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『グランドセイコー』と『ザ・シチズン』日本のビジネスウォッチ最高峰はどっち?

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 マルチな才能を発揮し続け、コアな支持者も多い「竹中直人」さん。私も彼のパフォーマンスの数々に魅了され続けてきたファンの一人でございます。最近では映画「翔んで埼玉」のカメオ出演も強烈でしたね(笑)

 その昔、竹中直人さんが中心の深夜番組に「東京イエローページ」というバラエティーがありました。深夜番組中毒だった私はその中でも特に「クイズ・そっちの方がスゲェー!」というコーナーがお気に入りでした。

 内容をザックリ説明しますと、数人のゲストの中から、何かの変わった特技を持った人を当てるクイズ…なのですが、実は正解以外のゲストの特技のほうがもっと凄くて…てな感じです。文字起こしすると全然面白くなさそう(笑)だけど実際は、直人さんの強烈な個性と、脇役陣の冷めた感じの笑いがたまらないコーナーでした。

 さて、「グランドセイコー(GS)」「ザ・シチズン」。どちらも実用腕時計の最高峰として君臨する日本のブランドであることはご承知の通り。姿形も、そのコンセプトさえも似通ったご両家ですが、私にはかねてより素朴な疑問がございました。「東京イエローページ」的な煽りを加えて尋ねるなら…

 

「どっちの方が時計としてスゲェーの?」

 

 実は私、以前もどこかで書かせてもらったように、「GS」「ザ・シチ」もどちらも真剣に購入しようと考えたことがあります。いや…違う。今でもきっかけと僅かなプッシュがあれば買ってしまいそうな状態です。

 

 

 スプリングドライブや機械式など多彩なムーブメントのバリエーションを誇る「GS」ですが、私なら迷わず、年差クオーツのキャリバー「9F」搭載品を選びます。「最高の実用時計」として買うならば、時計としての精度やメンテナンスの負担が少ないクオーツを選ぶのが自然な流れってヤツではないかと思うからです。

 「ザ・シチ」には年差クオーツと年差エコ・ドライブしかありません(昔は機械式のザ・シチもありましたね)なので、落とし所はハッキリしています。ムーブメントに関しては選びようがないのです。

 

 この2つのブランドが作る腕時計は、総じて良く似たルックスをしています。同じ日本という戦場で、互いに切磋琢磨しつつ得たマーケティング情報を具現化したら「似てしまった」というのもあり得ないことではありません。

 ただ、明らかに「シチズン」の方が、「セイコー」を意識しすぎているのではないでしょうか?それはまるで「巨人にさえ勝てれば他には負け越しても許される」という姿勢で戦っていた頃の阪神タイガースのようです。

 そしてこの「特殊な関係性」がそのまま、この2つのブランドの「購入動機」に大きく影響しているのではないかと思います。

 

 「GS」「GS」の美しさやコンセプトに魅せられた人が「素直に」購入する時計です。正直、ブランドバリューで言えばシチズンよりもセイコーでしょうから、その辺を重視して「GS」一択という買い方をする人も多いはずです。

 対して「ザ・シチ」ですが、例えば私の場合は「購入動機」として、まず「GS」が対象にあって、そのカウンターとして「ザ・シチ」が来るといった感じでした。私のように(1)でセイコー(2)でシチズンという選び方をする人は、そこそこ多いような気がします。

 

 

 

 これはシチズンがセイコーより「劣る」という話ではありません。実際、セイコーよりも実用性能で上回る時計だってシチズンには沢山あります。チタンの扱いなら完全にシチズンのほうが上手ですよね?ソーラーだって電波だって、シチズンのレビューのほうが上回っていたりします。

 

 ならばなぜ、シチズンが「2番手」になってしまうのでしょうか?想像ですが、これにはセイコーとシチズンの「マーケティングに対する考え方の違い」が現れているのではないかと思います。

 

 マーケットで「勝つ」ためには、「顧客の嗜好の変化をリアルタイムで把握する」努力が不可欠です。デザインの流行り廃りや価値観の変化は言うに及ばず、ほぼ「嗜好品」であるところの腕時計には、この他にも様々な外的要因が影響します。

 本来「無くても困らない」高級腕時計を買わせるには、顧客になる人の意識と足を自分たちの方に「強引に」向けさせるための強烈な「誘引物質」が必要です。

 例えばセイコーは「GS」のラインアップの中に、オフィシャルショップでしか購入できないモデルを用意しています。(「ザ・シチ」にも「特定店舗取扱モデル」っていうのがあるにはあるのですが…)例えばコレとかずっと「欲しい状態」です(〃ω〃)

 

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Grand Seiko Sport Collection

セイコーフラッグシップサロン、グランドセイコーブティック、グランドセイコーサロンおよびマスターショップ限定モデル

 

 「GS」に限らず、近年は「限定商売」に活路を見出したかのような戦略が目立つセイコーですが、本来の腕時計としての価値に様々な「ゲタ」を履かせる手法はさすがに巧みです。海外での評判も順調に高まっているようですし、消費者の「高級腕時計=スイス」といった概念にわずかな「?」を挿入するパラダイムシフトを起こすには十分だと思います。

 

 日本人の腕時計愛好家の中に、一種の「誇り」を植え付ける「GS」の存在感は、現状の「ザ・シチ」には感じられない部分です。戦略に多少のあざとさを感じる部分はあるものの、ブランドの価値を高める努力が奏功して、現在の「GSブランド」が成り立っているのでしょう。シリーズブランドの「独立した価値」という点では「GS」に軍配が上がると思います。

 

 

 

 良いものを作って正当な評価を得るためには、腕時計業界の場合、ブランドのネームバリューという土台が何より大切です。消費者に届けられる情報の「質と量」は、格上であればあるほど、尊重されるからです。

 その点で「ザ・シチ」は圧倒的に不利な立場からのスタートです。実際には同価格帯ならシチズンの腕時計の方が機能も充実していますし、素材も奢っていることが多いと思います。仕上げだって比肩します。戯れに両者の最も安価な価格帯で、似たような「年差クオーツ3針」の時計を比較する表を作ってみましたので御覧ください。

 

Grand Seiko The CITIZEN 比較表

 

本当に似てますね。見た目(;´∀`)

 すでに「ザ・シチ」を選んだ方の多くは、「GS」にはない「パーペチュアルカレンダー搭載」に魅力を感じた方も多いのではないでしょうか?年差でも「ザ・シチ」が勝っていますが、これは誤差と呼んでも良いレベル。

 シチズンは低価格なクオーツ時計にでさえ、パーペチュアルカレンダーを搭載したものが多いことで知られます。「ATTESA」の一番安いモデルでも、当然のようにパーペチュアルとチタン素材が使われていますが、これは間違いなくシチズンの企業努力の賜物です。この辺りはセイコーにも頑張ってほしい部分ですし、シチズンの強みでもあります。

 しかしながら、こういう良質な「細部」がシチズンのブランドバリューを底上げできているかと問われれば…ね(;´∀`)

 

 

 これは想像ですが、シチズンはセイコーに対して「技術力では絶対に負けてない」という自負がある…ありすぎるのだと思います。それは決して悪いことではないですし、間違ってもいないのですが、そのことを高級腕時計を購入するターゲットの消費者に、解りやすく届けられているか…が肝心なところです(;´Д`)

 以前、私なんかよりはるかに腕時計に詳しい方とお話した時に「今、どんな腕時計に凄さを感じますか?」という質問をさせていただきました。どこぞの超高級トゥールビヨンの名前が出るだろうと想像していた私ですが、意外な腕時計の名前が上がったので、その分逆に強く印象に残っています。

 

 それがシチズンの「Eco-Drive One(エコ・ドライブ ワン)」でした。

 

 

 「あれはちょっと作れんよね…凄いわ」と腕時計好きを感嘆させた、厚さわずか3ミリ以下のエコドライブ。側面から見ると、まるで紙に書いた絵に見えてしまうレベルの薄さです。あの薄っぺらいケースの中に駆動系が詰まっていると考えると…シチズンの職人さんの超絶技巧が伺えるというものです。

 しかし、この凄い技術の「エコ・ドライブ ワン」も、残念ながらそれほど話題になったわけでは無いと思います。世界の腕時計業界を見渡しても、間違いなくマーベラスな時計なのに、解ってもらえないまま一部の「通」だけが評価する時計というポジションに甘んじてしまっている。

 

 しかしこの状況、当のシチズン自体は、あまり気にしていないのかもしれません。

 

 「ワシらええもん作ってるんや!評価なんか黙ってても後から付いてくるわぃ!」そんな職人気質なセリフが聴こえてくる気がします。個人的には嫌いじゃないです( ・`д・´)

 

 近年はセイコーに負けず劣らずのワールドワイドなブランド戦略を展開し、イメージの再構築途上といったシチズンですが、本質的な所はそう安々とは変わらないのかもしれません。例えるなら、セイコーがスマートなビジネスマンのイメージだとしたら、シチズンは根っこのところでは未だに「愚直な職人」なのだと思います。

 

 似ているようで本質的な部分ではまるで異なる国産2大ブランド「セイコー」「シチズン」。高級ビジネス時計のフラッグシップでありながら、機能を最小限に限定したクオーツの「GS」「ザ・シチ」を外見のみならず比較すると、それぞれのブランドの「腕時計」に対する姿勢や目指す場所の違いが、何となくですが見えてきました。世界中で評価が高まる「GS」に対して、競争関係にありつつも、あくまで自分の武器で勝負する「ザ・シチ」の愚直さは、実のところ両者をうまい具合に引き立てる絶妙な関係性と言えるのかもしれません。

 

 「クイズ・そっちの方がスゲェー!」のように、最後の最後に「『GS』の方がスゲェー!」「『ザ・シチ』の方がスゲェー!」と言えれば良かったのですが、今回は、考えれば考えるほど「潜在的な共生」とでも言えそうな関係が見えてきました。という訳で、些か消化不良な意見ですが、本日はこれでご勘弁願います。

 

「どっちの時計もスゲェー!」

 

 

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