使って解る【目眩く「ORIENT」の世界】

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日本は世界でも類を見ない「万能」な国です。陸上でいえば「十種競技」のトップ選手といったところ。特に製造業では不得手な分野の方が圧倒的に少なく、広い分野で中核の技術を有しています。近年は少々お疲れ気味というか、発展著しいお隣の中国に連戦連敗の状態ですが、未だに海外では「技術の日本」というイメージが染み付いています。

時計製造の分野でも日本は間違いなく世界屈指の大国です。高性能を可能な限り安価で提供し続けてきた信頼は、国内よりむしろ海外でこそ「絶対」なのです。

日本が誇る「セイコー」そして「シチズン」。その昔、クオーツの技術をいち早く実用レベルに落とし込んだセイコーがスイスの時計業界を断崖絶壁まで追い込んだことがあります。世に言う「クオーツ(セイコー)ショック」です。

その後、スイスの時計業界は機械式時計の価値観の再構築を成功させ、それまで以上の規模で鮮やかな復活を遂げました。しかし、「セイコー」が与えた衝撃は一国の基幹産業を壊滅寸前までに追い込む苛烈さで、その記憶は時計業界の語り草となっています。

「セイコー」が東の横綱なら西の横綱が「シチズン」です。

「シチズン」の歴史はライバル「セイコー」との覇権争いの歴史であり、それは互いの技術を高め合うエネルギーになりました。「シチズン」の「セイコーに追いつき追い越せ」の姿勢は現在でも殆ど変わりありません。世界一と言っても過言ではない「セイコー」の時計に肉薄できるということは、「シチズン」の時計も「世界一クラス」の時計であるということです。事実、「シチズン」は幾つかの分野で「セイコー」を凌駕し技術を世界に知らしめました。

我々日本人はこと腕時計に関して言えば、とても恵まれた環境にいます。スイスやドイツの優れた時計に触れる機会を十分に与えられた中で、自国のブランドに目を向け、それを応援することが可能なのです。

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「コスパモンスター」オリエント

そして「オリエント」です。

「オリエント」は2017年に「セイコーエプソン」の連結子会社になるまでは、独立した会社でした。現在は「セイコーエプソン」の中のブランドの一つとして、そのブランドカラーを頑なに守った時計を製造しています。

1901年に吉田時計店としてスタートした「オリエント」の歴史。機械式時計に重きをおいたラインナップが特徴で、安価だが精度も良好なムーブメントに定評があります。現在は高級機械式腕時計のブランドとしての「オリエントスター」、リーズナブルでファッション性の高いスポーツウォッチがなどが人気の「オリエント(無印)」と、二つのブランド展開というシンプルな構成を保っており、国内外で安定した人気と評価を得ています。

「オリエント」は安価な時計を中心にしたラインナップですが、上位ブランドの「オリエントスター」と比べて格段に落ちるといった作りではありません。例え安くても、十分に満足して使える時計を提供し続けてきた実力は伊達ではありません。目の肥えた顧客が多い日本という国で鍛えられたブランドですから、海外では考えられないコストパフォーマンスの高さを誇ります。

それは海外での「オリエント人気」を見ても解ります。高級腕時計を日頃から使用しているカスタマーであっても、セカンド、サード使用の腕時計として所有する人が多く、高級時計に引けを取らない満足感を感じているようです。「価格は安いが安物ではない」というのが「オリエントの真髄」です。

【2020年3月発売】辛抱できずに買ってしまいました(;´∀`)

では私が愛用する「オリエント(無印)」たちを自慢させて下さい( ー`дー´)

ORIENT Enforcer(SEZ07002B0)

インヂュニアもビックリなこのヘビーデューティーなルックス。ダイアルは濡れたような黒が艶やかで、アプライドインデックスや各種カウンターにも不思議な色気があります。お得意のパワーリザーブメーターを当たり前にように装備しているあたりにオリエントの気骨を感じます。

唯一というか最大の不満は、手巻きがないことでしょうか。セイコーファイブもそうですが、「手巻きさえあれば…」と思うことの多いこと。最近はネットショップからも姿を消しつつあり、この強烈なインパクトを持つ時計の入手機会は徐々に減りつつあります。ケース幅は43.5ミリ。100メートル防水。

スリースターオートマチックデイデイト(SEM70002CG)

巻板のブレスの安っぽさも「狙ってる?」と思わせる可愛らしさのある時計です。ダイアルのシャンパンゴールド、カットガラスがレトロ感満載で、「今、何時代?」となること請け合いです。

ぶっちゃけ見た目はラドーの「ダイヤスター」そのままみたいな感じですが、醤油味っていうか…印象は柔らかめです。ダイヤスターは「男」的ですが、これは「女」的な時計といった印象です。女性が着けても似合いそうです。

これも手巻きなしのムーブメントを搭載しています。ケース幅は40ミリ、50メートル防水。

ネオセブンティーズ クロノ(WV0011TX)

ソーラークオーツのクロノグラフです。70年代の機械式クロノグラフのテイストをリーズナブルなソーラ時計に落とし込んだシリーズです。中々芸が細かい作りで、プッシャーやダイアルのデザインにヴィンテージな味が感じ取れます。ケース幅は42ミリで日本人にも許せる大きさです。見た目よりはるかに軽い作りで、特に仕事場では重宝します。「今日は帰れるかな~」っていう切羽詰ったときに心強い時計です。お値段も安いですし、オリエントの良心が詰まった良作です。10気圧防水。

Mako Ⅱ(SAA02001B3)

2018年の台風や豪雨の季節を200メートルの防水性能でものともしなかった「MAKO Ⅱ」です。ケース幅は41.5ミリ。丁度いいサイズ感のダイバーズとして、むしろ「晴れた日に使ったことがない」くらいにある意味頼り切った時計です。オンオフ問わず使える非常にノーマルなデザインですので、これは買ってよかったというより、「持っててよかった」と思わせる使い勝手の良さでした。

これには手巻きとハックが付いたムーブメントが載っていますのでご安心下さい。決してクラス感のある時計ではありませんが、装着性がやたらと良いのでじわじわと好きになってくる「スルメ」なダイバーズだと思います。

クロノグラフ デイト(STDAG001B0)

BVLGARIのアショーマに見えたり見えなかったり、やっぱり見えなかったりなクオーツクロノグラフ。丸い時計ばかりに「飽きたなぁ~」って時が出番です。安っぽい見た目のブレスですが、全体の軽さも相まって意外と高い装着性を示します。ラグがブリッジ構造になっているのも装着性に寄与しているかもしれません。顔見知りのお爺さんが同じものを着けてます。お孫さんのプレゼントかもしれませんね。ケース幅は34ミリ。

とりあえず「オリエント(無印)」は以上です。セイコーやシチズンとは違うフィールドで独自進化してきた「オリエント」の時計は、日本を越えた「アジアの良品」といった風情があります。モデルによってはデイ表示に「アラブな文字」が現れたりしますが、それもまた情緒があります。

オリエンタルムード漂う「オリエント」の腕時計。是非一度、その腕に巻いてみて下さい。きっとこの可愛らしさが解るはずです。

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