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幼い記憶に刻まれた腕時計ブランド

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私が小さな子供だった時分、娯楽といえば友だちと空き地で草野球に興じるか、田んぼでカエル釣りをするか、ライダーカードの見せ合いっこか…そんなものでした。そして家に帰ればとにかく「テレビ」。次の日、学校で友だちと会話を成立させるためには、見ないと始まらない番組がたくさんあったのです。子供たちの生活はテレビを中心に回っていたと言っても間違いではないでしょう。

その頃のテレビには番組はもちろん、個性的なCMが少なくありませんでした。無垢な子供たちにとってそういったCMは「未知の世界を開く扉」のようなものでした。私も深くは理解はできなくとも、未知の世界を獲得したような気分になっていたのを思い出します。

私は特に「海外のスター俳優がキャスティングされたCM」「タバコやお酒といった大人向けのCM」が大好きでした。ブルージーな「カティーサーク」のCMや、「Speak Lark」のフレーズで知られるタバコ「ラーク」のCM。ジェームズ・コバーンさんのバージョンが有名ですが、テレビでタバコのCMが流せなくなってからの高倉健さんを起用した広告も渋かったですねぇ。「言葉より語るもの」ってキャッチフレーズは健さんそのもの。ってなわけで、いろんなCMに感化されまくりながら、シブい大人の世界への憧れは募っていったのです。

ボールウォッチ・ハンティングワールド・タイメックスなど海外ブランド時計が期間限定セール

同様の影響で子供の頃に刷り込まれた腕時計のブランドがあります。それが「RADO(ラドー)」「Longines(ロンジン)」です。

どちらも昔々は番組とのタイアップやスポンサーとして、その名を広く日本国中に知らしめることに力を注いだブランドです。子供の私に、それがどのくらいのブランドなのかが理解できるはずもありませんでしたが「何やらスゴい腕時計のブランドらしいぞ!」ということくらいは、テレビ画面(ブラウン管でしたね)から読み取ることができたのです。言ってみれば、ウルトラマンの怪獣や仮面ライダーの怪人の名前をソラで言えるようになるのと同様に、子供たちはみんな、腕時計といえば「らどー!」「ろんじん!」と言えたわけです。

特にRADOさんはクイズ番組の懸賞だったかな?で、「スイスの高級腕時計」と毎週連呼するのを聞いていたこともあって、強烈に記憶に残っていたりします。そんなワケで「ラドー」という、どこか艶かしく「大人の響き」を持つブランド名には、漠然とした憧れを抱いてきました。

昨年の末頃、正月の帰省も諦めざるを得ない状況が決まり、近似の目標を失って気が抜けた私は、景気づけに自宅から歩いていける新宿界隈の時計屋さんを見て回ることにしました。

手始めは東口から。といってもハッキリと「買おう!」強い意志で思っていたわけでもなく、弱々しい視線で時計の陳列を嘗めていった…そんな感じでした。

そして西口へ。まずは「京王百貨店」さんから。

京王百貨店さんの腕時計ブランドのラインアップですが、ミドルクラスのブランドが多くて、ミドルクラス好きの私的には楽しめる空間なのです。「エベル」の扱いがあったりしてねぇ(*´∀`*)

お次は「小田急百貨店」さんへ。

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私が学生だった頃と変わらぬ懐かしい風景が広がります。いやぁ~あの頃は東京の何もかもが楽しかったなぁ(笑)

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「RADO」再構築された昭和の香り

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腕時計売り場はハイブランドも多数。見応えも充分です。ちなみにこの日、私としてはどうしても現物を確認しておきたい時計がありました。それがRADOの「ゴールデンホース」です。

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GOLDEN HORSE AUTOMATIC

これよこれ!令和に蘇るこの「昭和感」たるや(笑)

昨年の7月くらいでしたか…買うか買うまいかと思案していた時計にラドーの「Captain Cook(キャプテン・クック)」がありました。1962年発表のオリジナルを現代風に解釈し直した「いかにもラドー」なダイバーズなのですが、どの色にするかで悩みすぎて集中力が切れてしまいました(笑)腕時計を買うときには明らかな流れ…モメンタムが必要ですが、この時はそれを持続することができませんでした。若い頃は1年くらい続いた物欲の熱も最近は2ヶ月位でしぼんじゃう。歳は取りたくないですなぁ…(;´Д`)

小田急百貨店さんの時計売り場には、昨年秋の東京本社着任からでも数回は訪れていまして…ロレックスやカルティエ、ルクルトなど、垂涎の腕時計たちが独り暮らしの淋しさを癒やしてくれました。そしてこの日は「集中的にラドーを見る日」に設定。ええ、勝手にそうしました(笑)

ラドーさんのブースでは本当に惜しげもなく、様々なタイプの時計を試させていただきました。セラミックの吸い付くような装着感やド派手な装いのドレスウォッチを堪能。楽しい!めっちゃ楽しいよラドー!!(*´∀`*)

そして、本日のお目当て。「ゴールデンホース」を拝見。

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真ん中2本が「ゴールデンホース」、両脇が「ハイパークローム クラシック」です。

どちらも凄まじい「昭和感」です。「ゴールデンホース」は1957年に発表されたオリジナルの新解釈版ですが、ちょっと他では見られないタイプの時計でした。少なくともラドー以外のブランドでこんなに「昭和のど真ん中」を感じる時計なんてありません。

あの時代の大人たちが纏っていた「ギラギラした何か」をこの時計は放射しているのです。もしかするとセイコーやシチズンより、昭和の空気を体現しているかもしれない…

細部を見ていくと、感心するほどあの時代のクオリティーを再現しているのが解ります。逆に今の若い人がコレを見たら、この見慣れない未知のテイストが「時代の最先端」に映るかもしれません(*´∀`*)

オリエント・エプソンの腕時計がお買い得

ケースもライスブレスも総ポリッシュでピカピカ。この悪趣味になってしまうギリギリのラインを攻めつつも、結局は悪趣味の方へ転んでしまった…みたいな一種の「やらかし感」がラドーというブランドの真骨頂ではないか…そしてその「やんちゃ」こそ、私が子供の頃に魅了された「大人の世界」そのものなのではないかと思った次第です。

試しに腕に巻いた「ゴールデンホース」はライスブレスの優れた装着感で好印象。シンプルなのに複雑なニュアンスを感じるダイアルも魅力的です。総ポリッシュでありながら時計全体としての印象は纏まっていて「派手さ」「高い汎用性」を併せ持ったハイブローな時計だと思いました。職場の照明の下で見たらどんな感じなんだろう…気になった方はお近くのデパートなどで一度、腕に巻いてみて下さい。ラドーの印象、少なからず変わりますから。

「Longines」今こそ味わう、刻まれた歴史

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「ラドー」というブランドの魅力は、染みるような「色気そのもの」だと思うのですが、もう一つ、私が子供の頃から知っていた腕時計ブランド、同じ「スウォッチグループ」の一つ「ロンジン」の場合、その魅力は正反対の「奥ゆかしさ」にあると思います。ラドーが「クラブのママ」ならば、ロンジンは「図書館の司書さん」。擬人化するならそんな感じです(*´∀`*)

ロンジンの凄みは、この時代まで変質せず「ロンジンであり続けた」ことに尽きるのではないかと思います。かつてはロレックスやオメガと肩を並べて称されたロンジン。その輝かしさを今のロンジンからは感じませんが、その代わり「ロンジンはロンジン」という普遍のポジションを得たように思います。

前述の通りロンジンは「スウォッチ・グループ」の一員です。恐らくグループの内実はほとんどコングロマリットな状態ではないかと推察。独立した関係のように見える各ブランドも、実のところ自由に好きなものを作って好きなようにブランディングする…というワケにはいかないのではないかと思うのです。

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 例えば、かつてのライバル「オメガ」との関係。ロレックスに追い付けとばかりに高級路線をひた走るオメガのイケイケな方針は、ロンジンにとっても無関係ではないと思うのです。ブランドの歴史、元々の格で言えば、ロンジンはオメガに劣るどころか、上に立っていてもおかしくないだけの実績を積み上げてきました。

けれど、スウォッチグループの元では「戦略的棲み分け」を求められるはずです。同じグループ内で顧客層を食い合うなんて愚の骨頂でしょうからね。

となると、コンシューマーからの人気が高いオメガをグループのフラッグシップブランドに据えて、明らかに玄人好みで地味なロンジンなどには、中堅を任せる…みたいになっちゃってるのでしょう。スウォッチグループは中堅の層が非常に厚いですから、ロンジンのようなブランドはそのポジション取りに腐心しているはずです。振り向けば「ミドー」あるいは「ハミルトン」みたいな感じですもん。古豪のロンジンとしては内心、忸怩たるものがあるのではないでしょうか?

とはいえ、最近のロンジン。鈍い光を放つ、ちょっと目を離せないブランドになりつつあります。ロンジンに限ったことではありませんが、自社アーカイブの掘り起こしで出てきた「ヘリテージモデル」が、これまた!なかなかなシロモノなのです。

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フラッグシップ ヘリテージ

時代感で底上げされた存在感というものが、いわゆる「復刻モノ」の魅力ですが「新品のアンティーク」とも言うべき肌当たりのよさも見逃せないところです。それは買った瞬間から「10年来の友人」のように付き合える腕時計なのです。
威圧感とは無縁のロンジンというブランド、そして懐かしさを湛える秀逸なデザインを現代に蘇らせた復刻ヘリテージ。「若いヤツらにはこの味はわからねぇな!」とつぶやきながらチビチビ呑む芋焼酎のように、いい歳になった「大人のためのスタンダード」を提供するのが、今のロンジンのポジションのように思えます。

オメガのようにみんなが飛びつく話題は作れないけれど、見る人が見れば面白く、そして飽きの来ない「着用寿命」の長さと手の出しやすい価格設定は、ロンジンというブランドを、群雄割拠なスウォッチ・グループの中でも重要で特別なものにしていると思うのです。

数奇な運命とでも言うべきか…子供の頃に覚えた「高級時計の2大ブランド」ラドーとロンジンは、どちらもスウォッチ・グループに参加し、自社ブランドの生き残りを模索していました。どちらも現在はそれほど広告に熱心なブランドではありません。その辺りもグループの方針に従って、メディア露出の度合いが決まるのだとしたらどうしようもありませんが、もう少し…あとほんのちょっと、媒体への露出を増やしてもよいのではないでしょうか?

私のように放っておいても自分から腕時計に近づいていく人間ばかりではないのです。ラドーもロンジンも、歩んできた道のり、掲げてきたコンセプトは違えども「栄光の味」を知る古豪ブランドなのは確かです。あれだけのヘリテージを持ち、さらに現代的な味付けも心得たラインアップがあるのですから…いやはやもったいない。

若い連中の間でラドーやロンジンの時計が流行ったら…腕時計業界はそりゃ~面白いことになると思いますけどねぇ(*´∀`*)

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ご意見・ご感想

コメント一覧 (2件)

  • 砂布巾さん、はじめまして。RADO、今まで知りませんでした。ゴールデンホース格好いいですね!ドルフィン針の時計が好きなので、知ることが出来て嬉しいです。情報量も多く、文章もすごく面白かったので、読者登録させていただきました。よろしくお願い致します。

  • チキンさま。
    コメントありがとうございます。お返事遅くなってすみません。
    読者登録も誠にごっつあんです!(笑)
    解りますか~ゴールデンホースの格好良さが!うれしいですねぇ~
    ドルフィンハンドの時計には何とも言えない懐かしさがありますよね。ラドーの時計には唯一無二に近い強い個性があるので、良くも悪くも「好き嫌い」がハッキリしてしまいますが、最近の皮膚感覚では何とな~く注目されてきているような気がしています。時代が追いついてきたのかも!?
    何はともあれ、今後もご愛読いただければ幸いです(*´∀`*)

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