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迷った末に「ASTRON(アストロン)SBXY015」を購入

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日本の腕時計メーカーの中で「クオーツのトップブランド」を上げろと言われたら?

実用性の高い高機能ビジネスモデルのラインアップに限れば、シチズンなら「ATTESA(アテッサ)」、カシオなら「OCEANUS(オシアナス)」、そしてセイコーなら「ASTRON(アストロン)」となるのではないでしょうか?

どれもワンランク上の質感を持ち、いい感じで所有欲をくすぐるプレステージ感がよく似ています。「ほんのり高級クオーツライン」とでも呼べば良いでしょうかね?主力にチタンモデルが多いところも、そういえば同じです。

例えば知人に「高機能でメンテナンスフリーで、とにかく軽い時計が欲しい」と相談されたなら、私はこの3つのブランドからお勧めするでしょう。クロノグラフがフラッグシップですが3針モデルも揃っていて、それぞれが各メーカーのブランドの一つに過ぎないとはいえ、侮れない数の選択肢があります。必ずや目的に叶う一本が見つかるはずです。

しかしながら、機能だけで腕時計を選んで購入する人は少数派です。特にムーブメントの特徴が表面に出づらいクオーツモデルの場合、機械式のように「中身に拘って買う」というのもどこまで意味があるか微妙。厳密に言えば精度差はあるでしょうし、電池寿命や光発電の効率など、電気的な性能に目を向ければそれなりの「個性」はあります。とは言うものの、機械式のムーブメントほどではありません。

となると、クオーツモデルの腕時計は外見…詰まるところ「デザインが非常に重要である」ということになります。

デザインの良し悪しで言えば、平均点はシチズンの「アテッサ」が優秀だと私は思います。デザインの好みは完全に個人の主観なので異論は全面的にウエルカムなのですが、私はアテッサの「男らしさ」「危うさ」が共存したスタイルが好きです。敢えて繊細さを残した作りも「放っておけない」感じがして、上手いなぁ~と思います。

たまに強烈に目を引くデザインを投入して楽しませてくれるのは「オシアナス」です。デザインの凝り方を価格とのバランスで評価すると、オシアナスが最もデザインにコストを掛けているのではないかとさえ思います。そういえば一時期、オシアナスは「オタクの御用達」と聴いたことがありますが、あれは一体何だったのか?(笑)

そして「アストロン」。そのデザインからブランドの方向性が垣間見えるアテッサやオシアナスに比べ、セイコーのアストロンのそれは何かこう…遠慮がちとでも言うか、吹っ切れてない感じがあってもどかしく感じていました。

保守的であるとか、そういう問題ではありません。私が見るに、アストロンのデザインからは、その時計に与えられたポジションが明確に見えてこないのです。一体誰に向けての腕時計なのか…そういう印象もあって、私はアストロンというぼやけたブランドがあまり好きではありませんでした。まだしも「若者向け高級ライン」として与えられたレーンを潔く突っ走る「BRIGHTZ(ブライツ)」の方が、格好いいデザインを多く揃えているような気がして(;´∀`)

ご存じの通り、アストロンは腕時計の歴史に色濃く刻まれた名前です。決してセイコーだけが猛威を奮った結果の「クオーツショック」ではありませんが、欧州の時計産業にとってクオーツ・アストロンの名は「クオーツ時計の象徴」であり、70~80年代にかけて機械式本家の自分たちを冬の時代に突き落とし、多くの老舗ブランドを休眠に追い込んだ「脅威」であったという苦い認識はあると思います。

欧州の…特にスイスの時計産業からすれば「機械式はいねえがぁ~!」と家に入ってきた「なまはげ」のような存在、それがアストロンなのかもしれません。その分、セイコーにしてみればアストロンの名は特別な金字塔のはず。腕時計愛好家なら誰でも知っているそのペットネームを大事にしないワケはないのです。

その割にはアストロンを現す「記号」としてのデザインは、残念なことに未だ見つかっていないと思います。繰り返しますが「クオーツ時計はデザインが大切」です。機械式とスマートウォッチに挟まれて、機能の優位性だけでは立ち位置を保てなくなってきた現在のクオーツ時計。その中でもそれなりに高価なアストロンのようなブランドは、その高機能とともに「長く色褪せない洗練されたデザイン」で戦略的な差別化を計るべきなのです。

とはいえセイコーというメーカーは「デザインを戦略に落とし込む」ことが伝統的に下手っぴ。だけどいつまでも「苦手でーす(テヘペロ)」では、セイコーを愛する消費者も、さすがに付いていけなくなってしまいます(;´Д`)

ここ数年、ずっと欲しいのに決めきれず、モヤモヤしていた案件があります。寝過ごした朝にこそ頼もしい「ビジネス仕様の高機能クオーツ時計を買う」がそれです。

機械式だと、どうしても時刻合わせに数分は必要です。急げばもっと早くセットアップ可能ですが、慌てると手元が滑って落下させたりですとかロクなことがありません。その点、電波ソーラーのクオーツ時計なら調整もほとんど不要ですし、いざというときにサクッと使える利便性は有用です。フルオートカレンダーならさらに良しですね。

そしてもう一つ求めていたのが…「軽さ」です。寝坊した日は帰宅まで心の余裕に欠けることが多く、できるなら腕時計からのストレスも減らしたい。

とはいえ、格好悪い、あるいは自分の趣味じゃない腕時計は着けたくないのが人情ってものですからデザインも譲れません。余りに安っぽい作りの物も、すぐに飽きてしまいそうです。色々ワガママ言ってますけど…だってさぁ(;´Д`)

そんなこんなで数年、アテッサあるいはオシアナスから「ビジネス最強の一本」を手に入れるべく、観測と調査を怠ったことはありませんでした。しかしまぁ…そんなこととは関係なく、出会いは訪れるものです。

先に述べたような「期待値の低さ」もあって、アストロンは私の購入候補の視野から少し外れた場所にありました。新製品情報すら積極的には調べにいかなかったのはまさにそういうことで、少なくとも丸1年、私の中のアストロン情報は更新されていなかったのです。これは腕時計好きとして本当にダメダメな姿勢でした。

油断して目を離した隙きに、物事の事態は一瞬で変化するものです。それがアストロンでは珍しい、シンプルでスタンダードな「ソーラー電波ライン」の誕生でした。いつの間にこんな渋いラインが生まれていたのか。何故に私は気付かなかったのか。

調べると今年の4月、5月と連続してリリースがあったようです。希望小売価格で20万円を下回るモデルはほとんどなかったアストロンですが、ソーラー電波ラインは十数万円と手頃な価格で展開。しかも、これまでのアストロンとは一線を画すシュッとしたデザイン。それはクラシカルで大人っぽく、まさに今、私が欲しいビジネス腕時計の姿でした。しかも全てが純チタンのケースです。もはや運命(さだめ)…これは買わねばなるまい( ー`дー´)

ということで、2021年4月に発売されたアストロン「SBXY015」を購入しました。購入は一月ほど前になりますから、実際に何度か使ってのレビューとして報告させていただきます。正直、誰の参考になるやら…ですが(;´∀`)

SEIKO ASTRON(SBXY015)

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チタンらしからぬ艶やかな光沢

 この写真くらいの距離で時計全体を見る分には、これがステンレススチールかチタンかなんて、簡単には判別できないと思います。ちなみに私の中のしょーもない認識として「チタンの時計は黒い(暗い?)」というのがありまして…今回、現物を手に取らずに楽天さんから購入したという経緯もあって、商品到着後、開封して実際にそのお姿を拝するまでは、ほんの少しですが心配していたのです。黒いんちゃうか…と。

街中でチタンの時計を愛用している方をお見かけする機会も少なくありませんが、やっぱりどこか暗く沈んだ鈍い光沢の時計が多い。特にポリッシュ部分の光の反射がステンレスのそれとはかなり違うのだと思います。良く言えば男らしく重厚、悪く言えば鈍重な感じがするのです。チューダーのペラゴスを試着させてもらった際にも「えらい暗いなぁ」と感じたことを覚えています(;´Д`)

ところがこの「SBXY015」のケースとブレスは、ステンレス製の腕時計を横に並べて比較でもしない限り「暗い」という印象を感じません。コーティングなのか磨き方なのか、チタンでありながら「これならドレスウォッチもいける」と思わせる美しい光沢を有しているのです。まずそこに感動。さらに持ち上げたときの「軽さ」に関して言えば、ちょっとショックなくらいでした。重量はたったの90グラムしかありません。

風防はスーパークリア コーティングを施したサファイアガラス。これも「ガラスはどこいった?」と錯覚させるほどの透明度があります。美しいですよ。

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リューズとプッシャー

 このシンプルなアストロンの新モデルを買おうと画策し始めた際は、このモデルの他に丸みのあるケースの「SBXY001~007」を候補として上げていました。角のあるケースの「SBXY009~019」の方が僅かに安いのもあって「SBXY015」にしましたが、もう一つの理由としてはこのリューズがありました。

根っこの部分にそれほど目立たない差し色のリングが施してあるのですが、遠目に見た時にそれが格好良く効いていたのです。ちょっとした遊びですが、こういう差し色遊びが私は好きなのです。機械式と違いリューズ操作の機会はそう多くはありませんが、その分デザイン的なアクセントとしての存在感が必要ですからね。

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デイトディスクの「深さ」

 ソーラーですし、デイトディスクはもっと深い位置にあるのではと予測していましたが、案外浅くて見やすい位置にありました。額の細工も立体的で高級感があります。ダイアルの色に合わせた黒地に白抜き文字も、ちょっとした配慮ですが統一感があってキレイです(*´∀`*)

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インデックスの存在感

 夜行の塗り込み具合も丁寧なインデックス。3針に近いシンプルなダイアルにとって、インデックスの出来は印象の大きな部分を左右します。厚みからくる視覚的な重量感は大したもので、視認性の向上にも一役買っていると思います。

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ブレスレットとバックル 

 プッシュ式の三つ折バックルです。加工精度が高くて見た目もキレイです。ブレスは真ん中のコマの側面だけにポリッシュ加工が施され、時々にキラリと印象的に光ります。チタンの特性としてあまりポリッシュには向かないと思いますので、基本はサテン(ヘアライン)仕上げ、ほんのりポリッシュは正しいと思います。チタンなので肌当たりがとてもソフトです。

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最大のアクセントはインダイアル 

 この「SBXY015」の顔を引き締めている最大の要素がこのインダイアルでしょう。それはGMT針どころではない、時・分を表示する「デュアルタイム表示」。もう一つの時計とも言えるこのインダイアルの使い方としては、外国旅行の際に現地時間をメインダイアルで、日本時間をインダイアルで表示する使い方が考えられます。家族や知り合いが外国にお住まいなら、そちらの現地時間をインダイアルで表示させておけば、就寝中にメールを送ってしまうようなヘマをしないで済むかもしれません。

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レトログラードなデイ表示 

 ハンドで隠れてしまっていますが…デイ表示は最後の土曜日まで行ったら最初の日曜日に針が戻ってくる「レトログラード式」です。意外と判別しやすいですし、何となく可愛らしい。長方形の穴からデカデカと「MON」の書体が覗くよりは、品があると思います。

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着けたらこんな感じです

 クオーツですがトルクに余裕があるのか、太めのハンドを回すことで高い視認性を発揮しています。これまでのアストロンとは違いドレス寄りデザインに見えるのは、2つめのタイムゾーンを表すインダイアルがスモールセコンドに見えるからでしょうか。落ち着いたクラシカルなケースデザインと相まって幅広いシーンで活躍しそうです。

ベゼル内側がもっとシンプルなら、急なお呼ばれに着けて行っても怒られるない時計に化けそう。セイコーの中の人どうです?作ってみませんか?

装着性に大きく影響を及ぼすサイズ感ですが、現行アストロンとしてはかなり小ぶりな部類の幅41.3ミリ。私が選んだモデルは、その中で最も使い回しが効きそうな「ブラック」です。黒さえ選んでおけば長く広く使えて間違いなし!というのは私の経験則です( ー`дー´)

こんな感じでこれまでのアストロンの(私の中の)イメージを大きく変えた素晴らしい逸品が「SBXY015」なのですが、一点だけもの申したいところがあります。「そんなの気にならない」と仰る方も多いとは思いますが、参考までに書いておきます。

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ハンドの仕上げが惜しい (汗)

 時針、分針、秒針だけでなく、インダイアルやレトログラードの針も妙に惜しい…。何でかなぁ~ここまで頑張っといて何でかなぁ~。いや…別に全然ダメとか、金輪際許せんとかいうワケではないのです。腕時計作りのプライオリティーにおいて、ハンドの立場の低さを感じるなぁ~って話なのです。私が思うに、これは日本のブランドに共通するちょっと残念な特徴ですね(;´Д`)

さて、好きなように書かせていただきましたが「SBXY015」の総合力の高さは間違いありません。ビジネスに「必要十分な機能」があって、見た目や質感においても「ほのかなクラス感」を感じさせてくれる「主力になり得るクオーツ」。手頃な価格で老舗アストロンの「箔」が手に入りますし、私自身もその高揚感を存分に感じました。

これまで、その「期待値の低さ」ゆえに継続して興味を持てなかったセイコー・アストロン。その認識を大きく覆した「SBXY015」の出現。シンプルに洗練され使い勝手の良さを感じるルックスは、兄弟分の「SBXY001~007」と共に早くもロングセラーの予感すら漂わせています。今後の展開にも期待できそうですね(*´∀`*)

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ご意見・ご感想

コメント一覧 (2件)

  • 初めまして、最近読者になった者です。
    過去の記事を含め、楽しく拝見させて頂いております。
    小生、普段はオメガのアクアテラを
    使用しているのですが、
    今月が誕生月であるのと
    こちらの記事に背中を押され、
    私も本日「SBXY015」を購入致しました。
    誕生日から使用する予定でして、
    今から楽しみです。
    東京での生活、とても大変だとは存じますが
    今後もブログの更新を楽しみにしております。
    突然のコメント、失礼致しました。

  • H2oさま。
    読んで下さってありがとうございます。実際、過去作はあまり読まれていないようなので…すご~く嬉しいです(*´∀`)
    「SBXY015」はアストロンの中では大人しいデザインですし、電波ソーラー、フルオートカレンダーなどのお陰で、とても使いやすいモデルです。忙しい朝、時計を選ぶゆとりのない時の「一番候補」として重宝しますよ♬
    これからも微妙な時計の話題を中心に、チマチマ書いていきたいと思いますので、どうか末永くご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます(*´∀`)

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