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腕時計界隈の視点でロシアを臨む

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国家といえば国民にとっては「親も同然」です。親が借金をすればその影響が子に及ぶこともなりますし、親が犯罪を犯せば、子の人生は前途多難な物になってしまう。

ロシアの著名な誰かさんが「政治とその他を一括りにしないでほしい」と訴えていましたが、一般人ならいざ知らず、国家の庇護の元で栄光を獲得した人のそういった考え方に、私なんぞは少なからず違和感を覚えます。もちろん、多くの企業活動も例外なく影響を受けるでしょう。これはロシアの企業に限った話ではなく、ロシア国内の企業活動で利益を得ていた外国企業にも及ぶ話です。

締切は3月18日!!まだ間に合います!!

実際「LVMH」「リシュモン」は営業停止状態に入り、「スウォッチ グループ」もロシア向け製品の輸出を停止したとあります。「ロレックス」も同様だそうです。

他の有名ブランド各社もほぼ同じ対応で足並みを揃えていますし、目先の利益よりも後々のイメージを大切にした判断は正しいと思います。通貨「ルーブル」の価値が怪しくなる中、オリガルヒなど新興の富裕層が、高級品の爆買に走っているようなニュースも目にしました。事実だとすれば、各ブランドにとっては苦渋の決断だったかもしれません。出せば確実に売れるのですから。

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clockwork old mechanical USSR watch

ところで…「シュトゥルマンスキー」「ボストーク」「ポレオット」…これらロシアンブランドは今後どうなってしまうんでしょうかね??

こんなことを言ってる場合じゃないってことは、重々承知な上で書いています。ただ、(ほぼ)腕時計専門のブログを書かせてもらっている以上、腕時計が絡む事態は避けて通ることができないと考えました。

私にはプーチン氏の考えは理解できません。この時代に隣国に戦争を仕掛ける意味、かつては同じソヴィエトの名を冠した国に戦火を及ぼす理由が解らない…解らない以上、軽々に語ることは本意ではありませんから、時計の話だけに特化させて頂く次第です。

ただひとつ、ハッキリ解ったことがあるとすれば、「東西冷戦は未だ終わってなかった」という事実。ペレストロイカにグラスノスチ…まるで100年も昔のできごとのようです。

ロシアの時計と言えば「ボストーク」「コマンダスキー」を思い出します。ロシア物の「チープシック」を象徴した製品ですし、そのバリエーションの豊富さとリーズナブルな価格から、コレクターズアイテムとしての人気もありますよね(スウォッチに近い存在かも)

近代美術史を紐解けば、抽象画の文化的な最終到達地点がロシアだったということもあって、コマンダスキー辺りにも美術的に面白い方向性が散見されます。アート系の時計という括りもできちゃうんですよ。

しかし、今後の状況によっては、そういった魅力的なロシアの腕時計の流通が途絶え、入手が困難になる可能性もあるのです。

そもそも…ウクライナのキエフには「ポレオット」の工場がある(あった)んじゃないでしょうか??そういう拠点も、少なからず打撃を被ったのではないかと思います。

文化的にも経済的にも、ロシアとウクライナの間には深い繋がりがあったわけです。そういった共同事業に従事してきた人たちは国同士の複雑な事情を超えて、ある程度は良好な関係を築いてきたはず。

ウクライナもロシアに負けず劣らずの経済状態ですが、雇用の創出という点で、ロシアの国営企業などに頼っていた部分はあったと思います。この先、戦争が終わって平穏な日々が訪れたとしても、働き場を失って困窮する人は相当数に及ぶでしょう。頑張って働いて、平和に暮らしたかったはずなのに。

先日、新宿の某ブランド正規販売店に赴いた際に聞いた話ですが、これまで順調(高騰一辺倒をそう呼べるのなら…ですが)に推移してきた並行輸入品の腕時計の価格が、ちょっと怪しいことになり始めているそうです。

ロレックスを指標に考えると、この半月ほどで最大2割ほどの下落があって、今後も下がっていく可能性が高いとのことでした。時期的にロシアの動きと合致しますから、そこに原因があるのは間違いないところです。

ロシアに進出してきた企業は、現地で行ってきた投資の行方に不安を覚えているでしょう。すでに在庫やら何やらは、その全てを接収されているかもしれません。そういった「負の記憶」は今後の再進出を躊躇させるでしょうし、企業が被った被害分を回復させるために選択する手段次第では、高級腕時計全体が、むしろ高騰化する可能性もあるのです。次の値上げのタイミングや、新製品の発表を注視することにしましょう。

また、ロレックスに限らず腕時計全体に関わる話として、ロシアで産出され輸出されてきた「金属資源」の今後も気になるところです。私も金属にそれほど詳しいわけではありませんが、例えば時計に使われる「ステンレス」

時計の外装に使用されるステンレス鋼は磁気を帯びては使い物になりません。ゆえに磁性のない「オーステナイト系」が主体になると思います。いわゆる「300系」です。

ステンレスは合金ですから、まず「鉄」があって、そこに「炭素」を加え強度を増します。そうしてできた「スチール」にさらにクロムやら何やらを混ぜてできたものが、錆びない金属「ステンレス」です。

加工性が良く、磨いたときの輝きもあるので、多くの装飾品に使われる素材です。何度でも自己再生する「不動態皮膜」のお陰で耐傷性にも優れ、オマケにアレルギー反応も起きにくい…と、腕時計にはもってこいの金属なのです(「316L」は含有炭素量を敢えて抑えた素材で、より加工性が高く、高級腕時計のケースの多くに採用されています)

ところがこれ「ニッケル」も必要なんです。ロシアはニッケルの産出では世界有数の国です。今後、西側との制裁の応酬の中で「輸出の制限」「禁止」が発動されれば、少なくない影響が時計業界にも及ぶかもしれません。そこは何やら心配な話です。

とはいえ長期的に見れば、金属資源の埋蔵地は他にも多数確認されていますから、精錬設備さえ作ってしまえば「ステンレスが作れない」みたいな事態にはならないと思います。

「ステンレスがなかったら、ホワイトゴールドで作れば良いじゃない!?」

そんな、マリー・アントワネットみたいなこと言わないで下さい。私みたいに「SSの輝き自体に萌える」タイプの人間もいるのです(;´∀`)

ウクライナの人たちの窮状に対して私個人ができることなんて、たかが知れています。ですが、今回ばかりは柄にもなく「国連難民高等弁務官事務所」を通じて少額の支援金を送ることにしました。

近々、買おうと思っていた「PROSPEX(SBDL089)」を買ったつもりになれば「ウクライナの子どもたちのための社会心理的サポート5人分」に相当するコストを賄えると、知ってしまったからです(;´Д`)

実際はどんな使われ方をするのか…確かめようのないお金ではありますが、何もしないよりは多分マシなんじゃないかと。

プロスペックスを手に入れたオッサン1人の笑顔と、子どもたち5人の笑顔…もはや比べるまでもありません。そもそも「腕時計趣味」なんて、平和だからこそやっていられる、他愛ない「お愉しみ」なのですから。

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