納品されたクロノトウキョウ「2024 ANNIVERSARY REIWA」をデザイナーの端くれとして「分析」してみた


 念願のクロノトウキョウ「2024 ANNIVERSARY REIWA」が納品されましたので、謹んでご報告したいと思います。今回は余計なことは一切書かず、極力短く要点だけまとめてお届けする所存。目標は3000字です!!(それでも標準的なブログよりは長文ですが…)

青山サロンさん。外はカンカン照りでした

 ちなみに納品開始の報が帰省のタイミングとかち合ったため、私としては珍しく時間を置いてから青山サロンさん(クロノトウキョウのブティック)に赴きました。待ち切れない気持ちを抑えて抑えて、ようやくのお出迎えですからね。そりゃあ喜びもひとしおでございます (*´∀`*)

 とまあ、こういった「感想」を書いちゃうから長くなるんですよ。終わり!! 私の気持ちはここまで!!(笑)

待望の納品で気が大きくなった私。ちょっとお高いカフェで喜びを噛み締め(笑)
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クロノトウキョウ「開封の儀」はいつものお店で(笑)

 外苑前の青山サロンさんまで時計を受け取りに行ったなら、表参道の「H°M’S” WatchStore」までは足を伸ばしますよね?? ゆる〜く歩いて10分掛かるか掛からないかの距離なんですもん。ここまでやって来て顔を出さないってのも礼儀に反するなぁ〜と思うわけですよ。昭和のオッサンはこの辺の義理人情にうるさいですから。

 となると、購入したばかりの時計だって見てもらわなくちゃいけません。いや、いけないことはありませんが、まあ、見せたいわけですよ(笑) ってなわけで、半ば当たり前のように「クロノトウキョウの開封はH°M’S” WatchStoreで!!」みたいなスタンダードが完成。

 「他所で買った時計を開封するとか何なんですか!?」な〜んて言われちゃいますけど、こういうのを思い出に残る「プチイベント」に昇華させてくれるのがHMSさんというお店なんです。普通「動画撮りましょうか??」みたいなこと、ノリノリで言ってくれます?? あのお店は愛しているんですよ。腕時計全般を (*´∀`*)

粛々と進むクロノトウキョウ「2024 ANNIVERSARY REIWA」開封

 ってなわけで、迷惑のようなお約束のような「儀式」を執り行います。粛々と~粛々と~

夏の元気なご挨拶~♫

 風呂敷に包まれたそれは、どう見ても「お中元」。しまったー!! 和服でキメてくるべきだったか!!(笑)

包みを解放すると… 最高級昆布!?(笑)

料亭で使われる羅臼の最高級昆布か…
はたまた高級そうめん揖保乃糸か…

 まさか、こう来るとは思いませんでした。やられた〜(笑) これは外国の方が大喜びしちゃいますねぇ。

封蝋で吹き出しました(笑)

 木製の蓋を開けるといつもの光景が広がっていました。そそ、鳥の巣みたいなこの感じですよ。真っ赤な封蝋に感じる中二病的ニュアンスにもゾクゾクします(笑)

やっとこ時計の箱にアクセス

 で、これが時計が収納されたケース本体です。開けると…

キタキタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 おお!! キレイ!! 早く、早く養生を剥かせて!!(むきむき)

コレはたまんないですね~ (*´ω`*)

 遂に… 遂にお迎えできました!!「REIWA」の最終モデル。ああ~ これは満足度高いですなぁ~

今回もストラップは換装するしか…(4本目)

 自宅に帰ってじっくりと「2024 ANNIVERSARY REIWA」を眺めて楽しみました。お酒が飲めない私はクラフトジンジャーエールで乾杯。ようこそ我が時計要塞へ。今日からここが君の任地だ。まあ、肩の力を抜いて気楽にしたまえ(グビグビ)

 それにしても… です。やはり今回も「ストラップ」は明らかな力不足を露呈していました。ダイヤルの鮮やかなラピスグリーンに合わせる形でコバ部分にインクを乗せたりはしているものの、そもそものレザーの質感が弱過ぎる。安っぽいとかそういうことではなく、とにかく「弱い」。魅力的な時計本体の足を引っ張っているんです。泣いている… 時計が泣いている!! ということで、これまでに購入した「クロノトウキョウ3本」全てのストラップを交換している私。その辺の経緯はコチラにも書かせていただきましたっけ。

 ストラップは時計のオマケではありません。素晴らしい時計を生かすも殺すも「ストラップ次第」なのです。良いストラップを付ければ時計の輪郭がキュッと締まって見えますし、逆にダメなストラップを付けると時計の印象がぼやけて情けなく見えることもあります。時計本体の実像を際立たせるためには、ある程度のクオリティーを持ったストラップが必要なのです。

 次の日、何かにせき立てられるように「駆け込み寺」へ向かった私。私が所有する全てのクロノトウキョウでストラップをお願いした「松下庵」さんへ赴きました。一刻も早く「私好みのストラップ」に換装して「REIWA 最終モデルの真の姿」を拝みたかったからです (;´Д`)

これがプロの発想か!! 高難易度技「色相ずらしの妙」

 松下庵さんへ赴くまでに、ある程度は自分の中で「方向性」は決めていました。基本的に何を選んでも標準装備のストラップよりは良くなるでしょうから、そこは全く心配していません。問題があるとすれば「2024 ANNIVERSARY REIWA」を彩る鮮やかな「ラピスグリーン」を差し色に使うか否か。

 まあ、考えても無ければしょうがありません。無い場合はダイヤル中央部に併せて光沢のあるブラックでシックに。或いは同じ色相系のブルー或いはグリーンで派手に。その二択ではないかと考えていました。もう一つ案があるとすれば完全な「外し色」。黒でも緑系でもない色を敢えてチョイスしても面白いかもしれません。

このままオリジナルのストラップでも良いと思いますよ?? ただ…

 ところが、松下庵さんの提案はそのどれとも違いました。予想もしなかったグリーン系の「色相ずらし」が私の目の前にやってきたのです。また難易度の高いものを出してきたなぁ〜と (;´∀`)

折角のクロノトウキョウですし、もっと上質なストラップとバディを組ませてやりたいじゃないですか (;´∀`)

 私は30年以上の業務歴を持つプロのデザイナーでもありますので、色の組み合わせにおける「安パイ」に縋る傾向があります。要するに怖くて「色で冒険できない」のです(失敗すると失職しかねないスレスレでやってきましたので) ところが、松下庵さんから敢えて同系色「色相ずらし」のご提案。しかも彩度高めで生っぽい色。これにはかなりビックリしました。ぶっちゃけ「アンタ無茶しおって!!」と思いましたよ (;´∀`)

この厚み、この造型の確かさ!!

 ところが平面で見る色と、何かの素材に塗られて発色する色は全然違うんですね。素材の持つニュアンス(テクスチャー)で包容力を増したグリーンが時計のダイヤルを鮮烈に縁取るラピスグリーンを完璧に受け止め、尚且つ見事に共鳴しているではないですか!? ストラップに関してはいきなり「大正解」を提案していただきました。この成功体験があるから、誰しもが松下庵に頼っちゃうんだな。きっと (*´ω`*)

心を震わせるステッチの力強さ!!
定革、遊革の存在感!!
これがッ! これがッ!これが『松下庵』だッ!!(バオー来訪者風に言えば)

「2024 ANNIVERSARY REIWA」の素晴らしさを写真でお楽しみ下さい

 ってなわけで、元々付いていたストラップのことは忘れて下さい(笑) ここからはワタクシが撮影した拙い写真をご覧いただきながら「REIWAの細部」に迫っていきたいと思います。

使う側にも高度な解釈を求める「ダイヤルデザイン」

 まさにセンスの奔流です。単純に「バランスの取れたセクターダイヤル」なんて、安っぽい表現は使いたくありません。例えるならこれは「都市計画に近い設計」。時計部品設計の枠を超えていると思います。

37ミリケースの時計ですよ?? それなのにこの視覚的な重み

 小さなダイヤルの平面にとにかく「広さを感じる」のですよ。ボンベ状のダイヤルを覗き込んだ際に、まるで「一つの街を俯瞰している」ような錯覚に陥る理由は「設計段階のスケール意識」がそうであるからではないかと思います。要するに原寸で収まるように要素を決めたのではなく、何かもっと大きなイメージが目標としてあって、それを原寸内に可能な限り落とし込んでいったのではないかと。

 例えば宗教画の図録を見たときに「壮大な世界観の絵だなぁ」と感じたとします。きっと教会の壁面いっぱいにこの絵は描かれていて、それはそれは壮麗な光景に違いないだろうなんて想像するわけです。

 ところが、欄外に記載されている実寸を見て唖然。多いんですよ。めちゃくちゃ小さな宗教画って。A5サイズよりも小さな名作がザラに存在するのです。

 美術の実サイズと感動の大きさには何の因果関係もありません。美術館で観た小さなイコン(聖人画)が生涯の記憶に残る場合もあります。浅岡さんのデザインするダイヤルからは、まるでイコンのような不変性と記憶に残る世界観を感じるのです。見た人の脳裏から何か大切な物を引き出す力があるのかもしれません。そういう意味では、シンプルでクールなアウトラインを信条としているデザインであっても、その実、ウエットな感情に訴えかけるタイプのプロダクトなのかもしれません (*´ω`*)

ダイヤル領域で連続する「分断と結合」

ただただ芳醇なダイヤルです

 幾つもの素材を組み合わせて、実に雄弁な表情を見せるクロノトウキョウ「2024 ANNIVERSARY REIWA」。定番のギョーシェに頼らずにこれだけ充実した視覚体験を与えてくれる秘密は「要素の分断と結合」にあると私は考えています。

漆黒の中央部と、抜けるように鮮やかな外周部のコントラスト

 「分断」とは要するにデザイン的なセクター化のことです。セクターダイヤルとは本来、情報を分割して個別にまとめることで視認性を高めるためのテクニック。ですから、そういった「機能」を持たず、格好良いから色分けしましたみたいな「なんちゃってセクター」とは明確に分けて考える必要があります。

有機的なテクスチャーを感じる外周部

 「2024 ANNIVERSARY REIWA」のセクター分けは非常に機能的に考えられています。要素の分断が的確で見る者に迷いを生じさせません。これは腕時計が本来、最も重要視すべき性能です。

立てると構造が際立ちます

 そして「結合」。浅岡さんがデザイナーとして、最高レベルの才能の持ち主であることを示す仕事を見ることができます。

 発色も光沢も、視覚的な固さも異なる異素材同士を一旦は「分断」。それらを再結合する際のテクニックが凄まじい。それを無理矢理言語化するならば「繰り返す違和感と納得」みたいな感じでしょうか?? 触れるたびに何度も「問いかけ」を行い、それに対しての答えを提供し続けることで、ユーザーに「解釈の上書き」を迫るのです。何十年も廃れずに生き残ってきた歴史的なプロダクトと同様に「2024 ANNIVERSARY REIWA」「使用者と共に成長するデザイン」と言って良いかもしれません。

 「こういう物だ」と思ってしまえばそれでお仕舞いなのが「腕時計」「2024 ANNIVERSARY REIWA」のダイヤルデザインはすでに記号と化した遺物を分断、再結合することで生まれた「前のめりのパッション」を見せてくれる名作です。過去の良作を手本にしているだけでは絶対に生まれない類いのものだと思います (*´∀`*)

飽きようのない「ケースデザイン」

このケース、始まりにして究極!!

 「始まり」でもあり「終着点」でもあるデザインのケース。私はこれを「未来志向のアーキタイプ」だと考えていて、様々な彩りを持つダイヤルを十全に受け止める「器」としての懐の深さ感銘を受けました。地味で印象的とは言えないケースなのですが「これだよな!!」と納得できるところが多々あるのです。

裏蓋もエモい!!

 価格を考えたら十二分な仕上げが施されています。37ミリ幅という絶妙なサイズ感で腕乗りも良好。7ミリという厚みはドレスシャツ着用時の美しいシルエットを約束してくれます。控えめなのに無視できない存在感。「REIWA」のダイヤルが持つ「希有なスター性」を支える「名脇役」と言えるでしょう (*´∀`*)

こういう遊び心も!!

拘り続ける「ミヨタ搭載」

MIYOTA 90S5 出典:https://miyotamovement.com/

 「REIWAシリーズ」初の「30万円超え」を果たした「2024 ANNIVERSARY REIWA」。ここまで来るとさすがにMIYOTA 90S5… ミヨタってどうなん??」と不満に思う方もいらっしゃるでしょう。まあ、今作に限らず、ミヨタの使用に関しては色々言われてきたクロノトウキョウさんではありますが(笑)

 ただ、価格云々関係なく、浅岡氏にはミヨタというメーカーに対する「絶大な信頼」があるのでしょう。でなければ、ある意味これだけしつこく「ミヨタ」に拘る理由がありません。精度や仕上げといった基準ではなく、パートナーとして信頼できると考えてのことではないかと思います。日本製であることの拘りも大きいはずです (*´ω`*)

未だ拭えぬ「針」への違和感

時針と分針のデザインはちょっと謎なんですよねぇ (;´∀`)

 あくまで個人的な好みの範疇であると断っておきますが…「REIWAの針」って、時針と分針のデザインが「逆」に見えるのです。もちろん時針の方が短く、きちんと時刻を表現してはいるのですが、そもそもの意匠の段階で時針の方が「分針っぽく」、分針の方が「時針っぽい」

 何度も頭の中で「違う違う!!」と打ち消し、「だからちゃうって!!」と修正しようとしても、見るたびにかなりの確率で錯覚してしまいます。この現象、正直「謎」です (;´∀`)

最後に…「REIWAシリーズ」が未来に遺すもの

そっか!! この時計はミッドセンチュリー的なんだ!!

 3000字を目指しましたが… 無理でした!! ホントすみませんねぇ… 冗長な言い回しでダラダラ長い文章しか書けなくて(汗)

 「THE GRAND SERIES」のプロジェクトとして2019年にファーストモデルがリリースされた「REIWA」。浅岡氏曰く「クロノトウキョウで最も製造が困難な(合格品が100個中5個!?)」ダイヤルを備えた「REIWA」の最終モデルとして、5年ぶりの復活を遂げた「2024 ANNIVERSARY REIWA」。素人の私にも解る、見るからに難しい作りの凝ったダイヤルこそが「真髄」とも言える時計です。

ダイヤルだけで言えば、ウチの100万円超えたちより上だと思います

 ダイヤルの素晴らしさはすでに散々語らせていただきましたが、何度でも言いましょう。半端じゃない満足がここにあります!!

 ダイヤルのアウトライン自体は私も所持している「2021 ANNIVERSARY TOKI 朱鷺」など「THE CLASSIC SERIES」と同系統です。ですが、やはり「REIWA」の2本は凝り方が違います。工程だって下手すりゃ倍は必要だったんじゃないでしょうか??

 クロノトウキョウの価格帯を考えたら、アンバランスにゴージャスなダイヤルだと思います。コストの一点集中が全体の出来栄えに与える「悪影響」の方が心配になるくらいのレベルです。それでも最終的にはしっかりとパッケージングされた時計に仕上げてくるのですから、心底、大したものだと思います。結構無理したんじゃないかなぁ… (;´∀`)

 昨今の腕時計の高騰を考えたら「低価格」と言ってしまうこともできるクロノトウキョウの時計たち。そこに数百万円の時計にも匹敵するダイヤルを搭載した「REIWA」の異端的アプローチは、今後のエントリークラスの在り方に一石を投じるものになるはずです。

パーフェクトだ、ウォルター!!

 販売価格で線を引いて作れば落としどころは簡単に見付かるでしょう。ですがそれでは余りにも芸がない。「REIWA」のように「ダイヤルに全振り」した時計があっても構いませんし、見た目は安っぽいのに奢ったムーブメントが載っている時計があっても構わないのです。大企業には難しい舵取りかもしれませんが、今後はその辺りで「差別化を図った」マイクロメゾンが現れてもおかしくありません。

当初「X」用に作った動画をYoutubeでも管理していくことにしました

 はい!! 今回は6000字弱(笑) 本日も読了ありがとうございました!! (;´∀`)

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2024 Anniversary Reiwa 仕様
ムーブメントMIYOTA 90S5 (自動巻、24石、毎時28,800振動、パワーリザーブ約40時間)
風防ボックスサファイアクリスタル
ケースバックソリッドケースバック
防水性3気圧
ケース素材ステインレススチール (316L)
ケース径37ミリ
ケース厚7ミリ
ラグからラグまでの縦幅42.75ミリ
ラグ幅20ミリ(尾錠側16ミリ)
ストラップ特別仕様側面色付きカーフレザー(緑)

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