私と比べれば遥かに桁違いの稼ぎがありました。OMEGAやROLEXのドレスウォッチが大好物で、さらには服や靴も全部が一流じゃないと気が済まない。怪しげな骨董品や美術品も大好き…それが一部屋分くらいありましたから、そういう「自分にかける」出費はもの凄かったと思います。
だけど一番使っていたのは「交際費」でしょうか。北新地で毎月数百万の散財とか…「自分の稼ぎは全部使うで!」みたいなポリシーがあったのではないかと思います。漫画「俺の空」のキャラクターみたいな生き方です。まぁ、今の御時世、絶滅種なのは間違いありません。
ただ、馬鹿げた散財に見えるムチャクチャな豪遊を武器にして、ビジネスの勝率を上げていったことは確かなようです。親父の友人で東北で会社を経営していらした方と親父の死後、一緒に北新地の高級ラウンジに呑みに行ったとき「君のお父さんは仕事のライバルをこの店に連れてきては、仲良しになっちゃうんだよ」という話をして下さいました。無駄金は使ってなかったってことなんですね。うん、経営者としては尊敬してるぜ、オヤジ殿!
とはいえ前略、オヤジ殿。
もう少し遺してくれても
バチは当たんなかったはずだぜ?
息子より。
いや、すみません。
故人に対し恨み節が過ぎました(笑)
親父の話でダラダラしましたが、私にしたところで、とても年収の「3割」なんて時計には出せません。オヤジの散財とは比較になりませんが、私にも他に「私の世界を広げる」ための資金が必要ですから。
私が思うに、腕時計に「年収の3割」を当てはめて良いのは年収「2000万円」以上からではないかと思います。「婚約指輪は給料3カ月分」みたいな業界の扇動に踊らされて、折角の腕時計の愉しみが絶息したら元も子もありません。私の場合は時々のライブ公演や外部の仕事から入る(微々たる)ギャラがたまったら、その時買える時計を買う…が精一杯です。
ちなみに「婚約指輪」の価格の現在の相場は「約1割」だそうです。頑張れ!適齢期の若者たち(*´∀`*)
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