もうかれこれ通算で何十年「腕時計趣味」を続けてきたのか… 正直、数える気も起きないくらい長大な話になるので止めておきますが、何度も興味を失い、もう二度と戻ることはないと覚悟を決めてコレクションを精算しても、きっかけさえあれば何度でも復活してしまうのが「腕時計趣味の真に恐ろしい性質」です (;´∀`)
復活の一番のきっかけは「未知への未練」だったかもしれません。腕時計趣味に「十分やりきったから」と区切りを付けたつもりが、ふとしたことから「そう言えば、あのタイプの時計って使ったことなかったな」と思い返すことが幾度もありました。知らないものは肯定も否定もできない。私みたいな「何でもかんでも分析したい男」にとって、それって凄く悩ましいことなのです。
そうなると「完全燃焼ではなかった」ことがどうにも歯痒くなって、無性にリマッチを仕掛けたくなってしまいます。次こそは己の全てを出し切り、完璧なフィナーレを迎えてやる… でなければ、腕時計に費やした資金も時間も、全てが無駄になってしまうではないか… 思い返せば私の「腕時計趣味復活劇」は、この様なある種の「異様な勤勉さ」が根底にあったような気がします。深刻に考えちゃうタチなんですよ。
例えば、今を以て腕時計趣味に終止符を打ったとしましょう。あるんですよ今回も。「やりきった」とは言えない「心残り」が… だってワタクシ「トゥールビヨン」を知らないんですもん。腕時計趣味人なら誰もが憧れる「トゥールビヨン」。知らないままで辞めたら、もの凄く中途半端な時計人生になってしまう気がして… (;´Д`)
赤坂の高級ラウンジで『東海時計商事』さんのイベントがありました
昨年の晩秋のことですが、赤坂の某所で行われた「東海時計商事株式会社」さんのイベントに招待されて行って参りました。前回の青山ではカジュアルな会場でしたが、このイベントで選ばれたのは「超ゴージャスなラウンジ」。スリットドレスを着たお姉さんが出てきそうなスゴい場所でした。この振り幅よ(笑)
ちなみに「東海時計商事」さんとの縁を結んでくれたのは、私が書いた一本の記事でした。
これを読んでくださった東海時計の広報の方がコンタクトを取って下さって、そこからです。私が声掛けした腕時計仲間たちを巻き込む形で、いつしか「東海時計主催イベント」を中心にしたコミュニティーが誕生。赤坂のイベントはその第二弾ということになります。
赤坂でも私が拝見したかったブランドの一番手はやはり「ヴェネチアニコ」でした。前回拝見した日からそれほど時間は経っていないはずでしたが、新たに入荷したモデルや見たこともないモデルが増えていました(笑) 面白すぎるぞ!! ヴェネチアニコ (*´∀`*)
ってなわけで、新たに見ることができた「ヴェネチアニコ」の紹介は… ここでは止めておきます。すでに書かせていただいたコチラの記事に追記させていただく予定です。
赤坂のイベントは2日間に及ぶものでしたが、初日に伺った私はイマイチ注意力が散漫で… いや、違うな。「欲しいものがありすぎて何も買えない」という典型的な状況に追い込まれまして(汗) 2本購入した前回とは異なり、手ぶらで会場を後にすることになりました。ホンマに… エラい敗北感ですわ。
赤坂の「2日目」で『思いがけない時計』と出会う
私は「昭和の生まれ」ですし、義理と人情を計りにかけるなら「義理に重きを置きたい」タイプです。昭和の大人はみんなそんな感じでしたから、子どもの頃から「唐獅子牡丹的価値観」に毒されていたのかもしれません (;´∀`)
ですので、こう言ったイベントに招待されると「何か買わなくちゃ!!」と義理堅く思っちゃうのですが、それもあって1日目の心残りを引きずる形で、2日目の再訪となりました。何やら予感がするでしょ??(笑)
この日のお目当てもやはり「ヴェネチアニコ」でした。ダイバーズの「ネレイデ」で欲しいものが幾つかありましたし、ドレスラインの「レデントーレ」にも「これは使えるなぁ」と食指が動いた時計が幾つもありました。何せ「手ごろな価格」であることが一番です。普段なら躊躇してしまいがちの「冒険枠」であっても、ヴェネチアニコくらいのお値段なら「思い切って行ったろかい!!」となりますからね!! (*´∀`*)
ですから出費するにしても「最大で15万円くらい」で収まるだろうと高を括っていたわけですが… こう言うときですよ。何かを試すかのような提案がなされるのは。
初日同様、ヴェネチアニコを陳列する一角に陣取って物色を始めた私でしたが、そこに東海時計商事の某氏が声を掛けて下さいました。「2日連続で失礼します~」「いえいえ大歓迎です~」そんなやりとりでした。そして、ヴェネチアニコで気になっている「GMTのネレイデ」辺りを中心に話は弾みました。
このとき、唐突に「これ、見てくれましたか??」と手渡された時計がありましたが、それは少し前、LINEグループを通じて「こんなのも持って行きます!!」と写真を見せられた「目に毒な一本」でした。いやいや、買えるわけないですがな(泣)
ところが値札(最終決定の上代ではなかった)を見て唖然。え?? この時計って「50万円もしない」のですか??(ウソン)
初遭遇「IDEAL KNIGHT(アイデアル ナイト)」
それは「純中国製」を旗印に、独創的なデザインの時計を作っている「IDEAL KNIGHT(アイデアル ナイト)」のBlue Earth Series(ブルーアースシリーズ)『サスペンデッドトゥールビヨン』でした。いやちょっと!! 50万円以下のトゥールビヨンですか!? 見せかけじゃないですよね??
安さには驚きましたが、この時点に関して言えばワタクシの「購入判定ゲージ」はそれほど上昇していなかったと思います。そっか… 中華ビヨンなのかぁ… デザインはオリジナリティーがあってかなりのものだけど、そっか… 中華ビヨンなぁ… そんな感じです。
この反応自体、自分が如何に俗物であるかを物語るものだったと思います。ブランドや生産国の冠を外した状態で腕時計の「本質的な価値」を見ようとしないのであれば、そんな腕時計趣味は「まやかし」に過ぎないですからね。
直後に間髪入れず、もう一つの「トゥールビヨン」モデルを見せていただきました。あ、ヤバい!! こっちの方が好きかもしれない!! それが「War Armour Series(ウォーアーマー シリーズ)」。
裏表スケスケから見えるムーブメントは「ツインバレル仕様」そして「トゥールビヨン」… ってかこれ、ブリッジが見えないから…「フライング トゥールビヨン」!?
そんなこんなで、すでに私の脳裏から「中華ビヨン」に対するマイナスイメージは消え去りつつありましたが、東海時計商事の某氏が放った一言が極めつけでした。
「GPHGにエントリーされたモデルですよ!!」と。
2022年GPHG「メンズ・コンプリケーション部門」エントリーモデル
「え?え?? 何年のGPHGですか??」そこからすぐに正確な情報には行き着けず「詳細は闇の中」みたいな感じでしたが、伊達や酔狂で口に出して良い「GPHG」ではありません。探せばきっとあるはず… あった!!
一番左の列の上から4段目… 2022年の「MEN’S COMPLICATION(メンズ・コンプリケーション)部門」のエントリー枠に、錚々たる時計たちと並んで確かにありました。惜しくも各部門6本ずつの最終エントリーには残れなかったようですが「GPHGで腕試ししてやるぜ!!」 という気概はひしひしと伝わってきました。
そもそも「GPHG」の何がスゴいのか??
「ジュネーブ時計グランプリ(Grand Prix d’Horlogerie de Genève 略称GPHG)」は2001年に創設された「時計アワード」です。スイス時計偏重を良しとせず、賞を選考するアカデミー会員には時計産業の関係者だけではない幅広い知識人、ジャーナリストやコレクターなどが含まれていることからも「世界中から真に面白い時計を選ぼう」という姿勢が伝わってきます。
そして、その選考経過が極めてクリアであることも「GPHG」の評価を高めています。ブランド自身がエントリー意志を示したモデルであっても、会員が推薦しなければエントリーすらできません。要するにエントリー自体が「至難の業」なのです。
エントリーされた時計に対し、アカデミー会員の中から選ばれたメンバーが「無記名の投票」を行うことで「各部門賞が決定」します。談合めいた不正が不可能とまでは言えませんが、時計アワードの中では圧倒的な「透明性を保っている」と言われています。だからこその「権威」です。伊達に「時計界のアカデミー賞」などとは呼ばれていません。
そんな「GPHG」にエントリーするだけでも大したものです。GPHG会員にしてみれば、怪しい時計の推薦は自らの信用と権威を失墜させる行為。エントリーの事実は、アイデアル ナイト「ウォーアーマー」が「GPHGの庭」に足を踏み入れてもおかしくない時計であるとの「お墨付き」と考えて間違いはないでしょう。「中華ビヨンの快挙」ですよ。
参考までに「GPHG」2022年「メンズ・コンプリケーション部門」で最終ノミネートに選ばれたのは以下の6本でした。
- Armin Strom「Orbit Manufacture Edition」
- Audemars Piguet「Code 11.59 by Audemars Piguet Tourbillon Openworked」
- Bovet 1822「Virtuoso V」
- Hermès「Arceau Le temps voyageur」
- Parmigiani Fleurier「Tonda PF GMT Rattrapante」
- Singer Reimagined「Barista」
このメンツに混じって選ばれたら逆に怪しいわ!!(笑) でもですよ。ここに並んでエントリーしていたわけですからね。私も腕時計趣味人の一人として、その事実はしっかり受け止めるべきだと思いました。
聞き慣れないブランド名がありますので今調べましたら、この「Singer Reimagined」ってオリジナリティーの高い良い時計作りますねぇ。完全にノーマークでした。もう少し調べてみようかなぁ… うわっ 高ぇ… (;´Д`)
アイデアル ナイト「War Armour(ウォーアーマー)」を買ってみることにしました!!
私は普通のサラリーマンです。お金持ちでも何でもない「100円ローソンでカット野菜買っちゃう」ような一般人に過ぎません。ですからSNSで「いいね」を集めまくるような「キラキラした時計」とは金輪際、無縁の生活を送っているわけでして…
そのこと自体は悲しむべきことかもしれませんが、反面、その現実の範疇… 限られた条件の中で面白い時計を味わってやろうと、知恵だけは絞ってやってきました。その結果として「カオスなコレクション」を持つに至ったわけですが… (;´Д`)
また困ったことに、私は生粋の「関西人」でもあります。誰かさんに凄いですね!! 素敵ですね!! と言われるよりも遥かに「ウケたい」「ツッコまれたい」という欲求が勝るのです。ですから腕時計購入時に「これはコミック部門だな」と思いながら購入した時計も1本や2本ではありません。笑わせたいんですよ。「何でコレ買ったんや!?」とか言わせたいんですよ。変態ですかね??
他には…「チャレンジ部門」ってのもありますね。ちょっとだけ勇気が必要な選択。一か八か、のるかそるかの大博打… まあ、実際はそこまで大仰な話ではありませんが、すでに評価の定まっているプロダクトばかりに目を向けていると「感性の停滞」を感じることが少なくありません。そこで意識的に「挑戦的な時計」に目を向けることで、自分自身のマインドを撹拌し「センスを活性化」させるのです。
古今東西、どんな趣味でも同じかもしれませんが、自分自身の予測を超えてこその面白さじゃないですか?? ジャンボ鶴田氏も言ってましたよ「人生はチャレンジだ!!」と。
ってなわけで、アイデアル ナイトのトゥールビヨン「ウォーアーマー」を買ってみることにしました。2024年最後の「私的チャレンジ部門」エントリーです(笑)
東洋的で「シンメトリックなトータルデザイン」が印象に残る
完全な左右対称形状「シンメトリック・デザイン」を用いた意匠です。欧州の美術がアシンメトリックな構図を発達させてきたのに対して、日本を含めた東洋には「左右対称」を重んじる歴史があります。完全な左右対称は完全な精神性、或いは完全な存在にも繋がるため、東アジアの民族はそこに「神」を見出そうとしてきました。リューズをツノクロノ的な12時位置に配置したことで、全体の神秘的な統一感が強調されていると思います。
ただ、美しいトータル シンメトリーを目指したが故の「反動」もあります。「12時位置のリューズ操作」にちょっとした「コツが必要」なのです。
付属のステンレス ブレスレットを付けたとき、その傾向は顕著になります。確かに、3時位置にリューズがあったとしたら、完成度にとって「汚点」になっていたことは間違いありません。この辺りは、今後の評価の分かれるところだと思いますね。
とは言え、これまで中国のオリジナルプロダクトには、西欧的、日本的なデザインを深く解釈しないまま借用しているものが少なくありませんでした。確固たる方向性を持たない故に明らかな「後付け要素」が見られることも多い。そのカオスな状況自体に「中国っぽさ」を感じさせてしまう現実は、もしかすると変わりつつあるのかもしれません (*´∀`*)
「ウォーアーマー」を観察して思いましたが、これまでの中国製に多かったカオスさが消え「どこに着地したいのかが見えるデザイン」が完成しつつあります。デザインの肝である「余白の美学」についても、会得しつつあるのではないでしょうか??
呼称に統一性を欠くも、良くできた「フライング・トゥールビヨン」搭載
まずは「トゥールビヨン」についてお話します。簡単に言えば、装着した腕を上げたり下げたり、横にやったり振り回したりという「姿勢差」を随時制御する機構のことです。脱進機と関連機構を丸ごと360度連続的に回転させることで姿勢状態によるエラーを相殺しようというトンデモない発想。天才時計師「アブラアン・ルイ・ブレゲ」師匠が生み出したとされています。
それにしても… GPHG参加のブランドとは思えぬほど「情報が少ない」アイデアル ナイトさん。それでも頑張って散逸する情報を集めると、トゥールビヨンの仕様に関する記述が「フローティング」だったり「サスペンデッド(吊り下げ式)」だったり、ブレブレなのが気になりました。この辺なんですよ。怪しさを醸しちゃうのは (;´∀`)
ただ、ムーブメント「Cal.P6805」自体はとても美しく構造にも一定の美学が感じられます。「キャリッジの浮遊感を出すために苦労しました」という言及も見付けましたので、細かい部品などはサプライヤーに頼っている可能性が高いものの、地板や受け板、部品点数を減らす努力などが行われた「半自社製ムーブメント」という言い方はできるかもしれません。
※この辺のモヤモヤを解消したくて、東海時計さんにお願いして情報を集めてもらっているところです。明らかになった時点で追記させていただきます。
機能性よりも『魅せる』ための「ツインバレル」仕様
デザインの特徴的な部分を担う要素でもある「ツインバレル」。さぞやパワーリザーブが稼げるだろうと思ったら…トータルでたったの「40時間」ですよ(笑) これはアレですね。「魅せる」ための仕掛けなんだと思うことにします。
とは言え、リューズを巻く動作で2つのバレルに回転力が伝達する様子は圧巻です。ちゃんと機能しています。腕時計好きなら間違いなく「ゴージャスな気持ち」になれるはず。40時間ですけれど(笑)
視認性に最大限配慮した構造を持つ「ケース」
未来的な「316Lステンレススチール」製のケースは丁寧に磨かれており、トゥールビヨンを格納するに相応しいクラス感を感じさせます。意外と言っては失礼ですが、隙のない良い仕事してます。
見応えのあるムーブメントを存分に鑑賞させる仕掛けとして、ムーブメントは12時側を高く「15度傾斜」させて組み込まれています。それに応じてダイヤル面にも同様の傾斜が付いており、これがこのケース最大の特徴となっています。弓形に成形されたサファイアトップの透明度も高く、お陰で視認性も抜群。視認性と言っても「内部機構の視認性」のことですけどね(笑)
この見た目で「50メートル」を確保した「防水性」も評価できます。小雨くらいなら問題なく使えるはずですし (*´∀`*)
老眼の人は注意!! 超絶小さい「ダイヤル」
時刻の視認性に関しては… 厳しいです。特に老眼に苦しむ我が身的にはそんな感じです。だって、2針のサブダイヤルがめちゃめちゃ小さいんですもん(汗) しかも、ダイヤル素材が「クリスタル」なので後ろもスケスケ。これはアレですね。老眼世代への挑戦状ですよ!! (;´Д`)
とは言え、そもそもこう言った趣味性の高い時計は「視認性云々」で評価するものではありません。数千万円の超高級腕時計にだって「視認性を無視した逸品」が幾らでも存在しますからね。
因みに謎の拘りポイントがあります。主ダイヤルのインデックスが「ガラスチューブに閉じ込めたトリチウムガス」なのです。24時間365日ぬぼ~っと光るトリチウムのアレ。視認性を少しでも担保するための配慮かしら??
穴石の配置はキレイですね。クリスタルを通して見る受け板の浮遊感がまるで「謎の空中都市」のようです。贅沢を言えば、ネジを焼いて欲しかったかも?? いや、それはそれで嫌らしくなりそうですね(笑)
非常に出来の良い「ブレスレット」と、裏面がラバー処理された「レザー ストラップ」が付いてくる!!
イベントで拝見した際は「レザーストラップ」が付いていました。皮革とラバーがフュージョンしたそれは、夏季の汗問題を回避するためのものであることは明らかでした。この配慮は要するに、この時計を「トゥールビヨンとは言え、普段使いして欲しい」というアイデアル ナイトさんのメッセージ。やるじゃねぇか… ニクいぜ!! アイデアル ナイト!! (*´∀`*)
さらに感心したのは、もう一本の「ステンレス ブレスレット」です。出来が良い!! いや、控えめに見てもかなりの逸品に仕上がっていると思います。やばいなぁ… ブレスとかバックルとか、その辺りで肉薄されると追い越されるのもあっと言う間ですよ。日本の腕時計は大丈夫かなぁ??
高級モデルの証「シリアルナンバーの刻印」あり
「固有の番号」が割り振られています。これにより時計の「真正性」を確認することができますが、この発想自体に中国腕時計産業の成長を感じます。製品に自信と誇りがあるなら「偽物を排除したい」と考えるのは当然です。
素材の安全性にも配慮
アイデアル ナイトのブランドの公式は、時計に使われる素材は欧州連合やその他の国の「基準を満たしたもの」であるとアナウンスしています。消費者の信頼を得るために、疎かにしてはいけない大切な取り組みです。中国製はこう言うところから「世界の信頼」を獲得して欲しいですね。
購入直後の「間違い探し」
「ウォーアーマー」が手元にやってきた時点で、私もアレ!? と気付いていた部分ですが、実は最初に見たGPHGエントリー時点の画像と、手元の実機の状態には明らかな違いがありました。すでに差し替わっているようでGPHG公式では確認できませんが、確か、テンワにチラネジが付いていたはずです。ところが実機にそんなものはありません。当然ながら「ああ… チラネジ無くなってるぅ」と一頻り切ない気持ちを味わいました(チラネジ好きの反応)
そもそも流布している画像の多くはCG、或いはCGと実写のハイブリッドの可能性が高く「チラネジ盛っといたれ」みたいなノリで足された可能性もあります。緩急針もあったり無かったり (;´∀`)
腕時計好きは正確な情報を好む生き物ですし、正確な情報の積み重ねこそが「歴史を作る」のです。面白い時計を作っているのは間違いありませんから、ブランディングにも本気を出して欲しいところです。
ばら撒かれた画像と実物の差異について細かい指摘をしてくれたのは、某所に在籍する若い時計技術者さんでした。それ自体は「マニアックな間違い探し」のようでワチャワチャと楽しく拝聴できましたが、ほとんどの消費者にとってこの辺のモヤモヤは邪魔なだけ。折角「GPHG」で取っ掛かりが生まれたわけですから、腕利きのコーディネーターを雇ってでも、ブランドの周辺情報を整理すべきでしょう。
アイデアル ナイトが「真の中国製」を強調する意味
世界中の腕時計メーカーに安定して部品を供給し続ける「頼れる中国」。反面、模造品の一大生産地としての「闇の一面」があることも厳然たる事実です。これは実際、誉められた話ではありません。
例えば昨今、巷に溢れる「真贋判定が困難なレベルの偽物」を作る優れたノウハウがあるのならば、最初から「完全オリジナルの中国メイド」を作って「現代中国のモノ作りの何たるか」を世界に問うべきだと思っているのは、私だけではないでしょう。
アイデアル ナイトが「ウォーアーマー」でGPHGにエントリー出来たという事実は、そんな中国生産業の意識を大きく変化させるかもしれません。高品質・高信頼・高オリジナリティーで高い付加価値を得られるのであれば、他所さまのデザインを拝借したり、あまつさえ「コピー品製造」なんかに手を染める必要がなくなるからです。
すると何が起きるでしょうか?? 要するに中国のモノ作りに「本物のプライド」が生まれるのです。中国の技術者一人一人の気持ちになってみれば解りますが、トゥールビヨンを組み立てることのできるレベルの彼らが、自社の製品や技術を声高に叫べないのは、未だ拭い去れない闇の部分が中国に色濃く残っているからです。そこに忸怩たる想いを抱えている技術者は、一人や二人ではないでしょう。
GPHGがアイデアル ナイトの参加を認めた背景に何があるかは解りませんが、中国のプロダクトが「中国製」であることを「価値観の柱」に据えることができるよう、中国腕時計業界の進化を後押しする意味合いもあるような気がします。本場スイスにしても、中国のメーカーはそのくらい侮れなくなってきているのでしょう。GPHGが中国の時計産業に求める「フェーズ2」はすぐそこまで来ているのかもしれません (*´ω`*)
目の前で起きていることを知るために買う「中華ビヨン」の筆頭
未だに「安かろう悪かろう」で中国製品を見ている方も少なくありませんが、今一度、冷静に現実を見てみましょう。作れますか?? 今の日本の腕時計メーカーに、50万円の上代で利益を出せるトゥールビヨンが。
「中華ビヨンを載せたら余裕」ってそれじゃ心臓部は中国製ってことになります。純粋な「日本製」として「ツインバレルのフライング トゥールビヨン」が作れるかって話なのです。
ここまで書いて、自分自身がゾッとしました。
各国時計産業の厳しい要求に応じることで研鑽を積み、無理難題に結果を出してきた中国の腕時計産業。そこには世界で唯一、世界中の先端技術、最新のノウハウが集結している。それを貪欲に学んできた中国の技術は、今やとんでもないことになっているかもしれないわけで…
「所詮は中国のやることでしょ??」なんて余裕を決めていたら、気が付けば欧州と日本の腕時計メーカーが中国の下風に立たされていた… 何てことも起きかねない状況なのです。
そもそも中国の彫金技術は歴史も古く、腕時計製造が発達する素地はあったのです。腕時計先進国の愛好家たる私たちがやるべきは、今、目の前で現実に起きている変化を真摯に受け止めることでしょう。そのことで傷付くプライドがあるかもしれませんが、権威あるアワードに「ウォーアーマー」のエントリーを許した「GPHG」は、いち早くそのことに気付いたのだと思います。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」は古代中国の諺ですが、目の前の現実から顔を背けていたら「出る杭すら打てない」ではないですか?? まずは成長著しい中国の腕時計を「丸裸」にするためにもお金を払い「買って」「使い倒して」みたいと思う私です (*´∀`*)
最後に…「東海時計商事さん扱い」でなかったら、買ってなかったでしょうねぇ
「GPHGの権威」とやらに屈した面は確かにあります。悔しいけれどそれは間違いなくありました。そうでなかったら、購入を検討するところまでもいかなかったかもしれません。そもそもちゃんと手にとって見たかどうかも怪しい… (;´Д`)
もう一つ、最終的に私が「購入」まで突っ走った最大の理由は「東海時計商事」さんという受け皿があったからです。決して安くはない時計ですからね。しかも「超複雑」なトゥールビヨンですもの。どこかで必ず起きるであろう「不具合」にきちんと対応してくれる窓口が不可欠であることは明白でした。信頼できる東海時計さんであれば、そこに何の心配もありません。
今回、2024年最後の「私的チャレンジ部門」として購入したアイデアル ナイトの「ウォーアーマー」は、様々な意味で私の今後の腕時計人生に変化をもたらしてくれるかもしれません。「探求し続ける姿勢」を絶やさず、腕時計趣味をより豊かにするために必要な「偏見との離別」を達成するには、それこそ「最高の教材」かもしれないからです。
正直、自分自身の中に、このような「チャレンジする若い気持ち」が残っていたことに驚いた今回の購入でしたが、同時に「10年後の未来が楽しみな時計」だったりもします。その頃には「アジアのトップラグジュアリーブランドの時計を持っているよ!!」と言えるようになっていたりするのかも?? どうします??「アジアのリシャール」みたいに言われ始めたら(笑)
IDEAL KNIGHT War Armour Series 仕様 | |
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モデル | War Armour(Battle Armor) |
ケース径 | 43mm |
ケース厚 | 13.5mm |
ケース素材 | 316Lステンレス |
防水性 | 50m |
ムーブメント | Cal.P6805(手巻き)2万8800振動/時 40時間パワーリザーブ |
風防 | サファイアクリスタル |
ストラップ | レザー&ラバー混合ストラップとステンレスブレスレットが付属 |
※追記
まあ何しろ確かな情報が少ない(笑) 下手すればこの記事が数少ない資料にもなりかねない勢いです。東海時計商事さんを通じて幾つかの不明点をメーカーに問い合わせもらっていますので、新たな情報が入り次第、こちらの記事も更新していきたいと思います。
撮影環境:Sony α6700 & FE 70-200mm F4 Macro G OSS II(大判LED照明2灯 三脚使用)
ご意見・ご感想
コメント一覧 (4件)
とんでもない金額がしそう雰囲気をまとった
時計ですね!w
メタルブレスは柔軟な感じがして装着感良さそうです!
バックル裏はもしかしてペルラージュになってるんですかね?
いずれにしても細部まで作り込まれていている時計ですね。
何千万、何百万クラスの腕時計を日常でガシガシ使うのは
多少気を使うと思うので、トゥールビヨンを日常使いできる
という意味でも貴重な腕時計って感じがしますね!
複雑機構は男の夢です!
Y太さま、コメントありがとうございます♬
「瞬間最大高見え性能」はスゴい時計です(笑)
ブレスの出来にはビックリしました。
バックルにペルラージュを施す念の入りようです。
ケースの仕上げも一定水準に届いていますし、輪列を工夫したムーブメントも見応えがあります。
キャリッジのパーツは恐らく使い回しではないかと。
この辺りをプレスではなく削り出しで作ると数百万円は下らなくなると思いますので、
これはこれで良いのだと納得しています(笑)
仕事場にも何度か着けていきましたが、気兼ねなしに過ごせました。
ビビらないで良いトゥールビヨンは貴重です。
男の夢が叶いました(*´∀`*)
トゥールビヨンで宇宙の深淵の如き世界に足を踏み入れたのですね。
翻って私はスピードマスターやEXⅡも我物として使いこなせませんでした。
羨ましくも尊敬します。
モトアラカンさま、コメントありがとうございます♬
高級ブランドのトゥールビヨンなんて3回生まれ変わっても買えそうにありませんが、
この辺りであれば何とかって感じです。
使いこなしで言うと… どうなんでしょ??
持ってるだけで幸せ枠なのかもしれません。
「我が物にする」という視点、面白いですね。
その視点で俯瞰するとウチの時計たちは…(汗)