正確な記憶ではないのでアレなのですが、私が腕時計雑誌を買ったりし始めたのは1990年を少し過ぎた辺りからでした。
その頃、ユンハンスというブランドを雑誌で見ることはほとんどありませんでした。それもそのはずで、嘗ては世界一の生産数を誇っていたユンハンスの存在は、全く見る影もなくなっていたからです。
ドイツ・シュランベルグ渓谷に住む人達にとって、ユンハンスに就職するということは、まさしく郷土の誇りでした。6000人の従業員を抱える大企業だったユンハンスですが、2度にわたる大戦とその後の混乱が、無残にもその価値と歴史を破壊してしまったのです。
2000年に買収された際に機械式製造に重心を置いたことで、一時は復活を遂げたかに見えましたが、後に親会社が倒産。ユンハンスの経営も破綻してしまいました。現在は別会社に買収されて経営を持ち直し、精密で優良な時計を可能な限りリーズナブルな価格で提供するメーカーとして躍進しています。
グラスヒュッテの時計製造と比較して、シュヴァルツヴァルト、ユンハンスの時計製造は柔軟で、隣国スイスのノウハウや部品を取り込みやすい地理的条件を備えています。
ムーブメントにETAやSII(セイコー・インスツル)を使用した時計が多いものの、それらに十分な手をかけることで、ユンハンス・クオリティーを高いレベルで維持しています。他の部分でも価格以上の手間がかかった時計を作るメーカーという印象です。
私がユンハンスで持っているのは「マックス・ビル・クロノスコープ」です。
無印やユニクロのコーディネートでもマックス・ビルを着ければ何となくお洒落になる気がします( ´∀`)b
使ってみて一番「凄い」と思うのは、リューズの操作感です。引く、押し込む、回す、といったリューズの基本動作が緻密なのです。これほどまでにリューズ操作のアソビの少ない時計を私は他に知りません。
Bauhausデザインの真骨頂ともいえる無駄のないデザイン。細部まで手抜きのない造りを存分に味わえる上質な時計です。機械式クロノグラフを手頃な価格で提供する姿勢は、ユンハンスがどこまでも市民のための時計メーカーであることを貫き続ける証だと思います。
「想像以上の軽さと、肌への当たりの柔らかさ」が最初に着けた時の印象でした。シルバーのダイアルは刻々と表情を変え、控えめなハンドがドーム型のプラ風防の中を悠々と泳ぐ姿は美しいの一言。ダイアルの終端は緩やかに沈み込むことでレトロな味わいを醸し出しています。ダイアルが沈み込む部分の「角」が、丁度アワーマーカーが並ぶ場所に合致してほんの僅かな立体感を感じさせます。時刻の判別性を高める役割も果たしてるんですね。
近所の「空堀商店街」へ行った時のリストショットです。Bauhausのデザインは空間との融合と共存が一つのテーマですが、昭和の味わいが残る町並みにも、すっと溶け込む懐の深さはさすがだと思います。
NATOに換えてもこれまた美しいです。個人的にはビジカジスタイルとの相性が良い時計だと思っていますが、プライベートでもパブリックでも、あらゆる場所、あらゆる服装にマッチしてくれる万能型の時計だと思います。
「JUNGHANS Max Bill Chrono Scope(027/4003.44M)」の諸元表
ケース幅:40ミリ
ケース厚:14.4ミリ
風防:強化プレキシガラス
ムーブメント:J880.2(Valjoux 7750)25石、28800振動/時
防水:日常生活防水
風防がプラなので傷注意なのと、ほぼ非防水なので雨の日は避けたほうが無難というあたりに不満がありますが、些事です。弱点を遥かに上回る充実感をもたらしてくれる時計であることは間違いありません。
Bauhaus最後の巨匠と呼ばれるマックス・ビルの傑作デザインです。是非とも身につけていただき、そのエネルギーを感じてほしいと思います。
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- 出版社/メーカー: JUNGHANS(ユンハンス)
- メディア: 時計
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