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腕時計を人に勧める難しさ

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この方ならこんな腕時計が似合うのに…と妄想するときがあります。お顔立ちや体格、服の趣味や性格、生き方みたいなものを拝見して、自分勝手に「こういう人があんな時計を身に着けてたら、どんだけ格好良いだろう!」とか思っちゃうわけです。自分のことじゃなくても、腕時計絡みの妄想は楽しくてやめられません。

そういえば以前、大阪時代の部下だった女子に、私の人生についての壮大な妄想を、何度も聴かされたことがあります。

彼女の話によると、私は「女性で身を持ち崩す」タイプの男で、多くの女性に翻弄され続ける運命だそうです。晩年は反省して大人しくなるも、因果応報でとても孤独な最期を遂げるそう。

 おい!

 酷すぎるやろ!(笑)

その女子から聴かされる妄想は、誰に対しても大体が「どんな死に方をするか」に関するもので、私も都合10回は「非業の死」を遂げさせてもらいました。次はどんな死に方?って、だんだん楽しみになってきたり(;´∀`)

彼女なりに、脇が甘そうに見える私を心配してくれていたのかもしれません。とはいえ、妙にリアリティーがあって、女子特有の壮大過ぎる「妄想の世界観」ってやつの恐ろしさを知るには充分でした。妄想するならもっと明るい未来を語ってくれよぅ(´;ω;`)

ちなみに、他人さまの腕時計を妄想する「遊び」は、そんな深刻な結末を迎えることもなく、極々平和裏なものです。

ですが、気を付けていることが一つ。

求められない限り、その妄想は「決して披露してはならない」のです。「貴方ならこんなブランドのあんな時計が似合うよ!」なんて口に出そうものなら、下手すると友達を失う可能性もあります。

だいぶ昔の話ですが、実際に私にも反省すべき瞬間がありました。

以前、中々にシブいブランドの腕時計を5本くらい、数日置きに使い廻している知り合いがいたのですが、私はその人を勝手に「腕時計好き」だと決め付けてしまいました。

例えばロレックス、オメガ、グランドセイコー辺りの、定番ブランドで揃えたラインアップなら「普段から良いものを身に着けたい人」なのかな?ってことで、私のアンテナにも、大して引っかからなかったと思います。

ですが、その方がお持ちの時計は正直渋すぎた。間違いなく「しっかり勉強して揃えた時計」に見えたのです。

そうして、この人は「腕時計愛好家」に違いないと喜んだ私は、聞かれもしない腕時計の話を、ジャンジャカ煩くやらかしてしまいました。相手の方も楽しいはずだと思って。

あの時の「キョトン」とした相手の表情…忘れられません。世の中にはプロパリーな意味合いだけで、高級腕時計を「持っていないとおかしいもの」と考える人もいるのです。そこには私たち腕時計愛好家のような拘りはありません。ましてや、腕時計を起点にした繋がりなどには何も期待していないのでしょう。

そんな御仁を相手に「強制腕時計談義」を仕掛けたものですから、そりゃあ怪訝な顔をされるってもんです。思い出しても、今は反省しかありません(;´Д`)

そんなやらかしもあって、余程のことがない限り、人様相手に腕時計の話なんてしなくなった私。それはとても淋しいことではありますが「腕時計趣味とは元来孤独なもの」であると勉強させてもらったことで、あくまでも自分の内々で楽しむようになりました。

例外があるとすれば、腕時計という「ワード」で繋がるSNSの皆さんと、腕時計ブランドのブティックや販売店のスタッフさんたちでしょうか。彼(彼女)らが相手なら、私も安心して腕時計にまつわる話の「全球種」を試すことができます。彼らは腕時計の話題をキャッチする「名捕手」なのですよ。

もちろん私が捕手として、相手の剛速球を受ける場合も多々あります。こちらの勉強不足でパスボールしてしまったりすることもありますが…それすらメッチャ楽しいのです。

腕時計が好きな相手なら、自分の着けている腕時計を誉められて、嫌な顔をする人はいないでしょう。腕時計に造詣の深い人からの称賛はもちろん嬉しいことですが、全く関心のない人から「その時計、すごく格好良いですね!」なんて言われるのも悪くありません。

また、ブランドのブティックへ行ったなら、私は必ず当該ブティックの時計を「誉めまくり」ます。これはある程度勉強して行かないとできないことですが、そのブランドの立場に立って「今こそ評価してほしい部分」と、彼らが思ってもいなかった「マニアックな評価」の両方を伝えるようにしています。

レギュラーチェーン以外だと、担当ブランドが頻繁に変わったりして、スタッフの方が現在担当するブランドの時計に対して「愛着」を持つこと自体が難しいかもしれません。

しかし、路面店など「直営」に働く人たちは、男女の区別なくそのブランドに「所属している」意識が強い。良い意味での「プライド」を感じます。私自身もとある業界で「ブランド」に属している身の上ですから、ある種の「背負う」という感覚も良く解ります。

ならば、私がされて「嬉しいこと」をしてあげれば良いのです。

気持ちの良い買い物がしたいなら、気持ち良く売ってもらえるように消費者側の努力が必要だと思います。それには売り手の「自尊心」をくすぐることで、「この人に買ってもらいたい」と思ってもらえるかが鍵となるでしょう。

また、売り手にとって「商品を勧めやすい」顧客であるか否かも大切です。まともなブランドのまともなブティックなら、腕時計を取り巻く様々なシーンをイメージさせることで、自社の製品が如何に優れているか、如何に使いやすいかなどのセールスポイントを伝えてくれるでしょう。

ですがそれも、「優秀な受取り手」がいればこそです。

事前の予習が足りなければ、売り手が開示してくる多くの有益な情報も、その意味を消失してしまいます。上の空で生返事を繰り返すお客さんに対して、売り手が本気になってくれないのは、どんな業種でも同じでしょう。

ブランドは企業だけで築けるものではありません。優秀な顧客が、ブランドの提供する製品やサービスを正しく理解することで、初めて完成するユニバースなのです。

手前味噌になりますが、そういう意味で私個人は、かなり扱いやすい素直な客だと思います。基本的に腕時計の話ならオールジャンルで拾いますし、ブティックのスタッフさんに、やり取り自体が徒労だったと思われるような客ではないと思います。残念ながら安月給のせいで、お勧め全てを購入できるわけではありませんが…

腕時計のブランドブティックなら、所見の客でも暖簾をくぐった時点で「腕時計に興味がある人」と断定しても構わないでしょう。比較的、敷居が低めのデパートの腕時計売り場であっても、そのフロアに腕時計に興味のない人が立ち入ることはないと思います。

ですから、目の前の人に対して積極的に腕時計を勧める行為に関しては、喜ばれることはあっても、困った顔をされることはないはずです。

ところが、そういう腕時計好きにとっての「ホーム」とも言える場所以外での「腕時計推薦」は実に難しい。一言でいいから「オススメの腕時計って何かある?」とでも言ってくれれば、徹底的に親身になって提案するのですが…

もう何年前になるでしょうか…「まともな腕時計が欲しい」と洩らしていた若い奴に、自分のコレクションの中から、使用頻度が極端に低かった腕時計を2本、進呈したことがあります。

クオーツだし、高価なものではありませんでしたが、一応はスイス製という代物でした。ニュアンスとしては「良かったら使って」くらいのトーンでしたっけ。

それなりに喜んでもらえたと思いますが、私が期待した展開…「腕時計って楽しいですね!」みたいな反応はありませんでした。そこそこお洒落な時計だったんですけどねぇ(;´∀`)

そうして学んだのは、腕時計に1ミリの興味のない人に対しては、こちらが何をしたところで所詮は「無意味」だということ。もっと「ガツン!」とくるインパクトを残せれば別だったかもしれませんし、それこそ「ロレックス」でもプレゼントできれば違う結果だったかもしれませんが、そんなお大尽なマネは、私には到底ムリなわけです(;´Д`)

ってなわけで、こちらが受動的な立場で何かしらの接触がない限り、腕時計の話はしなくなりました。私個人としては、自分が働く職場で「お昼に何食べる?」と話すくらいの軽薄さで、ゆるゆる腕時計の話ができたらそれこそ最高なのですが…無理なんでしょうねぇ(;´∀`)

なんて達観してしまっていたら、つい先日、職場のパイセンから嬉しい一言頂きました。「次に買う腕時計の相談に乗って欲しい」…ですって(*´∀`*)

ふふふ…自分が買うわけでもないのに、メッチャ楽しいのは何故でしょう(笑)

普段から「ロレックス」を使ってらっしゃる先輩。「2本目もロレックスで」と考えるのは自然として、一体どういうモデルが似合うのかなぁ~と想像したり(そもそも買えそうにない状況ですがねぇ)

背の高い方なので、思い切って大型の時計を勧めてみるのもアリかもしれない。一丁、「パネライ」で推してみるって策を巡らせたり…( ー`дー´)

いや!2本目ならば渋さ満点、絶対に飽きのこない「IWC」こそが相応しいのではないかと考えたり。

いやいや!先輩のお人柄から言って、誠実印の「グランドセイコー」は絶対に似合うはずだ!奥さまも惚れなおすはずだ…と余計なお世話を目論んだり(笑)

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何を買おうか考えてる時間が一番楽しいのは確かです。

まぁとにかく、その日がやってくるのを楽しみにして、いつ、何を訊かれても答えられるよう、オススメに関するエビデンスを集めておきたいと思います。

今回は、人さまに腕時計を勧める難しさについて書いてみました。何せ腕時計です。ぶっちゃけ「高級」が付かなくったって、それなりの物ならそれなりのお値段になってしまいます。勧める側も無駄な出費で相手を「後悔」させないよう、根性を入れた提案が必要でしょう。失敗すれば「二度と腕時計に高い金は払わん!」なんてことを言われかねないのです。信用もガタ落ちです(´;ω;`)

それでも、腕時計を勧めて「アミーゴを増やしたい」と考えるなら、高級そうな腕時計をしているからといって「腕時計好きの仲間だとは限らない」ということを、肝に銘じておかねばなりません。そこそこ収入のある人なら、当たり前のように高級品を身に着けている場合の方が「世の中には圧倒的に多い」のですから。

私自身も、特段興味のないものに高いお金を払った経験が幾つもあります。寝具だったり現代美術だったり…ぶっちゃけ「愛」なんて無くったって、人はお金を使えちゃうのです。

そんな感じの「何の拘りもなく凄い時計を使っている人」から「腕時計なんてさ、時間が解れば何でも良いんだよ」みたいなことを真顔で言われたら…腕時計好きの身としては、ちと辛いなぁ…(;´∀`)

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