この2週間で2本の腕時計を「オーバーホール」に出しました。どちらもお願いしたのは所謂「街の修理屋さん」なのですが、特に根拠もなく、ある種の「興味本位」でそれぞれ「別のお店」にお願いしました。東京生活の思い出作りも兼ねてるかな??色々試してみました~っていう意味で。
当然、正規のお店でも相談しました。どちらも「本国行きですねぇ」と宣告され、その場合の所要日数は「短くても半年」「長くて1年」。代金は正規でも旅費を除けば街の修理屋さんとどっこいどっこいでしたが、さすがに「1年とかは待てんなぁ~」となりまして(;´Д`)
東京では初のオーバーホール
ちなみに東京に単身赴任して以降、初めてのオーバーホールです。大阪時代はちょくちょく「タイムグラファー」に載せて遅れや進み具合から「オーバーホール時」を算出していました。正規サービスの方が上がりが早いこともありましたし「うちには部品がない」と言われて、結局は正規に頼ったことも多々ございます。
正規サービスが安心なのは当然です。万が一の場合の保証も街の修理屋さんとは比較になりません。修理代金だって、何万円も街修理の方が安い!!なんてことは稀でした。ですが私は、率先して街の修理屋さんを頼ってきました。それは私自身が一時「某時計学校」に通っていた経験がそうさせるのかもしれません。と言っても、国家資格取ったろ!!みたいな大志を抱いたわけではありません。単純に機械好きで「中身イジれたら楽しいやろうなぁ~」と思ってのことでした(*´∀`*)
街の時計修理屋さんは「セーフティーネット」である
機械式時計は正しいメンテナンスを行いさえすれば、100年だって使えるサスティナブルなメカです。ですがそれも、優秀な「修理士」さんが居てくれればこそ。メーカーが「製造から30年経った時計は修理できません!!」とアナウンスしたならば、その後、見捨てられたヴィンテージたちは「街の修理屋さん」のスキルに依存して命を永らえることになります。時計好きにとっては文字通り「セーフティーネット」なのですよ。
そう思っているからですかねぇ。「腕時計を壊す一番の要因は街の修理屋」…みたいな話が度々耳に入ってきても、私は「街の修理屋さん」に分身である腕時計を託すことを止めませんでした。街修理で時計の価値が落ちる可能性は否定しませんが、基本的に「売るつもりがない」私ですので、そこはどうでも良かったりします。要は「動けば良い」のです。
ってなわけで、大阪でもアチコチの修理屋さんを転々と試しては、お店の「得意・不得意」を把握したりしました。営業妨害になっちゃうので具体例は自重しますが、私の経験では「全ての時計を直せる修理士はいない」と断言できます。むしろ「この時計は私には直せません」と瞬時に判断できる知見を持った修理士こそが、真に優秀な技術者なのです( ー`дー´)
お世話になる2軒の修理屋さんは「真逆の佇まい」
そして今回、東京で2軒の「街の修理屋さん」にお世話になります。一件は頑張れば歩いて行けちゃう近隣のお店。もう一件は地下鉄で数駅の場所にあるお店です。
近隣のお店はまさに「修理業務に特化」みたいな店構えで、扉を開けるのに気合が必要な感じでした。百戦錬磨の雰囲気が漂う老齢の修理士が、修理中の時計から目線を切らないまま、私の時計の不具合について聞いてきました。
ブランドと型式・年式、その他、私の知る限りの現況を伝えました。症状として「カレンダーがたまに滑るんです…」と告げると、急に身を乗り出してきたので、言われるまま時計を手渡しました。
リューズを10回ほど巻いてしばらく…「摩耗だな」と診断完了。そこまでの所作が粋な感じで「まさにプロ!!」。お任せしますとなりました。チェーンで首から吊られた老眼鏡。ぶっきらぼうな受け答え…プロの修理士として「完璧なビジュアル」だと思いました。修理完了まで30~40日だそうです(*´∀`*)
これは貴重な経験??
で、もう一つのお店。対称的にそこはコンサルの商談室のような佇まいでした。違う意味で緊張しますし、ぶっちゃけ「嫌な予感」がしました。対応して下さったのはお若い女性。いやいや!!時計師として活躍する女性だって沢山いるんだ!!余計なバイアスで人を見るのはオッサンの悪い癖だぞ!!(;´Д`)
要件を伝え、要修理の時計を取り出した私。修理に必要な情報を可能な限り正確に伝えるべく、あれこれとお話させていただきました。「手巻きができない」という状態なので、素人見立てですが「キチ車が摩耗で滑ってるかも??」みたいな話をさせていただきました。あれ??メモらなくていいの??このくらいは瞬時に記憶しちゃうのかなぁ~??やっぱプロだなぁ(*´∀`*)
「こちらのお時計ですが…機械式ですか??」
はい??…(@_@;)
あれ??ワシ、言いましたよね??◯◯◯◯ベースのカスタムが入ってますよ~って。
「ということは、え~っと、自動巻きですね!!」
手巻き…手巻きの名機ですがな
おまけに、止まって動かない時計を「タイムグラファー」に載せて「波形がおかしいです!!」とアピられた日にゃ…ツッコむ気力も消え失せ、逆に段々と楽しくなってきましてね(笑)こりゃあ良いネタが拾えたぞ~なんて思えてきました。実際、中々ないと思うんですよねぇ。時計のプロショップでこのやり取りって。貴重だなぁ~この経験(;´∀`)
それでもこの修理屋さんに「賭けてみる」
でも私は、このお店にお任せすることに決め、すでに支払いも終えました。ブランド別の料金表がしっかりしていたこと、実際の工房は別のところにあることなどから、今日は「たまたま」面白いことになっただけで、普段はしっかりしたお店であろうとの判断を下しました。大した時計ではないかもしれませんが、中古で買っても50万は下らない時計です。ちゃんと直してくれるか、ドキドキしながら待ちたいと思います。何やら香ばしい展開の匂いがするぞぉ~(笑)
「安心」を見える形で提供してほしい
例えば鍼灸を受けに行ったとき、そこの先生がカタコトの日本語で「アナタ働キ過ギヨ~!!」とか喋りながら打ってくれた鍼って、すっごい効きそうじゃないですか??
占いだって、怪しげな黒い衣装の人がいて、水晶球(ガラス玉??)をナデナデしながら「見える…見えるわ!!」とか言ってくれるから、真剣に聞くことができるんだと思います。ジャージ上下の占い師に軽口で何か言われたところで、それって説得力ありますか??(;´∀`)
そう言えば先日、行きつけの美容室で、担当の「若店長」から悩みを聞かされまして。新陳代謝の早い業界で、今29歳の自分が後何年、現役でいられるか…そんな話でした。「40歳の美容師見たことあります??」と聞かれて即答できなかった私ですが、確かに、テクニックや経験以上に「若さ」を求められる仕事なのかもしれません。
「若い人にやってもらった方が格好良くなる」わけでもないはずですが、美容が若さの追求でもある以上、その価値基準は変わらないかもしれません。まぁ私みたいなオッサンからすれば「若くてジャニーズみたいなルックスのアンタにそんなこと言われたら…」としか返せませんでしたが(汗)
私の中で「時計修理士」さんのイメージは真逆なのです。老眼で手元が見えなくなってからが「全盛期」みたいな印象が強い。そもそもおじいちゃんになってからの方が「キズミ」が似合いますしね(笑)商売人としての愛想なんて、どれだけ悪くても構わないのです。
技術職って技術の「凄い凄くない」が傍から見えづらいじゃないですか??だからこそ「この人なら任せられる!!」と思わせてくれる、見た目の「オーラ」が大切だと思うのです。言うなれば「ハッタリ」ですよ。
まぁ実際はどの技術職もそうであるように、年齢も、ましてや性別なんて関係なく「優秀な人は優秀」なのです。しかし、プロである以上、見た目のセルフプロデュースも必要ですよね??それなりの代金を支払うわけですからね。顧客を安心させてくれないと(;´∀`)
最後に
取り敢えず「街の修理屋さん」の偉い人にお願い。顧客の腕時計を扱うスタッフには「デコデコのネイル」を控えるように指導して下さい(汗)腕時計の現状チェックを受けている間中「樹脂の爪で擦るんじゃないか…」と気が気ではなかったですから。
せめてせめて…気休めでも良いから、手袋くらいははめるべきじゃないでしょうかね??(このオヤジうざッ!!とか言われちゃうのかなぁ??)
タイムグラファーのクリップに対して無造作に「バチン」と直留めされた瞬間は、心の中で「止めてぇ!!」と悲鳴を上げた私です。無事に帰ってきてね??オイラの腕時計…(無事でなくてもネタにはなる…か)(;´Д`)
ご意見・ご感想
コメント一覧 (8件)
いつも更新楽しみにしています。
親からいただいたヴィンテージ腕時計があるのですが、ここ数年のうちにオーバーホールに出したいなと思っていまして、どこに出すか迷っています。
専門家ではないので詳しくわかりませんが、巻き上げの音が明らかに大きくなってきていましてそろそろかなと…。
関西圏で評判の良いのお店ありましたら教えていただけませんか?
もっちさま。
ありがとうございます!!
嬉しいです(泣)
まず、どこのブランドかで、ある程度お店が絞られると思います。
また、ちゃんとした資格を持った技術者が常駐しているかなどもポイントです。
お客が不安にならないためには、窓口での初見…イメージが大切ですからね!!
記事でも書かせてもらった通りです(汗)
関西…と言っても私の修理依頼経験は大阪近郊に限られるのですが…
何店舗かピックアップさせていただきます。
1)大阪中央時計修理センター(大阪市中央区)
2)岩崎時計店(大阪市阿倍野区)
3)五十君商店(大阪市西区)
比較的「堅い」お店を選びました。
岩崎時計店さんはアンティークに強いイメージがあります。
事前に当該機種(特にムーブメント)の修理実績を確認してから、
お決めになって下さいね。
チャレンジャーですね。流石、百戦錬磨の大阪人ですわ。
安物ならいざ知らず、中古で少なくとも50万円する時計を、自分よりも知識が少ないであろうオネーちゃんに預ける勇気は私にはありません。
外しても、ネタとして美味しい!
確かにそういう側面は分かりますが、器が大きいっス。
私は修理に出したことはありますが、オーバーホールに出したことがありません。
最近購入したオメガを5〜8年後にオーバーホールに出すのが初めてになると思います。
続編記事を楽しみにしています。
ししとーさま。
今回は「笑いの神が降りてきた」気がしましたので、勇気を出しました(笑)
日常生活でもネタ探しに余念がない…ホンマ大阪人の悪い癖ですわ(笑)
まぁ本当に…ネイルは止めてほしいですね(汗)
腕時計を扱うお店で初めて見ましたもん。あそこまでのネイル。
お店のホームページにはそれなりの実績が掲げられていましたので、
バラバラになって戻ってくるようなことはないでしょう!!(*´∀`*)
いや…「続編」を面白くするためには、キレのあるオチが必要…??
最近の腕時計は素材や自社ムーブメントの流れから街の修理屋さんでは扱いにくくなっているようなことを聞いたことがあります。でも、永久修理を謳っているメーカー以外が修理を終息させることを考えると、将来的に街の修理屋さんに頼ることも出てくるのでしょうね。その時のために、いかに街の修理屋さんに技術や部品をストックしてもらうかも大切ですね。
ただ、流石に不安を感じる修理屋さんにはとても託せないですね(-_-;)
黒海月さま。
機械式を楽しむ以上、街の修理屋さんとのお付き合いは無視できません。
マニュファクチュールを出す勇気はございませんが、ETAやセリタ、ソプロードなら、
修理士を名乗る以上は「直せて当然」だと考えています。
「汎用機の確実な修繕」は彼らの役目ですからね!!
時々街修理にお願いするのも、そういった街修理の役割を守っていきたいから…みたいなところがあります。
それに「時計趣味は失敗談のほうが断然面白い」のです。
さぁ~て、どんな展開で面白くなるかなぁ??(*´∀`*)
なるほど、汎用ムーブメントならあり得ますね。そういう意味では中古やポストヴィンテージを検討する後押しになりますね。
砂布巾さんが頼んだ2軒目の店員さんも経験を通して時計にもっと興味を持ってもらえる、あるいは時計を預ける客の気持ちを汲めるよう成長されるといいですね。
黒海月さま。
中古品を求める際には自然とムーブメントの素性を調べてしまう私ですが、
修理の難易度を把握しておきたいからなのでしょうねぇ(;´∀`)
後々、どこに修理に出せるかも考えておかないと、中古品は買えません。
生涯付き合える修理屋さん探しは、まだまだ続きそうだなぁ~(笑)