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「島津タイマー」を腕時計で考える

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貴方の大切な腕時計の中に、もしも決まった年数で壊れるように仕掛けられた「時限装置」が見つかったとしたら…想像するだけでモヤモヤしませんか??

そんな「if」に対し「何を馬鹿なことを」と言えないような事件が、つい最近明るみになったことをご存じでしょうか??今回は少々社会派でお送りします。

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「島津タイマー」が壊したもの

「チッチッチッチッ・・・」

それにしても、こんな悪い冗談みたいなことが現実として起こるとは…先月、巷をざわつかせた「島津タイマー問題」。アレは本当に腹立たしいというか、日本人として誠に情けない事件だったと思います(;´Д`)

話を進める前に、明るみになった顛末を簡単にご説明しますと…

医療機器大手(なのかな?)の「島津製作所」の子会社「島津メディカルシステムズ」がとある病院に納入した機器の中に、一定の時間が経過した後に故障が発生したように装う「タイマー」をしかけ、その後の不要な部品交換で修理費「約228万円」を不正に請求したとされる…とのこと。技術的なことは解りませんが、報道の通りだとすると…実に卑劣なやり口です。

タイマーといえば「ソニータイマー」

ちなみに私たちオッサン世代にとって「タイマー」といえば「ソニータイマー」が思い出されます。あれは大ヒットした「ウォークマン」の使われ方とも無縁ではなかったはず。私も「歩行中の落下で4、5台はぶっ壊した」経験がありますし、そもそもポータブル機器の利用状況は相当に乱暴でした。一般ユーザー向け製品を作る会社ですから、その辺は仕方がないわけです。

ちなみに据え置きのオーディオなどは、私が使っていた中だとソニー製品が一番長持ちしました。カセットデッキなんて、壊れる気配すらなかったですもん。10代の頃に買ったポータブルラジオなんて、電池を入れれば未だ現役です。私の周りのソニータイマーだけ「不発弾」だったとか??(;´∀`)

要するに「ソニータイマー」に関して言えば、それは個々の利用者がそれぞれの状況で何となく感じた「イメージ」でしかなく、根拠なんてどこにもなかったのです。そもそも、例え「タイマー」を組み込めたとしても、その結果ブランドの威光は失墜するでしょうし、マーケットを競合他社に奪われるだけのことです。ぶっちぎりの最強だった「あの頃のソニー」にしたところで、最悪の影響は免れなかったでしょう(だとしてもサンヨーの「JJ」に食われたとは思えませんが)

一流企業「島津製作所」が起こしたペテンの衝撃

それゆえに、子会社とはいえ天下の「島津製作所」がこんなことをしでかすなんて本当に驚きました。大げさでも何でもなく、その瞬間を「日本の物作りが終わった日」とさえ感じたのです。実際それだけの会社なんですよ。ジャンルによっては日本企業の「旗振り役」みたいなところもありましたし。

ちなみに2019年の「X線診断装置」の世界シェアでいうと「シーメンス」に次ぐ「4位」の位置だそうで。その後に「キヤノン」「富士フイルム」と続きます。ほらね!!やっぱ一流企業だ。

そんな名のある企業が顧客に対してしかけた「卑劣な時限装置」。都市伝説、或いはジョークとして語られてきた「タイマー」が実在した衝撃は小さくありません。物作り日本を「信じてきた」側の人間としては、これまでの信仰を「否定」されたような気がして不快ですし、作り手側にしても自分たちが長年築いてきた「神話」を壊されたわけですから。少なくともこの問題は「子会社の一社員が起こした小さな事件」などではありません。新聞の社会面で「ベタ記事」として埋没させていい話ではないのです。

この顛末を腕時計に置き換えてみると…

「GMTにムーンフェイズに…タイマー??」

こんな馬鹿げたことは滅多に起きないと信じたいですし、さっさと忘れたいところですが…ここは「ほぼ腕時計特化のブログ」です。そこで今回の島津製作所のケースを、無理矢理「腕時計」に置き換えて考えてみたいと思います。弊ブログを覗いて下さる方と一緒に考えるなら、それが一番だと思いまして(;´∀`)

メーカー保証が切れた直後を狙って発動するタイマー。慌てるユーザーは修理の依頼でメーカーの窓口に殺到するでしょう。そうして、本来なら必要のない部品交換やオーバーホール代でみみっちく稼ぐ…どうです??何ともお粗末な話でしょ??

そもそも、他に代替品が幾らでも存在する商品である「腕時計」の場合は「タイマー」の存在が明るみになるならないに関わりなく、僅か数年でぶっ壊れたとしたら一斉にソッポを向かれることは必至です。そしてその後、どんなに優れた製品を生み出し、メディアを通じて失地回復に努めようとも、本質的な「信用」は取り戻せません。

腕時計の場合、例えば「3年で壊れる機能」のような、悪どくも難易度の高い仕掛けを機械式に組み込む技巧があるなら、いっそ「史上最悪のコンプリケーション」として売りにすれば良いのです。珍品が好きな好事家は面白がりそうですしね。

まぁ、ぶっちゃけ壊れても「命に関わりのない」腕時計なら、こんな軽口も叩けますし笑い話にもできます。ですが医療機器の場合は言語道断。手術の最中に大型機器のタイマーが作動して患者さんの生命に危険が及ぶ…何て事態もあり得るのです。

機器の「保守」に対する不信感を生んだ

島津さんの子会社がどういう会社で、どういう現業を行っていたのかは解りません。報道の内容から察するに「機器の保守業務」ではないかと思いますが、そういった保守に対する「不信感の芽生え」は必ずあると思います。少なくとも被害者、そして現在島津さんの機器を使っているユーザーは今回の事件を忘れないでしょう。興味がないので調べていませんが、株価にも影響したんじゃないでしょうかね??(と思ったら、株価はほとんど無傷ですって!!何でさ!?)

今回の事件はあらゆる製造業に対して、一般消費者があらぬ疑いの目を向けるきっかけになってしまったかもしれません。壊れてもいない機材の修理費を稼ぐという、小悪党好みの「実にセコい悪だくみ」でしたが、万が一にも組織的に行われたならば悪辣さは100倍増しです(組織的であるか否かについては島津内部で調査中とのこと)

本来はまともな企業である島津さんですから、この先、長い年月を費やして市場の…そして顧客の信頼を回復させるための努力を続けるでしょう。ですがこの記憶は確実に記録として残り、今後ことあるごとに「不祥事」の扱いを受けるのです。

巷で耳にする「飛び込み業者による家屋の点検に関するトラブル」も同種の問題でしょう。「無料点検」と称して屋根に上った業者が故意に瓦を踏み抜き「お宅の屋根に穴が開いていますよ??」と報告、その場で高額の修繕契約を取り付ける…相手が高齢者なら暴力的な態度で強引にハンコを押させることも容易いでしょう。全く腹立たしい限りです。

島津さんの不祥事はこれら「輩業者の暴力」をより巧妙に行なっただけのことです。精密機器の「ブラックボックス」を良いことに大切な顧客を騙したのですから、今後、機器のメンテナンスで訪れる島津さんの関係者は、顧客の警戒心と対峙しなくてはならないのです。対面で顧客と相対する善良なリペアーマンこそ最大の被害者かもしれません(´;ω;`)

腕時計の世界では起きないと信じたいが…

「神よ…腕時計だけはお守り下さい!!」

機械式の腕時計ほど、頻繁なメンテナンスを前提に作られるものも珍しいでしょう。自家用車ほどではないにしろ、性能を保ち続けるために数年置きのオーバーホールが推奨されています。私もこれまでに何本もの腕時計を修理に出しました。多少日差が悪化したくらいではほったらかし(汗)ですが、リューズの空回りが起き始めたり、クロノグラフの剣ずれが目立つようになったらオーバーホールに出すよう心がけています。

これまで、各ブランドの純正メンテを受ける場合は安心できました。実際の仕上がりも文句なしでしたし、ずっと気になっていた異音が消えたときには本当に感動したのを覚えています。それは新品を購入するのとはまた違う喜び。ですが「街の修理屋さん」に頼んだ場合は色々と問題がありまして…(;´∀`)

その昔、日差がマイナス1分近くになってしまった時計を街の修理屋さんに託したら、特定の時間で毎日停止するという不具合が追加されて帰ってきたことがあります。もちろん意図的ではありませんでしたし、ちゃんと状況を説明したら追加料金もなく再修理してくれました。

これまで、街の修理屋さんにお願いする場合は、敢えてあちこちのお店を使って「腕」に探りを入れた私ですが、正直、看過できない技術力のバラツキはありました。「今回はハズレやった!!」なんて経験もそれはそれで思い出になるので良いのですが「素直にメーカーに出しておけば…」と後悔したこともあります。そういう記憶の積み重ねでしょうか…オーバーホールをお願いすること自体に多少のストレスを感じるのです。

ですが、これから先は「意図的に壊される可能性」についても心配しなくてはならないのでしょうか??

島津さんの今回の不祥事は、製品やそれらを製造する企業に対する消費者の心に、浅からぬ「疑心暗鬼」を植え付けたと思います。これまで「自分の使い方が雑だから壊れた」と考えていたユーザーにしても、あの時のアレは「まさか…」と振り返るかもしれません。

信じて…良いのね??

基本的には腕時計の「製造・販売・修理」のトリニティーに絶対の信頼を寄せる私ですら、今回の島津さんの一件を通じて、何やら「見てはいけない深淵」を見せられた気分なのは確かです。

まぁ腕時計の場合は商品の品質以前に「ブランドイメージ」が命でしょうから、それらを貶める悪意に対しては徹底抗戦してくれると信じています。ましてや、率先して手を染めるとも思いません。

とはいえ「だから安心か」と言われたら自信がないのです。「信じていたのに裏切られた」…それこそ今回の「島津タイマー」被害者の気持ちでしょうから。

最後に

今回は戯れ混じりに「島津タイマー」を、私にとっては身近な腕時計の事象に置き換えてみました。何故なら「腕時計」は私にとって「聖域」であり、万が一にも同様の不祥事が明るみになった場合、拠り所を失って立ち直れなくなるかもしれないからです(;´Д`)

製造業と消費者の間の信頼は、気の遠くなるような長い時間を費やして醸成されるものです。ユーザーのニーズを的確に掴むためのマーケティング、具体化するための戦略、そして製品化するための技術。

それらは消費者にとっては「影の努力」であって、多くの消費者は生み出される製品そのものの印象のみで企業の善し悪しを判断します。そして、その企業努力が継続的に何十年も続いた先に「信頼」が生まれます。

ところがこの「信頼」とやら、ほんの僅かな亀裂から「ガラス細工」のように崩れ去る脆いものなのです。

起きてしまったことは仕方がありませんが、謝罪を含めた今後の舵取りを島津さんが間違えないことを祈るのみです。利益に関して子会社が無形の圧力を感じていなかったかなど、検証すべきは山ほどあるはず。

世界に冠たる一流企業なんだから、無関係な私たちにも「日本には島津がある!!」と自慢させて下さい。それではこの辺で!!

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