腕時計好きとしてはあるまじき考え方なのかもしれませんが、腕時計の「精度」に対する私の要求はユルユルです。具体的な数字を上げると「日差 ± 1分」であれば許容範囲だと考えているくらいで… 要するに「動いてるしエエやん」なのです (;´∀`)
※そんな私が許せなかった「ZEGATO」のお話はコチラ
と言うのも、私は常に腕時計を「3分くらいは進めて」時刻設定しているからです。正確な時刻はスマホで確認できればAOK。私が機械式の腕時計に求めているのはあくまで「味のある時間管理」であって、一秒を争う修羅場で頼りになるとは考えていないのです。ですので、例え ± 60秒のダメダメな精度だったとしても、私自身の使い方からすればほとんどの場合、問題はありません。
それでも精度に拘りたい「機械式腕時計」
とは言えですよね。精度が良いに越したことはないわけですし、精度の変化が腕時計の「健康状態」を測る指標であることは確かです。ある日突然「あ、動かない!!」何てことにならないように、腕時計の状態に対する「一定水準の心配り」はあって然るべきでしょう。
「タイムグラファー」を使おう
ご存じですか??「タイムグラファー」。『時計歩度測定器』とも呼ばれるもので、時計の精度や状態を計測して解りやすく表示してくれる機械のことです。時計オタクなら日常的にお使いの方も少なくないはずのアイテム。
時計好きなら持っていて損はない機械ですし、腕時計の楽しみの一つとしても購入をお薦めしたいところですが、問題はどんなタイムグラファーを購入するかです。高価なものはとんでもなく高価ですしね。
ところが、高価なものほど「正確に計測できるのか??」と問われたら、そうでもないのがタイムグラファーです。某有名腕時計販売店の店長がプロショップの威信をかけて高価なタイムグラファーを導入したものの、設定がデリケートで扱いにくいと嘆いてましたっけ。結局「2万円くらいで買えるヤツが最強かもしれません」とも仰っていましたので、取り敢えず最初は「安いヤツ」で問題ないでしょう。
無理して高価なタイムグラファーを買う必要はない!?
使い始めの頃は「何や難しそうな数字が並んどるわ」と些か腰が引けたものですが、その意味するところを覚えてしまえば、拍子抜けするほど簡単に使えるようになるのが「タイムグラファー」。
とは言え、タイムグラファーは安い物でも2万円弱。ぶっちゃけ痛い出費ですよね?? そんな貴方に朗報です。何と!! 簡易な歩度測定が可能な恐るべきスマホアプリが存在するのですよ。それが「Watch Accuracy Meter」です。
Watch Accuracy Meter とは??
ご存じの方も少なくないと思いますが、実際、とんでもない時代ですよね。こんなに便利なシロモノが、いつでもダウンロードできちゃうんですもの。
ちなみに簡易とは言え、趣味で腕時計の「健康診断」をするくらいならば、十分におつりがくる性能があります。シンプルであるが故に操作も超簡単。時と場所を選ばずいつでも歩度が測れるなんて、腕時計好きにとっては正に夢のようなアプリです。仕事の合間のひとときに(私はよくやってます) お洒落なアイリッシュバーのカウンターの上で、出張で宿泊するビジネスホテルの窓際で、思う存分、貴方の時計の歩度を測って下さい。う~ん… 何だかスタイリッシュ!!
使い始めの私が悩んだ部分が一つ。歩度の目安として、赤い三角形の積み重なりが描く直線があるのですが、線の出現位置がまちまちなんです。扇上のスケールと照合して「何秒進む」「何秒遅れる」を読みとる仕様上、スケールのスタート地点と線の出現地点が合致しないのは何とも読みづらい。
「こう言うもんか」と諦観気味に使い続けていた私ですが、あるとき、この「赤い線が動かせる」ことに気付きました(笑) 指でしゅるんと真ん中に移動させて下さい。読みやすくなりますから。
歩度測定で知りたい基本要素
高価なタイムグラファーには多くの要素を正確に測定する機能がある… はずですが、時計修理のプロでもない限り、そこまでの正確さは必要ありません。自力で歩度調整を行うとしても、正直、そこまでキワキワに追い込めるわけではないでしょう。ですから取っ掛かりとしてのデータはざっくりしたもので充分なのです。
と言うわけで、ここでは「4つの要素」をピックアップしてご説明します。私自身は普段からこれだけの情報で腕時計の健康状態を把握しています。
日差(RATE)
機械式時計の1日の進みや遅れ具合を示す数値。「1日あたり何秒ズレるか」で表現しています。使用状況や気候による影響を受けます。ムーブメントの標準スペックを大幅に下回る数値が現れたら、オーバーホールの出しどきかもしれません。
振り角(AMPLITUDE)
車輪のようなパーツ「転輪」とその中心に渡る「アーム」を総称して「テンプ」と呼びますが「振り角」とは、テンプが振り子のように動いた際の「振り幅(角度)」のことです。一般的には「270~320辺りが良好」とされています。
振り角が適切な範囲内でない場合は、進みや遅れが生じやすくなります。特に、振り角が小さすぎると、時計が遅れる傾向があります。
また、振り角が小さいと部品の負荷が増えたり、パワーリザーブが短くなったり、停止のリスクを抱え込むことにもなります。どれも動力の伝達不全が原因です (;´∀`)
片振り(BEAT ERROR)
テンプの振れは左右方向に均等であることが健康の証ですが、力点がズレてしまい左右どちらかに傾いてしまうと精度にも影響が出ます。「片振り」は数値としてその状態を把握するための項目で、近年の時計であれば「0.0~0.02辺りが良好」とされています。ヴィンテージであればこの指標は大幅に緩くなります。
振動数(PARAMETERS)
テンプが1時間、または1秒間に往復する運動(振動数)の値です。例えば、1秒間に「6振動」する場合、1時間では「21,600振動」と表現されます。現在の主流を占める「28,800振動」なら1秒間の単位で「8振動」です。1秒の間に8回もフルフルしてるわけです。忙しないですねぇ。一般的には高振動の方が精度において優勢、耐衝撃性も高いと言われています。
タイムグラファーに載せると、この数値だけはあっと言う間に表示されます。そこで初めて「これって6振動やったんや!!」と気付く場合も。ちなみに世の中には主流である「21,600振動」「28,800振動」以外にも多くの振動数が存在します。エル・プリメロでお馴染みの「36,000振動」。懐中時計で使われた「14,400振動(4振動)」。「18,000振動(5振動)」「19,800振動(5.5振動)」「25,200振動(7振動)」なんて半端な振動数もあるそうです。面白いですねぇ~ 色んな振動数で集めてみたい衝動が沸いてきて困ります(笑)
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「Watch Accuracy Meter」を使えば、これら要素の全てを確認することが可能です。実際、非常に良くできたアプリだと思います。自分の時計の歩度を測ってみたいけど、たまにしか使わないタイムグラファーに数万円も費やすのは勘弁して欲しいと考えるコレクターさんにとっては、これ以上の福音はないでしょうね。
ただ、注意すべき… というか、覚悟すべき点があります。スマホのマイクを使って時計の発する振動音を拾う性質上、どうしてもスマホに腕時計を密着させて使用する必要があるのです。要するに「帯磁の心配」が顕著なのです (;´∀`)
腕時計をスマホに近付ける行為は「NG」ではないのか??
はい、間違いなく「NG」です。とは言え普段の生活の中で、スマホなどのデジタル機器と腕時計が接触する機会は数え切れないほどあります。腕時計をはめたままノートパソコンで仕事をするだけで、帯磁したケースもあるそうです。
ちなみにスマホですと磁力が強い箇所は「スピーカー」と「ロジックボード」だそうです。5センチ離れた場所の方位磁石を反応させるほど、広い磁界を持っているとのこと。
とは言え、鞄の中にスマホと腕時計を入れて丸一日も放置したら「絶望」なのかと問われたら、そこまで深刻に考える必要はないと答えます。歩度に影響が出るレベルの帯磁には相当濃密な接触が必要だと思いますし、それで言うなら、会社のデスク周りで使うことの多いマグネット類の方がよほど脅威です。iPadのケースにもマグネットでフラップを固定する作りのものがありますから、間違っても腕時計を載せたりしないようにしましょう。
このように、現代に生きる我々はどこにいようと磁気に晒されているわけですし、極端に神経質になっても仕方ありません。個人的には「帯磁するときはする」と割り切って生活した方が気が楽だと思っています。
ですが、気になる方には気になる事態だと思いますので、心配であれば、スマホとの近接が必須である「Watch Accuracy Meter」の使用は断念すべきかもしれませんね (・_・;)
万が一、精度に影響があるほどの帯磁があったときは、市販の「磁気抜き」も頼りになりますよ。
※私が使っているのはこういうヤツです。安い!!
「Watch Accuracy Meter」で歩度を測りまくろう!!
先に断っておきますが、何となく「笑いの神が降りてくる」気がします(笑)
そもそも、時計の「状態」に神経質な人間は100本も同時に所持しません。「アルベルト・シュヴァイツァー氏」のような「慈愛とインテリジェンスを併せ持った人」ならば、愛と責任を以て面倒を見られる本数を把握できるのかもしれませんが…
そう言えば昔「アンタって男はホンマ、釣ったサカナにエサやらんよね~」なんて言われた記憶がありまして… まあ確かに、ほったらかしで可愛そうな時計が多いことは紛れもない事実。そんなこんなで、私の記憶で特に「ほったらかしな時計たち」の『健康診断』を行ってみたいと思います。果たして、どんな「無言の抗議」を見せてくれるのかしらん(汗)
ユンハンス マックス・ビル クロノスコープ(027/4600.00M)の歩度を測定
まあ、下手すりゃ半年に一回着けるかなぁ~って感じの「マックス・ビル クロノスコープ」。大学でコッテリとバウハウスを学んだ私にとってはある意味「特別枠の時計」なのですが… 地味ですからねぇ。購入からだいぶ経ちましたし、新しい時計たちに脇に追いやられている形です。
それでは参りましょう!!「実測!!」
日差プラス1秒!! なんやお前さん、隠れて修行でもしてたんかいな!! 片振りは少し大きいけれど、振り角「307°」は優秀です。エサやってへんのに… 健気やなぁ。
タイメックス マーリンジェット(tx-tw2v61900)の歩度を測定
中々に味のあるデザインが私好みだったのでポチッと行ってしまったタイメックス。ところがコレが… 物議を醸しそうなので伏せますが、ホント、色々あった時計です。
ですので、精度なんか全く期待していないわけですが、こういうのが案外クロノメーター級の数値を出しちゃったりするんじゃないのか?? みたいな昂りを捨てきれないまま「Watch Accuracy Meter」のスタートボタンを押しました。「実測!!」
振り角の計測が何度やってもエラーになりました(汗) 何だかもう… ズッタズタですね。赤い三角で表示された線が二本走っているのは、どうやら「片触りが顕著」であることを現しているそうです。予想通り、アカンやつやった~ (。ŏ﹏ŏ)
タイメックス M79(TW2U29500)の歩度を測定
懲りずにタイメックス!! どうなんだ!? スマッシュヒット作「Q TIMEX」の自動巻版としての面目は保てるのか!?
何だか嫌な予感がしますが…「実測!!」
さすがにそれほど酷いスコアにはなりませんでした。踏みとどまったな… タイメックス!!
日差は大きいですが、プラス側なのでまあ良しとしましょうよ。片振りも2本線まではいかずともって感じです。少なくとも私基準では、今すぐどうこうしなければならない状態ではないと判断しました。
オリエントスター ソメスサドルモデル(WZ0121DKFIX)の歩度を測定
シュリシュリと、リューズから伝わる挙動は良好な「オリエントスター」です。いやぁ~ コイツは大丈夫だと思うなぁ。根拠は無いけれど(笑)
それでは!!「実測!!」
プラス20秒かぁ…(汗) まあねぇ… 許す!! 猪木問答に例えるなら、私にとってこのオリスタは「野人・中西学選手」なのですよ。だから私も猪木さんに倣い「オメエはそれでいいや」と言うしかないのです。振り角はもうちょい欲しいですけどねぇ (;´Д`)
オリエントスター(WZ0151DA)の歩度を測定
「フランク?? コイツがあるからいらないよ!!」と言えたら、どんなに格好いいでしょうかね(笑) そこまでの時計ではありませんが、個人的には大好きです。トノー型として要素のバランスが良いのですよ。
まあ、何はともあれ…「実測!!」
ボロボロやないかい!!(笑) 特に振り角のヘタレっぷりが顕著で、当たり前のように片振れ、見事な二本線が出ています。日差も16秒。振り角が浅いので自力で歩度調整しても余り効果が無さそうなんですよねぇ…
セイコー 5(SNKM90KC SNKM90K1)の歩度を測定
何故か好きで、手放す気になれない「5」です。実際、作りは安っぽいんですよ。ところがダイヤルの細工など要所要所に見るべきところがあって、着けていると強烈に高見えするらしく評判が良い。ってなわけで、その「昭和のイケメン」みたいな風情に相応しいスコアに期待!!「実測!!」
出た出た!! 振り角の計測不能(笑) これまた美しい二本線ですこと。この凄まじい片振れに関係あるか解りませんが、ここで点数の低かった時計たちには「磁気除去」を施してみたいと思います。もしかしたら劇的に改善するかもですし (*´ω`*)
セイコー 5 ブルー アトラス(SKZ209JC)の歩度を測定
もう一本の「5」は「ブルー アトラス」です。さっきアマゾンで見たら18万円でした(笑) ありえません。所詮は「7S」ですからね。それでも買っちゃう人はいるのでしょう。まあ確かに、めっちゃ格好良い時計ではあります。
さあ、世界中の働く男たちが時間管理を託した「7S」の真の実力を見ようじゃないですか。それでは「実測!!」
平置きのみなので全く信用できませんが、それでも日差プラス2秒は大したものです。ただ、問題は振り角ですよねぇ… とは言え、コイツに関してはしばらくこのままで良さそうかも (*´ω`*)
ZEGATO(Z-BK6516)の歩度を測定
古参の読者の皆さま、お待たせしました!! 皆んなのアイドル「ZEGATO」の降臨です。1時間で5分も進む「時空を超越した時計・ZEGATO」。1日目で定革が切れた暴れん坊なZEGATOさんです。魅せてくれるでしょう!! そのエキセントリックな存在感で!! では「実測!!」
私は今、夢を見ているのか(笑) だってZEGATOですよ?? ZEGATOなのに日差0秒?? 振り角が少し浅いですし片振れもありますが、何と言っても昇竜の如き美しい直線です。いやホンマに、界王拳でも身に付けたんやろか??(笑)
この時点で、このアプリに対する信頼がガクッと急降下しました(笑) いや、何かしらカラクリがある気がするなぁ~ (;´Д`)
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最後に… お楽しみいただけましたか(笑)
私個人としてはかなり楽しんで書くことができました。全く手をかけていないにも関わらず優秀な成績で「健康アピール」してくれた時計もあれば、案の定、情けないスコアを吐き出した時計もありました。
ウチにはそれこそ2万円くらいの中国製タイムグラファーがありますが、厳密な精度を云々するならそういった専用の機械を使うべきだと思います。今回ご紹介したスマホアプリ「Watch Accuracy Meter」は、体温計を脇に挟むのではなく、おでこに手を当てて「熱あるね~」と判断するのに似ています。風邪症状があっておでこが熱ければ病院に連れていきますよね?? 時計のお医者さんに駆け込む目安を知りたいということであれば「Watch Accuracy Meter」はとても頼りになるアプリです。
当たり前のことですが、正規であれ並行であれ、新品として購入した個体の方が総じて良いスコアを出します。要するに、後々の健康状態にまで神経を尖らせるのであれば、腕時計購入は「新品に限る」ということ。やはり組み立て段階で施された調整こそが最良の状態で、中古販売の個体のように販売店ルートでメンテナンスが行われたとしても、易々とは超えられない精度の壁があるのでしょう。
実際、OHに出したら不具合を抱えて帰ってきたという話は珍しくありませんし「不正規メンテナンス」のリスクは必ずあります。ただ、正規の技術者を遙かに超える能力を持った「街の技術者さん」が存在するのも事実。結局は個人個人が情報収集に努め、リスクを承知した上で利用するのが「街修理」であり「中古腕時計」なのでしょう。安さを求めるならそれなりの覚悟は必要です (´・д・`)
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それにしても…「だから機械式腕時計は面白い」ってことになるのですが、まるで個性を持った「生命」ですよね。使ってもらえないという、腕時計にとっては最大の「不遇」を乗り越え、或いはど根性で踏みとどまって優秀なスコアを叩き出した時計たちを見て、心からそう思いました。お前たちの魂、確かに見た!! 同時に大いに反省中です(汗)
それにしても…「ZEGATO」です。 何せ第一印象がアレでしたから、今回の不似合いな高評価にも懐疑的な目を向けてしまう私。ってなわけでもう一度、計測し直してみます。次も高性能だったら、ZEGATOに対する考え方を改めなくちゃ!!
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やっぱりお前はZEGATOだったな(笑)
※今更な記事で恐縮ですが(笑)
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